閑話 双眸



 薄く汚れた布を頭まで被(かぶ)り、立てた足に腕を乗せたリキは暗闇の中で怯える人間を睨み付けていた。

 彼が何故そのような行為(こうい)をしているのかというと、彼は人間が大嫌いだからである。否(いや)、それ以上に人間を憎んでいた。

 恐怖に泣いている子供(こども)も悔しさに睨み付けてくる大人も。

 人間であれば憎んだ。

 血を噴いて倒れても首を絞めて倒れても、情けを覚えることは有り得ない。

 彼にとって人間が人間である以上、許されないのである。

 暗闇で見張りをしているリキに一人の男が喚(わめ)く。

 「お前ら賊が調子に乗ってんじゃねーよ。その内、国王やら騎士やらがお前らを殺しにくるさ! それまで精々(せいぜい)俺達を見張ってろッ」

 リキは冷たい眼で男を見ながら、その足元にナイフを投げつけた。

 男は小さな悲鳴を上げ、縮こまった。

 周りからも悲鳴が聞こえる。

それを鬱陶(うっとう)しそうに見つめる彼に、一人の男が悔しさを滲(にじ)ませながら低い声で彼に尋(たず)ねた。

 「あんた……、何で人外の味方なんかしてるんだよ……」


 リキ・ゼノンの外見は人間である。



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