第3話お嬢様と老人3

 ヘーリアンティアは一旦自室に戻った後、ゲルマニカ公の呼び出しで彼の自室を訪れた。先導はケッラーリウスが勤めた。

「旦那様、失礼致します。お嬢様をお連れしました」

「入りなさい」

 通されたゲルマニア公の部屋は、簡素な調度品の他は全て膨大な書物が並ぶ本棚に埋め尽くされている。源流をローマ帝国の貴族にまで遡る事が出来る大家の当主の部屋としては些か華やかさに欠けるが、美術品などよりも書物を好むのはゲルマニカ公の有名な嗜好だった。ヘーリアンティアの本好きも彼の影響が大きい。

 ゲルマニカ公は窓際の大きな机の前に座って腕を組んでいる。机の上には、手前に羽根の筆と墨壺、中央に照明が有る他は殆どが積まれた本に埋め尽くされている。淡い光を放つ照明は、発光する大きな植物の種を装飾が為された銀製の台座に設えた魔導器だ。この近辺には居ないらしいが、発光する種子を持つ植物型の魔獣を倒すとその種子が残る事が有る。其れを加工した品だ。ヘーリアンティアの部屋にも有るが、適度な光で夜でも読書が可能となる優れ物で、甘美な夜更かしを誘発する罪な代物だった。


「ヘーリ、座りなさい」

 立ち上がったゲルマニカ公は相変わらず難しい顔をしたままそう言い、中央の黒光りする重厚な木製卓の前の椅子に腰掛ける。

「失礼します」

 ヘーリアンティアも父が腰を下ろすのを待って向かいに座る。それを見計らい、侍女が優雅に香草茶を淹れる。甘く爽やかな香りが立つ。

「終わったら下がりなさい。ケッラーリウスもだ」

 ケッラーリウスと侍女を退室させたゲルマニカ公はまた押し黙る。話をどう切り出すか迷っている風でもある。ヘーリアンティアは所在無く香草茶から昇る湯気を眺めるしかない。どうにも居心地が悪い。

 湯気が消え、香草茶が冷め切った頃、ようやくゲルマニカ公が口を開く。

「最初に言っておくけれど、父親としての僕はヘーリの夢を応援してあげたい。

 確かに冒険者は危険な職業だけれど、功績と名声を求めて冒険者になる貴族子弟も多い。

 先ほどの話にもあったけれど、貴族とは本来、魔獣、迷宮、そして外敵と戦う者なんだからね。

 だが、領主としての僕の判断は別だ。

 ヘーリ、君は才が有り器量も良い。忌憚なく言うならば、政略結婚の駒としての価値は計り知れない。

 冒険者のような山師じみたものにするよりは、頃合をみて有力な貴族と結婚させた方が確実な利益となる。

 相互相続契約は知っているね。貴族は子供を他の貴族と結婚させるだけで絶えた他家の領地を相続出来る可能性が有るんだ。無論、様々な要因で丸儲けとは行かないがね。

  ヘーリ、君はどう思う?」

 そう言って試すようにヘーリアンティアを見る。ここが正念場だ。

「仰る通りです。

 貴族とは領民を守り導き、その対価として税を得ている者です。

 即ち、この身は領民の血と汗を糧に育ち、学んでいます。学び終えれば、今度は私が領民達に報いねばなりません」

「君らしい完璧な回答だね。貴族が皆そう考えれば、世の中違ってくるのだろうにね」

 ゲルマニカ公は皮肉げに、そして自嘲する様に笑う。

「ヘーリ、君は冒険者に成るのならば、僕を納得させるだけの利益を出して貰わなければならない。ゲルマニカ家の為にね。

 それが可能だと思うかい?」

「断言は出来ませんが、可能ではあると考えます」

 ヘーリアンティアは即答した。


「ほう。根拠を聞かせなさい」

 ゲルマニカ公の目が硬い色合いを帯びる。父親ではなく、政治家としての顔が覗く。

「まず第一に、冒険者と成れば必然、迷宮に潜る事になりますが、迷宮は人類の敵であると同時に資源の宝庫です。

 煙草や茶の様に迷宮で発見されて以来、嗜好品として広く浸透している物は数多く有ります。

 これ程の物でなくとも、有用な薬草の一つでも発見できれば相当な利益が見込めます。

 また、迷宮の核として取り込まれている古代の遺産や宝物を手に入れれば、莫大な値が付くでしょう。

 遺産を解析して古代の技術を再現できれば、一つの産業を興す事すら可能かも知れません」

「それは間違ってはいないね。

 迷宮の管理権や迷宮探索の契約にも左右されるが、わが領で有用な薬草一つでも栽培に成功すれば莫大な利益を生み得る。発見者というだけでも何がしかの利権には食い込めるだろう。

 しかし、首尾よく遺産を手に入れれば専門家に任せる事も出来るが、薬草を発見する事など出来るのかい?

