第2話 今日も鈍色の空を見上げる
“
……棺桶ってのがどんな物か、実際に見た事も入った事も無いけど、僕らがどれだけ死んだって、ここでは葬式さえ行われないし、ましてや墓になんて納めちゃ貰えない。だから結局、僕が棺桶に入る事は、まあ無いのだろうけど。
僕はやる気の出ないまま、今日も“
もう既に対戦は始まっているけれど、ふと兄弟達の事を思い出した。
数日前にはイーサンとマコトは食用にまわされていたらしい。食品合成機にかけられて出されただろうから、何時食べた、どんな料理になっていたのかすらもわからないけど。その二人に比べればまだましだっていうジェラールだって、幾つもの臓器に生きたまま腑分けされ、あの子にはもう脳さえ残っていないんだろう。
僕はまた、小さな兄弟達を助けられなかった。あの子達でもう、何人目になるんだろうな。
こんな場所、本当はさっさと脱け出して仕舞いたいんだ。
けれど、僕ら
僕らがこの闘機場の敷地から一歩でも外に出た瞬間、この場所に連れられて来たその日に
この場では、僕らの命は最低ベット額の百分の一、1クレジよりずっと安い。
だけど、今日は本当にやる気が出ない。適当に負けようかな、……ここでの敗北は、=死、ではあるけど。
今日、僕が対戦している相手は
本来、軽装型で高機動戦闘を得意とする僕の“
“ランブリング・ギア”は、動力源である
“
重い得物を手にしたこちらの
負けても問題ない、……その筈なのに……。
僕は何で、こんな頑張ってるんだろう?
僕自身の意に反し、この身体は機械的に操縦桿を操作、それに応えた機体は的確に駆動し“
僕の操る“
だけど、あちらも弾丸が尽きたのか、
睨み合いを続けて暫くして左半身の予備センサーが作動し、完全ではないにしろ僕の左側の視界が回復する。
意を決し、僕は
敵機の眼前で機体を回転させ、加速に加え遠心力の載った
僕が機体を回転させる瞬間に捉えた視界に、銃を抱えた敵機の両腕を包む
「
思わず声を出した僕の視界に、斬り飛ばされゆく
†
使いこなせばとても強力なんだけど、特にこの
あちらの刃が鎚頭に喰い込んだ瞬間、僕は咄嗟にハンマーの柄を手放し、
「そっちが
着地する間も惜しみ、僕は闘機場の床を頭上に逆さのまま操作を続ける。
空中で“
その刃は鍔元から切っ先へと緩やかな弧を描いていた。
右手の中に現れた剣を振り、空中で崩れたバランスを調整し、機体を捻らせて着地、僕へと長巻を振り下ろす“
僕と相手の双方が
切り結び、打ち合わされるこちらの剣と、対戦者の長巻の刃。互いの振るう刃に配された
いつもの泥臭い鉄塊と硝煙を纏った砲火の応酬と違い、七色の派手な
「……あ、ヤバい」
僕の意識が脇に反れていた間に、長巻を振り上げた“
僕は“
「ヤバいよ、君? ……僕に勝たせる気か? そんな隙だらけな大業、いくらなんでも撃たせるわけないだろ?」
“
振り上げた両腕が長巻毎地面を叩き、“
悠々と“
「運が良かったね? 今日は殺すまではしないさ。……そんな気分じゃ無いんだ」
“
宙に浮いた“
“
闘機場の舞台の真ん中に対戦相手の残骸を置き去りにして、僕はゆっくりピットルームに向かう。
──また、展望室に行こう。
そんな事を思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます