アルト公の想う者15
「いらっしゃったなら一声掛けてくだされば」
とはシスターマリア。
照ノとアルトは、教会で二次会をしていた。
バーボンを呑み合う。
「照ノ兄様に会いに来ただけなので」
それがアルトの答え。
「そう騒がしくも出来ませんし」
まずもって厄介事の最右翼だ。
気にしないのが、
「天常照ノくらい」
なのは、結構……限りなく……事実に近い。
「ソレに護衛は付いておりますし。問題ありませんよ」
「むしろ教会側が問題なのですけど」
「聖杯の居場所でも聞きたいんですか?」
「それもまぁ」
バーボンを飲みながら、マリアも雑談に加わり、酒の席で雑談をする友の存在の希少さは大切にするべき概念だ。
クリスはオレンジジュース。
ジルは輸血パックだ。
「こちらの吸血鬼は?」
「保護観察処分」
「首の皮一枚でやんすな」
中々にスパイシーなクリスと照ノの評。
だが実際にその通りで、ジルは教会の意向に沿って首つり一歩手前の身分であるのも事実ではあった。
「自分が平常人だと思い知らせるよ」
ジルは皮肉気に口の端をつり上げた。
「たしかに」
とアルト。
「おまいう」
と照ノだった。
「キャメロットが良く許しましたね」
「それなりに心象は宜しいので」
そこは不断の努力だろう。
バーボンをクイと飲む。
「で何をしにご来訪を?」
「だから照ノ兄様に甘えるため」
「てーるーのー?」
半眼のクリス。
「小生、何もしておりやせんが?」
それも事実。
「一緒にお風呂に入った」
「変態!」
「昆虫じゃないんでやすから」
「スケベ」
「むしろアルト公の方がノリノリでやしたが」
「照ノ兄様に抱かれたい」
うっとり乙女顔。
男の娘なアルトではあった。
グラスを傾ける。
「お酒って美味しいんですか?」
「文化です」
クリスの疑問に、アルトが即答。
「クリスちゃんも成人したら、一緒に呑みましょうね」
「ええ」
穏やかな空気。
「もうちょっとパイオツが大きくなると……」
ジャキッと仮想聖釘が具現する。
「冗談でやす」
場合によっては蔵物も有り得る。
「とはいえ」
「……………………」
半眼のアルト。
「公に睨まれては身動き取れやせんか」
「ある種の究極ですので」
「然りでやんすな」
カラリと照ノは笑った。
バーボンを呑んでおきながら、ほろ酔いだ。
「照ノちゃん大丈夫?」
「小生は心配いりやせん」
「ま、そうよね」
マリアもバーボンをクイと飲む。
「ぶっちゃけ……どの程度なので?」
ジルベルト=アンジブースト。
「まぁ吸血鬼程度なら鯖折りで殺すくらい?」
「そんな怪物になった覚えがありませんけど……」
「知ってやす」
ジョークのつもりだったらしい。
質は悪かったが。
「照ノ兄様だってグランドヴァンパイを簡単に焼き滅ぼすじゃないですか」
「重ねてきた年月の差でやすな」
カラカラと笑う彼。
「僕も!」
「私も!」
「僕は無理」
セカンドヴァンパイアの宿業だ。
「血を見る事に、自慢も無いでやす」
「熟々照ノは甘いわ」
「フラペチーノ的な?」
「マシュマロクリームココア的な」
「シスターマリアはどう思いやす?」
「ま、人それぞれよね」
無難な回答。
「思想の自由が保証されてるんだから、人様の脳内は皆それぞれ。私たちは、そこから愛と徳を説くだけです」
「さすがのパイオツ!」
「セクハラです!」
仮想聖釘。
ヒョイ。
何時もの夫婦漫才だった。
「南無三」
「ミス・クリス?」
「う……」
アルト大公に睨まれると弱いクリスティナ=アン=カイザーガットマンであった。
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