 迷宮の植生は驚くほど多様で、学者でも手を焼くと聞く。如何に博学でも君は学者じゃないのだから尚更だ」

「それに関してなのですが、私は冒険者に成りたいと思い至ってから、自分には何が出来るのか考えておりました。

 冒険者の小隊は前衛三、後衛三の六人を基本型とし、前衛に白兵戦技能者、後衛に遠距離攻撃技能者、方術士、医療士などを配置するのが様々な局面に対応出来、生還率が高いと聞きます。その中でも最も貴重なのが医術士です。

 高度な知識を持つ医術士は数が少なく、また地位も高い為わざわざ修道院や学園から出て冒険者に成る者は少ない。故にどんな小隊でも歓迎されると聞きます。

 だから、私は医療方術を学びたいと思います。

 未踏の地において医者の存在は生死を大きく左右します。逆に言うならば、医者さえ居るのなら危険地帯へ行ってもよいと言う腕利きも多いでしょう。

 ならば私が高度な医術を修めてしまえば、医者を探す必要もなく、仲間も募りやすい。

 また、必然的に薬学も学ぶため、治療に使う薬草や鉱物、動物素材の知識も手に入ります。この知識を迷宮の資源発見に用いようと考えています」

「なるほど、確かに君は水の加護を持っている。

 医療方術を修めるのは不可能ではない、か」

  

 人は産まれた時から地水火風の内、一つの属性を持っている。これを先天属性、または先天の加護という。

 先天属性は土地、部族、血族など様々な要素に左右されると云われ、人の能力や方術適正を決める最大の要素になる。水辺に住む者は水属性、火山の近くに住む者は火属性という風に、ある力の要素が大きい土地に住む者の子供は、その力に対応した属性を持って産まれる傾向がある。これは、精霊、神、天使、あるいはもっと別の何かの加護を得て産まれるからだとも、単に環境に適応した結果だとも云われるが、理由は未だに分っていない。

 おそらく有史以来、最も多くの学者が取り組んだのがこの属性の研究だろう。それ程に属性が人に与える影響は大きく、火と水、地と風の力は反発し合い、自分の属性と逆の属性の力がほとんど使えないのだ。これを反属性という。

 一方で後天的に身に付く属性が二つある。太陽と月だ。この二つも反属性であり一つしか身に付かない。

 後天属性はその人間の育った土地、性格、生き方、職業、趣味嗜好などあらゆる要素の影響を受けて決定されるといわれ、太陽は光と明らかさ、月は闇と安息を象徴する。

 太陽を正義、月を悪と捉える見方もかつては有ったが、六つの属性が調和して世界が成り立っているという『六属性調和論』が現在の教会の公式な見解だ。これは月属性を弾圧した結果、大規模な反乱を招き未曾有の混乱に陥ったローマ帝国の前例を踏まえての事でもある。


 ゲルマニカの家系には水属性が多い。父と上の兄に加えて亡くなった祖父もそうだった。確かにこの街は大きな川に面している為に、水の力が強い土地ではある。

水属性というのは液体操作に優れ、医術に最も適正の有る属性でもある。人の体には隈なく血液が流れているからだ。そして、医療法術とは外科的、薬学的に治療困難な症状ですら、魔力を用いて患部に直接干渉する事で治療可能だとされる優れた技術体系だ。反面、人体に関するあらゆる知識と高度な方術の技術が要求される為、世界で最も難しい技術の一つとも言われていた。

「医療方術を学び、その知識を持ち帰る事が私の提示できる第二の利益です。

 もし冒険者として大成できなくとも、次世代の医者を育てる事で領の発展に貢献してみせます。

 勿論、医療方術は血を吐いても学び尽くしてみせます」  

 ヘーリアンティアは言い終えるとゲルマニカ公を見た。元より、全て机上の空論だ。子供の戯言と言ってしまってもよい。結局、ヘーリアンティアが示せるのは意思のみだ。

 ゲルマニカ公は目を瞑り、腕を組んだ。長い沈黙。ヘーリアンティアの額を汗が伝う。緊張のあまりそれを拭う事も出来ない。

 ようやく目を開けたゲルマニア公は、躊躇うような素振りを見せながら話し始めた。

「こういう日が来る事を薄々は感じていたんだ。

 君はものが違う。何故僕の様なつまらない男に、君の様な娘が生まれたのか未だに不思議だ。おそらく古の賢者の親も僕の様な気分だったんだろう。

理屈では分かる。君は世界を見るべきだ。

 だが、僕は臆病なんだ。君を手元に置いておきたい。難局で君の見解を聞きたい。苦中に在って、君の存在は確実に切り札足りえるだろう。

 政治は複雑怪奇だ。短期的長期的な最善など僕には知りようもない。

 歴史を紐解けばどんな賢王も間違いを犯し、かと思えばただ長生きしただけで最善の結果を出した愚王もいる。全く、訳が分からない」

 父の弱音ともいえる言葉に驚く。とても英明さで称えられる大ゲルマニカ公の言葉とは思えない。

「お父様、最善など誰にも分からないでしょう?

