第四話
「なに、“とりかえばや”の話に協力してくれる者が?」
豪勢な城の、奥まった御簾の中で、乳母の大蔵卿局(おおくらきょうのつぼね)の報告を受けた淀の朱唇が笑いに歪んだ。
萎れていた薔薇の大輪が 首をもたげて輝き咲くように。
「お捨の代わりを務めるのは、どこのややじゃ?」
「はい、お方様、これに、あるおなごが参っております。是非、おめもじを」
局は扇で口元を隠しながら、低い声で告げる。
淀どのが 裏の棟に移って待ち受けていると、ほどなく身分の低そうな 中年女が局のお付きの奥女中に案内されてやってきた。
「そなたか、赤ん坊を提供しようというのは」
「わ、わたくしではございません。もっと若いおなごが産み落とした男児でございます」
中年女は 平伏して答えた。
「この際、出自は厳しく咎めまい。事は急を要する。その赤ん坊が見たい。すぐに連れてまいれ」
淀どのの瞳は爛々と燃えている。
連れてこられた赤ん坊を見るや、
「おお、健やかそうな、ややじゃ。顔立ちも貧相ではない。立派にお拾の代わりができそうじゃ」
「捨丸君が長子の拾丸のように、早う逝ってしまっては 自分の、太閤の跡継ぎの生母という地位は危うくなってしまう。淀どのは かなり焦っていた。
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