閑話


 リキ・ゼノンはパース(人外)である。

 パースは人間より強く、特別な力を持っていたために人間からは忌(い)み嫌われると同時に、好奇な目を向けられた。

 『人魚の肉を食べると不老(ふろう)不死(ふし)になる』という根拠もない迷信(めいしん)のように、パースの肉を、血を体内に取り入れれば強くなれるのではないか、と人間は思うようになった。

 その中で特に人間に近く、存在としては離れた、『エルフ』に誰もが注目した。

 だが比べ物にならないほど、エルフは強かった。

 人間なんてエルフからすればそこらのドブネズミと一緒だ。

 それからエルフは人間に食べられることは無かったが、その事実が今まで以上に根強い根拠となり、より一層人間はエルフを狙うようになった。

 そんな世の中で彼はハーフエルフだった。人間よりの。

 外見も考え方も、人間よりだったために狙われることはなった。

 一方、リキの弟はエルフよりのハーフエルフだった。

 見た目も人間に反発的な思考も全てがエルフよりだった。

 けれど二人はよく似ていた。

 色白の肌、色素の薄い髪、瞳の色、顔立ち。

 違うのは耳くらいではなないだろうか。

 なのに、それなのに。

 何故、狙われたのは弟だけだったのか。

 


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