 もし分かると思う者が居れば、悲しい事ですが知らない事を知らないだけです」

ヘーリアンティアは慎重に言葉を選んで言う。 

「そうだね。だが、君になら僕に見えないものが見える筈だと思ってしまうのさ。

 君程の才を腐らせ、己の駒に用いようとする。愚かな事だ」

 父が力なく首を振る。

「世間でどう言われようが僕は情けない男なんだよ。子供の頃から臆病だった。

 君は知らないだろうが、僕は子供の頃身体が弱くてね。

 あまり外に出られなくて、退屈だから本ばかり読んでいた。ある時、プトレマイオスの『地理学』を読んで驚いてね。

 自分が世界の全てだと感じていた広い街は、本当の世界のごく一部でしかない国の、更にごく一部の小さな点でしかない。

 自分が世界の殆どを見る事もなく死んでしまう事が理解出来て、堪らない気持ちになった。外に出られなかったから余計にそう思ったんだね。

 この広い世界の、空と大地の素晴らしい光景を全て見てみたいという君の気持は、とてもよく分る。

 僕も昔、冒険者に憧れたんだよ」

 ヘーリアンティアは驚いた。そんな話を聞いたのは初めてだった。ヘーリアンティアにとって父は、学者肌で嬉々として書庫に篭っているような人間だったのだ。

「冒険者に憧れてからは剣の修練にも熱が入ったし、嫌いな野菜も無理して食べた。人参が嫌いな冒険者なんて格好が悪いだろう?」

 おどけて言う父に小さく笑う。

「世の中何が幸いするか分からないね。そんな事をしている内にすっかり身体が丈夫になってしまった。

 後は城の宝物を背負い袋に放り込んで、剣を片手に逃げ出すだけだ。目の前には世界の全てが待っている。ここで冒険の旅に出なければ男じゃないよね?

 ……でもね、結局父が怖くて出来なかった。僕は臆病だった。

 君は立派だよ。自分のやりたい事をちゃんと言葉に出来る」

「そんな、お父様は歴史あるゲルマニカ家の嫡男だったのでしょう?

 私などとは立場も責任も違い過ぎます」

「いや、本当に冒険者に成りたければ、全て捨てて逃げ出せば良かったんだ。

 僕が継いでも、弟達の誰かが継いでもさほどの違いもないさ。

 不義理をするのが嫌なら、君の様に父と取引してもよかった。

 結局、僕は自分の力では何も手に入れる自信が無かった」

 ゲルマニカ公は立ち上がると、ヘーリアンティアを立たせ、抱き上げた。父の手は大きく、力強かった。今まで気にした事もなかったが、掌が硬くごつごつとしている。幼い頃我武者羅に剣を振るった証だ。

「僕のお姫様は、こんなに小さいのに世界に飛び出して行くのか。複雑な気持ちだよ」

「許して下さるのですか?」

「ヘーリは書庫の本をどれ位読んだのだい?」

「粗方読みましたが、全部は読んでいません。

 特に方術関係の高度な文献は、まだまだ理解の及ばない物も少なくありません」

「じゃあ、僕の部屋の本も併せて全部読むまでは家に居るんだ。それ位は構わないだろう?」

ヘーリアンティアは父の胸に顔を埋めた。

「我が侭を言って申し訳ありません。必ず成果を出してみせます」

ゲルマニカ公は苦笑した。

「君も子供が出来たら分るだろうが、娘が元気に生きているだけで親は満足なのさ。成果なんてついででよい。

 でも、君には僕の子供の頃の想いを預けるよ。領民達にだって、冒険したくても出来ない者達が沢山居る。君が代表して世界を観て来るんだ。

 そして、必ず無事に帰ってくる事。約束だよ」

 ヘーリアンティアは力強く頷いた。

「はい!

 必ず世界の果てを観て帰ってきます!」

  

 その日以来ヘーリアンティアは一層熱を込めて学問を学んだ。言語学、地理学、動植物学、神話学。優れた冒険者に要求される知識は数多い。また、方術士は知識を蓄える事で世の理を理解し、方術の階位を上げて行く。

