エレクトロキネシス03


 金婚冠婚キンコンカンコン


 ウェストミンスターチャイムが鳴る。


「さて」


 照ノは立ち上がった。


 基本ぼっちだ。


 昨今は、アリスが友とするも。


 ――とりあえず購買部でやすか。


 昼食への思案は、少し遠い購買へと飛んで、財布事情と合算することになる。


 そんな思惑の最中、


「天常くん!」


 にゃ。


 エリスが景気よく抱きついた。


 鴉色の髪から、シャンプーの匂いが、芳しい。


「――――――――」


 クラスメイトに電流走る。


 元より、照ノは、注目されていた。


 クリスとアリス。


 双璧の二人と仲良くしている……という点に於いて。


 無論、反転合体ツンデレイオスの方は、政治的事情を鑑み、顔を真っ赤にして否定するも、世の理の必然性ではあろうとも。


「奢ってあげる! 学食行こ!」


 にゃー。


 懐いた猫のような、しなやかな態度だった。


「おや、気前がいいでやんすね」


「田舎大名の出だからね!」


「ようがす。ご相伴に与りましょうぞ」


「零円高価」と書かれた扇子をパンと開いて、扇ぐ。


「ついでに聞きたいこともあるし!」


「小生で宜しければ」


「にゃー」


 ボスン。


 ラグビー界の星になれるタックルを、アリスがかます。


「お兄ちゃんー。浮気ー」


「恋人募集中でありやす」


「アリスは良いよー?」


「ロリコンのケはありやせんので」


「にゃーごー!」


「モテモテね。天常くんは」


「照ノで宜しゅうございます」


「て……」


「て?」


「照ノ……?」


 頬が赤らんで、愛らしい。


「でやすな。エリス嬢」


「じゃあ照ノ! 学食行こ?」


「お受けしやす」


「アリスもー」


「へぇへ」


 こうして三人で、学食に向かう。


 時折、ギョッとする生徒の目が煩わしかった。


 今更、変更も利かない物だ。


「クリスさんはお冠~」


「ツンデレーダーは、想い人を捕捉出来ず」


 パン、と「零円高価」の扇子を閉じて、懐に仕舞う。


「ところで照ノ? キセルくわえてるけど喫煙してるの?」


「いえいえ。おしゃぶり代わりでやんす」


 実際の処、学長には認められている。


 とはいえ、さすがに健全な生徒の前で、イレギュラーを起こさない程度には、照ノも空気を読める。


 普段は、あえて読んでいないだけだ。


 ソレもコレも「ツンデレをからかうためだけ」に、終始するものの。


「ま、中二病の一環でやす」


「あはは。変だね照ノ」


「むー。距離感が近いよー」


 アリスもまた嫉妬するらしい。


「あ、やっぱり?」


 エリス当人にも自覚はあるようだ。


「なんかさ。よく言われる。グイグイ行くねって」


「然れども、よろしゅうござんす」


「照ノが良いなら、私も心丈夫!」


「ついでに言わせて貰いならば……抱きついている腕におっぱいが当たっておりますが、中々の成長率でやんすな」


「さっすが男の子! 興奮する!」


「性衝動とは縁がない物で」


「そなの? 不能?」


「わりかし間違ってはおりませなんだ」


 正確には抱ける。


 ただ神々としては、人間と子孫を残すのは不味い。


 神性の混血は忌避されるべき物。


 単に楽しむだけなら、殊更照ノも、否定はしない。


「へー。それでカイザーガットマンさんが……」


「クリス……と呼んでやってくやさい。『クリスティナ』も『カイザーガットマン』も長いでやしょ?」


「クリスね。じゃあそう呼ぶ!」


「ご理解いただけて感激の極み」


「でも本人にも許可取らなくちゃね」


「小生以外には人が良いので、多分、二も無く頷くはずでやんすよ」


「えへ~」


 さらにギュッと照ノの腕を抱きしめる。


「何食べる?」


「生姜焼き定食」


「回鍋肉」


「じゃ、私は塩ラーメンで」


 そんな感じの、食事になった。


「奢られて良かったので?」


「友情の範囲なら、貸し借りも無きでやしょ」


 ハムリ、と白米を食べる。


「それで問題なら、今度はこちらが奢りやすよ」


「じゃあ期待しとく!」


「次回刮目して待て」


 生姜焼きには、御飯が合う。

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