「お嬢様、基本的な事ですが大切なのでもう一度おさらいしましょう。

 方術士に必要なのは事象を理解する為の知識、その事象を方陣に変換して描く感性、方陣を維持し操作する意志と構想力、そして方陣を発動させる内在魔力の量と質です」

 方術教師ウェネーが厳かな口調で言う。普段は優しい姉の様な彼女も、方術を教える時には厳しい研鑽を積んだ方術士としての顔を覗かせた。

「方術によって引き起こそうとしている事象は、深く理解していればいる程に強固な構成の方陣が描けます。

 構成の脆い方陣に力を通せば最悪、方陣が自壊して力が逆流し己を傷つけます。

 知識とは謂わば方陣の土台です。どれ程才無き人間でも、知識は学べば身に付きます。

 逆に言えば、学ばぬ方術士など存在する意味がありません」

 ウェネーが右手を上げる。掌の上に青い方陣が描かれ、そこから水が流れ出す。

「例えば、この水の一層方術『湧水』。

 これは生活方術などとも呼ばれて、市井の人間にも使える者が多いですね。

 厳しい行軍を行う軍人や冒険者にも必須の方術です。

 ところで、この水は何処から現れたのでしょう?」

「環境によって量は変われども、大気には水が含まれています。

 そこから取り出しているのですよね?」

「その通りです。

 『湧水』を使おうとするなら、空気に水が含まれているという事を知らなければどうにもなりません。

 この程度の事は別段実験の必要もなく経験的に理解している者も多い。だから市井の人間でも気楽に使えるのです。

 ですが、方術は一つ階位が上がると要求される知識が爆発的に増えます。専門の教育を受けなければ三層方術を使う事もままならないでしょう。

 尤も、お嬢様は本がお好きで私がたじろぐ位に博学ですからね。大体において、知識以外の要素が問題になると思われます」

「本当にそうですか?

 とてもウェネーに知識で勝てるとは思えないのですが」

 ヘーリアンティアが小首を傾げると、ウェネーが澄ました顔で言う。

「これでもお嬢様より十年ばかり長く生きていますからね。雑多な知識も、知らない事の誤魔化し方も身には付きます。

 お嬢様も世に出れば、己を実力以上に大きく見せる方法を学ばれる事でしょう」

 ウェネー一流の言い回しだ。こういう斜に構えたところが彼女と話していて面白い部分である。

「それは自分に自信が有るからこそ言える言葉でしょうね。

 本当に自信がない人はそんな言い方は出来ませんよ」

「そんな風に見透かされると、お嬢様の方が年上の様ですね。安易に軽口も叩けません。

 話を戻しますと、知識は時間を掛けて学べば学ぶだけ身に付くものです。ですが、世の老方術士が皆強力な術者かと言えば、全くその様な事はありません。

残念ですが、如何に知識を蓄えても感性を持たぬ者は三流の域を出る事が出来ないのです。

 複雑な事象を引き起こすには何層にもわたる方陣が必要となります。感性が無い者は事象を複層の方陣として表現出来ないのです。

 そして、二層、三層方陣しか扱えない者は方術士とは呼べません」

 ウェネーが愛用の杖を手に取り、前にかざす。大きな水晶が先端に付いた、一目で強力な魔道器だと分かる一品だ。水晶の杖の前の空間に、四層の青い方陣が描かれる。

『四層水術 水蛇』

 大気から取り出された水が形を成し、成人男性数人分の長さがありそうな大きな蛇の姿をとる。水蛇はとぐろを巻くと、ヘーリアンティアに行儀良く頭を下げる。

「わ、綺麗ですね!」

 水蛇は日の光を反射して輝いている。頭を撫でてみると手が濡れる事もなく、ひんやりと滑らかで硬い感触だ。

「これは水を集め、蛇を形作り操る術ですね。今回は私が操作していますが、簡単な意思を持たせて自律行動させる事も可能です。

この大きさなら、上手く使えば熊を絞め殺す事も出来ますよ」

 巨大な水蛇は滑る様に這って近くの木に巻き付き、幹を上へと登って行く。まるで本物の大蛇の様な動きだ。

「凄いですね。

 よほど精密に操作出来なければ、あの大きさの蛇を木に登らせる事なんて出来ないでしょう?」

 素材に魔力で形を与えた人形を動かすのは有名な方術であり、土属性の『土人形』などは非常に汎用的な使い方をされている。街を歩けば、土人形に重い荷物を運ばせる商人や、人がやるには危険な作業を土人形にやらせる建築家の姿がごく普通に見られる。その人形達と比べても、ウェネーの水蛇の動きは際立ったものだ。

「要は集中力と術式を完璧に制御する意思ですね。それらを包括して構想力とも呼びます。

 半端な術者はここが疎かに成りやすい傾向がありますね。例え感性に恵まれ多層の方陣を描けても、術式を打てるだけでは二流の域を出ない事は覚えておいて下さい。

 展開した方陣の力を最大限に引き出す為には、方陣を維持し術式を操作する構想力が不可欠なのです。

 この『水蛇』の術式で言えば、いかに強力な蛇を創り出せても、精密に操作出来なければ敵を捉えられず、敵を絞め殺す前に術式を維持出来なくなれば意味がないという事です」

 ウェネーが展開した方陣を消すと、木に巻きついた水の蛇の姿が崩れ、単なる水の塊となって地に落ちる。 

「特に結界術など展開して長時間持続させる方術は、持続的な集中が苦手だと綻びが出て段々と効果が落ちてきます。必然的に効果時間も短くなりますね。

 逆に攻撃方術などは、瞬間的に己の全てを絞り尽くす集中の深さが最大出力を左右し、威力に直結します。

 これは昔から論議を呼んでいるのですが、持続的な構想力と瞬間的な構想力は何故か中々両立しないのですよ。私も持続的な術式に比べ、瞬間的な術式は些か不得手です。

 学術的な根拠は無いのですが、俗に男性は瞬間型、女性は持続型とも言われますね。

 これは男女のある特徴に合致している事から来た馬鹿らしい迷信です。何に合致しているかは大人になったら分るのではないでしょうか……って、お嬢様、何を赤面されているのですか。全く、耳年増ですね」

 ヘーリアンティアは咳払いをして誤魔化し、殊更に真面目な顔を作って言う。

「その話は教本で読んだことがあります。

 冒険者の小隊でも攻撃術者と防御、補助術者に役割を分けるとか」

「戦いが日常の冒険者として活動する方術士なら、尚の事己の得意分野を伸ばす事を優先するでしょうね。

 しかし、お嬢様はお若いのですから先ずは両方を可能な限り伸ばすべきでしょう。

 攻撃、結界、補助、治療の四科全てを修めた術者が、古来から方術士の理想的な姿とされています」

「教会でいう方術司教ですか」

「そうですね。聖典で描かれる方術司教が一つの典型ではあります。

 方術により災厄を打ち払い、遍く人心に希望と正義を知らしめる聖人。

 平時においては方術により人々を癒し、道を示し、教え導く者。

 古のローマにおいて魔人イエスとその使徒を打ち破った、救世主ユダとその仲間から来た称号ですね」

「教父ユダですか。

 十層方陣を展開して天変地異を引き起こし、死者をも蘇らせたと云う。

 他にも相当に荒唐無稽な話が伝わっていますが、実在した事はほぼ確実みたいですね」

「彼が生きた時代は聖典学の花形ですからね。数多の学者が研究し尽くしています。

 それにローマというのは記録好きな文明で、千年以上前の当時の記録もそれなりに現存しています。

 同時代の他の地域の公文書を照らし合わせても、方術を良く使うイスカリオテのユダが実在した事は間違いないでしょう。

 彼の逸話にしても、後世の創作によるところも大きいでしょうが、史上稀な方術士であった事も間違いありません。

 特に内在魔力の量は凄まじく、身に纏う魔力が輝き頭に光冠を戴いている様に見えた、などという話がローマの公文書に残っています。

 十層方術を打ったというのもおそらく事実でしょう。実在を確認できる数少ない十層階梯の術者ですね」

「やはり、高位方術を展開するには魔力量が必要という事ですか」

「仰る通りです。

 最後にものをいうのは、結局は内在魔力の量です。

 元素、要素など呼び方は多々有りますが、要は身体に蓄える事が出来る力の量ですね。方術士は内在魔力を用いて周囲の要素を収束、加工して現象を操作します。

 これが少ないものは大規模な術式を展開出来ないし、数も打てません。

 戦闘において一発二発で力尽きる方術士は、如何にも頼りになりません。まあ、打てないよりは救いが有るとも言えますが」

 

 ヘーリアンティアは前から気になっていた事を、この機会に聞いてみる事にした。

「ウェネーの属性は水と月なのですよね」

「仰る通りです」

「前から思っていたのですが、何だか水属性って使い所が難しくないですか?

 非常に乾燥した場所、例えば砂漠などではどうするのですか?」

 ウェネーは苦笑しつつ頷く。

「砂漠ではどうにもなりませんね。

 人間が活動する以上有る程度の飲料水は携帯しているでしょうから、それを使って何とかするか、地下水脈を探すか、後天属性で戦うか……。

 最後の手段として、自分の血液を使うという手も有ります。

 仰る様に、水属性は環境に大きく左右されます。

 水源の有る場所では素晴らしい効率で力を振るえますが、力を最大限に発揮出来る場所は少ないでしょう。

 そういう意味では術者に工夫が必要な属性であり、直接戦闘に向いていない部分はあります」

 ウェネーがいったん言葉をきり、講義を続ける。

「良い機会ですから方術に於ける他の属性のおさらいをしましょう。

 まず、水の反属性である火属性。

 これは最強の破壊力を持つ反面、全く柔軟性のない属性です。

 広範囲を燃やし、破壊する事に措いて他の追随を許さないので、優れた炎術士を何人抱えているかで軍の攻撃力が決まるとすら言われます。しかし、戦闘以外の局面では殆ど役に立ちません。

 例えば、方術史上最大の発明と言われる『転移門』も火術には有りません。

 研究が進めば開発されるかもしれませんが、あまり研究もされていません。彼らは日々如何に破壊するかだけを探求しているのです。 

 まあ、方向性が一つなのである意味悩む必要のない属性です」

 ウェネーは、何やら炎術士に含むものがありそうだ。暗に馬鹿にした様な言い方にも聞こえる。反属性故の対抗意識なのか、過去に何かあったのか。

「炎と違って全てに調和が取れているのが風の属性です。素早く、攻防に優れ、索敵能力も高い。

 水や大地と違って大気が無い場所は有り得ませんから汎用性にも優れています。

 少数での対人戦では最良の属性と言われますね。便利な方術が多いので、お嬢様も余裕が有れば学んでみると良いかと思います。その性質上、冒険者の小隊で最大限に力を発揮する属性ですね。

 その反属性の地は防御的な戦闘に優れた属性です。攻撃に措いても高い能力がありますが、何も考えずに大規模方術を使うと地盤を崩して自壊しかねません。そういう意味では風より運用が難しい属性でしょう。

 地術士は大型獣など、大きく硬い強敵との戦いで最も力を発揮するといいます」

「そして我らが水属性は、先ほども言った通り運用が難しい属性です。

 しかし、それを補って余り有る可能性を秘めてもいますよ。

 例えば、お嬢様が学ぼうとされている治療方術はほとんど水属性以外には習得不能です。血液を操る水術士にも難しい技術体系を、他の属性の者が易々と極められる筈がありません。

 また、治療の裏返しで相手の体液を操作して死に至らしめる事も可能です。

 さらに、水場での戦いにおいては無敵を誇ります。

 私は水属性こそが、総合的に最も調和の取れた最強の属性だと信じています」

 後半は、幾らなんでもウェネーの主観が入り過ぎだろう。客観的な見解とは思い難い。ヘーリアンティアは話の軌道を戻す。

「太陽と月はどんな属性なのですか?」

「後天属性は発現条件からしてよく分かっていません。

 太陽を正義と秩序、月を安息と自由の象徴とは言いますが、正義と公正を司る法律家が月属性である場合もあれば、死後の安息を守る墓守が太陽属性である場合もあります。

 そもそも、どちらも発現しない者の方が多い様ですね。

 私もある日突然月属性を発現している事に気が付きました」

「ウェネーは太陽より月が似合いますね。なんだか優しい感じだし」

 ウェネーが薄く微笑む。

「ありがとう御座います。その論法で言うならばお嬢様は太陽だと思いますよ。

 お名前も太陽の花ですしね」

 ヘーリアンティアは迷宮由来の珍しい花から取られた名前だった。太陽によく似た形のその花を、母が好きなのだ。その姿から正義と光輝を象徴する花でもある。

「太陽は光を用いた攻撃方術に加え、呪いや怨念を浄化する術式や契約、物の形質を開示する術式が使えます。

 例えば、結婚式では司祭の前で誓いを交わしますね。あれはお互いの形質を明らかにし、太陽術士の前で夫婦としての契約を交わしているのです。現在では半ば形骸化して、資格さえあればどんな属性の司祭でも執り行える様ですがね。

 しかし、下世話な話をすれば、教会内で出世をしようと思えばやはり太陽の方が有利です。

 月は太陽の逆ですね。影を用いた攻撃法術に加え、彷徨える死者を鎮魂し、己の形質や姿を隠す方術が使えます。

 ただ、その性質上盗賊や夜の職業の者に独自に受け継がれている方術が多く、秘匿されている部分が大きい。

 おそらく全ての属性の中で、月属性を学ぶのが最も困難でしょうね。私もあまり高度な術は使えません。

 まず師が見つからないのですよ。彼らは伝統的に月術士である事を隠し、隠遁して生きると云います。

 酒瓶の中ででも生活しているのですかね?」

「ディオゲネスの様にですか?

 彼とアレクサンドロス大王との逸話は面白いですよね」

 古代ギリシャに『酒瓶のディオゲネス』と呼ばれる、酒瓶を住処として乞食同然の生活を送る高名な哲学者が居た。

 ある時ディオゲネスが日向ぼっこをしていると、名高いアレクサンドロス大王が噂を聞きつけやって来る。高名な哲学者が本当に何一つ持たずに生きているのが面白く、アレクサンドロス大王は何でも望む物をやろうと言う。それにディオゲネスが答えて曰く、「ならば其処を退け。お前が居ると日陰になる」。

「確かに痛快ですけれど、少し出来過ぎではないですか?

 おそらく後世の創作でしょう」

 気が付けばまた話がずれつつある。ウェネーは非常に気が置けないのだが、話の面白さにかまけて明後日の方向に逸れて行くのが問題だった。ヘーリアンティアは気を取り直す様に首を振る。

「月術士も何らかの思想を持って隠遁しているという事ですか?」 

「東方の拝火教の時代から太陽を善、月を悪とする善悪二元論の考え方が生まれ、徐々に月属性を弾圧する動きが現れます。

 これはローマ時代に頂点に達し魔人イエスの災厄に繋がるのですが、そういった弾圧の歴史の中で培われた生き方なのでしょう。

 実際、『六属性調和論』が現在の教会の教義ではありますが、太陽が他の五属性を包括する大属性であるという意識は根強く残っています。

 私見ですが更に言えば、東方の砂漠の民は逆に月の絶対神が天地を創造した等という教義を持っている様ですが、ローマの弾圧から逃げ出した月術士の末裔が教義の成立に影響を与えたのではないかと思いますね。

 彼らの教義の根の部分は、太陽を絶対視していた頃の我々によく似ています」


「自分の神のみを認め、他を排斥するなんて悲しい事ですね」

「何かを為したい時、神にその権能を与えられたと言うのは非常に手軽ですからね。

 何ら裏付けも元手も必要とせず、言った瞬間から神の代行者足り得るという。そんな理屈が罷り通った時代も有るという事です。

 ただし、神の代行者たる者、己の正当性を賭けて他の代行者達と死ぬまで戦うしかなくなりますがね」

 ヘーリアンティアが眉根を寄せる。ウェネーは先進の知識人だが、その分先鋭的な発言も多い。

「ウェネーは偶に随分と過激な事を言いますよね。

 確かに神というものは争いを起こすややこしい概念ですが、同時に多くに人を救ってきたでしょう?」

「そう仰るお嬢様も、敬虔な信仰者ではなさそうですね」 

 皮肉げに笑うウェネーを見て思案してしまう。慎重に取り扱わねばならない問題だ。

「私は神というものの存在を積極的に否定はしませんが……、肯定に値する存在証明も未だ為されていないと言ったところでしょうか?

 在野の学者の間では、世界の運行への神の介入は否定されつつあるでしょう?

 一方で、神学者が執心する神の存在証明は最早、形而上の概念を捏ね回しているだけの感が拭えません。神学においては重要な事なのでしょうが、世俗から見れば論議自体が不毛だと思えてしまいますね。

 確かに世界には、精霊などと呼ばれる人間と違う法則の元に在る存在は確認されていますし、その中には神と呼ばれる程の力を持つ個体の伝承も有ります。

 でもそれは、教会が崇める天地を創造した絶対神ではないですよね。彼らは己の意思と嗜好の元に行動するだけで、人が祈っても助けてくれる訳ではないですし。

 私はむしろ、神などという確認の仕様が無い概念を振りかざし、其れを崇めなければ現世もしくは死後に永遠の責め苦を味わうなどという教義を語り、人に信仰を強制する教会の構造が嫌いです」

「お嬢様が何事かに嫌悪を持たれるのは珍しいですよね。しかし、お気持ちはわかります。

 真っ当な教育を受けた者なら皆、多かれ少なかれ感じる事でしょう。挙句、贖宥状など売って財貨を集めては何をか言わんや、ですね」

「実は彼らこそが正しくて、我々の様な不心得者は、死後永遠の炎に炙られる運命に在るのかも知れませんがねえ」

「確認の仕様がないのですから、否定の仕様もありません。その時は世の聖職者の大半と共に、火にくべられるしかないですね」

「教会の事を調べてみると、黎明期には弱き者の救済を目指す、もっと素朴な信仰だった筈なのですが……。

 時の流れが全てを変えてしまったのでしょうか?」

「長く続いた組織とはそんなものですよ。

 聖典だって都合の良い記述を加え、不都合な記述を削って今の形に収まっています。原型は最早確かめようがなく、当初目指した理念もぼやけてしまったのでしょう。

 今や教会は、方術を神の奇跡と称してその力と権威を高め、財貨を掻き集める巨大な機構と化してしまっています。

 しかし現在では、方術とは魔力と図形によって現象を操る技術だという認識が相当に広がっていますからね。

 教会も教義の方向性を変える転換期に差し掛かっているのではないでしょうか?」

「でも、あまり教会を否定するのも不味くないですか?

 彼らの力は未だに世俗のあらゆる部分に及んでいます。その力で弱者を救済している面も否定は出来ませんよ」

「お嬢様らしい中庸な見解ですね。それが貴女の持ち味なのでしょうが、私はそこまで大人にはなれません。

 何と言っても、彼らが神の名の元に集めた財貨の大部分は何処とも知れず消えて行きますからね。さぞかし素晴らしい事に使われているのでしょう。

 まあ、異端認定などされると厄介です。お嬢様も人前での教会批判は控えられますように」

 教会の暗部は公然の秘密な部分もあるが、それにしてもヘーリアンティアがたじろぐ程の毒舌だった。

「ウェネーも教会で方術を学んだのでしょう? 

 随分否定的な見方をしますね」

「教会で学んだからこそ、見えるものもあります。

 お嬢様も人事ではありませんよ。

 治療方術を学ぶ為には、著名な教会に入るのが一番でしょうからね」

 ヘーリアンティアが首を傾げる。

「自分で言うのも何ですが、私も神を拝する気持ちは薄いのですが……。

 そんな人間が教会に所属するのは差し障りが有りませんか?」

 ウェネーが悪戯気に笑う。

「それは会派によるでしょうね。

 私が学んだのは学問を重視する実利主義の教会でしたので、色んな考え方をする者が居ました。

 神に仕える為ではなく、方術を習得する為に教会の門を叩く者も多かった。

 教会も方術の探求を第一義にしていたので、様々な思想を黙認していました。

 中には、教会に所属する身だからこそ遊びが愉しくなるなどと嘯いて、夜の街に繰り出す剛の者さえ居ました」

「アブー=ヌワースみたいな方ですね」

「不勉強な事に存じないのですが、有名な遊び人かごろつきの類ですか?」

「砂漠の民の不世出の詩人ですよ。

 悪事を為すも淫楽無くば艶が無し、淫楽を為すも背教無くば深み無し、などと放言して実際その通りに生きた人ですね。むしろ、その生き様こそが一篇の詩の様に鮮烈です。

 彼の詩にしても、人の愚かさに満ちながらそれを笑い飛ばす明るさと、一方で愚かに生きざるを得ない人の本性を穿つ剣の様な鋭さを持ち――」

「砂漠の民の詩まで読んで、其れに共感を覚えるお嬢様の博識には脱帽しますが、流石に話が逸れすぎです。

 と、言いますか、お嬢様の年齢でそんな詩に共感を覚えるのは如何なものでしょうか?」

「これは失礼しました。話を戻しましょう。

 つまり、ウェネーの学んだ教会は、思索よりも実利を重視していたということですか?」

「そういう事です。

 極端な会派ですが、方術の発展こそ飢える者を救う最良の道だと考えているのですね。

 私の考えとしましても、本音は本音としてお嬢様も何処かの教会に潜り込んでしまえば良いと思います。

 教会で学んだ者が活躍すれば教会の名声も高まる。結果として神の威光を知らしめる事にもなる。要は教会の損にならないように行動すれば、お互い恩恵を受けられるのです」

 よく言えば柔軟、悪く言えばお座なりな考え方だった。気真面目で理知的なウェネーの意外な一面を知ってしまった事に驚く。

「言っている事はよく分かりますが、些か不心得な様に感じるのですが……」

「私は小さな貴族の家に生まれましたからね。

 方術を学んで身を立てるには教会で学ぶしかなかったのです。正道だけが道ではありません。加減を見極めて強かに立ち回るのも人間の知恵というものですよ」

「なるほど、そういう考え方も有りますか。

 別に教会に入るのが嫌という訳ではないのですが、領内の誰か高名な医療方術士に弟子入りしても良いのではないですか?

 あるいは、この街の大学に入るという選択肢もありますが」

 ゲルマニカ領は非常に広い。医療方術士も相当な数が住んでいるだろうし、騎士団にも治療担当の術者は居る。大学の医学部の教授だって立場相応の技術は持つ筈だ。

「それが悪い選択肢だとは言いませんが……、私は何処か有名な教会で修行した方が良いと思います。どうせ学ぶのなら最高の環境を求めたいですね。

 歴史の有る修道院は、収集した蔵書も施設も個人の所有する物とは規模が違います。この街の大学は歴史が浅いですからね、設備や教員の点ではどうしても見劣りします。まだまだ発展途上と言ったところです。

 それに、名の知れた修道院は集まる人材の質も素晴らしいものです。そんな中で学生同士切磋琢磨するのは刺激になりますよ。

 様々な地方の学生が居るでしょうから、珍しい方術を見る機会にもなり、有望な人脈も作れます。

 私としましては、お嬢様も外の風に当たって来れば良いと思うのですよ。学生というものは、忙しくも中々に楽しいものです。立場を気にせずに同世代の友人を作る貴重な機会ですね」

「なるほど、友達が出来るのは素晴らしいですね」

 城の人間は皆良くしてくれるが、領主の娘という事で一線を引いている部分が有る。同世代の対等の友人というものに憧れる気持ちは有った。確かに、この街の大学に行ったとしても対等の友人と呼べるものが出来るかは疑問ではある。

「まあ、治療方術を学ぶ先を探すのはもう少し後の話ですね。 

 今は基本的な水術を学び、方術の運用方を身に付けましょうか。

 幸いお嬢様は、先ほど言った四つの要素を兼ね備える稀有な才をお持ちだとお見受けします。

 修練次第では方術司教に足る術者に成る可能性すら有るでしょう。旅立たれる前に、可能な限り私の知る術をお教えします。

 では、まずは先ほどの『水蛇』の術式をやってみましょうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る