無題
雪解けの風は
まだ冷たくて
指先や鼻や頬は
あっという間に
紅く凍てついて
それでも
光が射せば
ポカポカと暖かい陽気に
春の歩みを感じる頃。
辺りには
水の音が溢れていた。
耳を澄ませば
氷柱を伝って落ちる雫の
可愛い音楽、
小さな川を作り
流れていく路肩で
まだ山と残る氷の粒が
キラキラと息づき、
地下では
排水溝の中を
勢いよく流れて響く。
どこまでも澄んだ空気が
素敵なイオンに満ちている。
車が通る度
水しぶきの轟音が
辺りを黒く染める。
道行く人々は
足元を気にして
泥だらけに濡れる靴に
しかめっ面を浮かべて。
世界が輝きに満ちても
汚いと嘆く、
汚しながら
汚れたままに。
祝福を映さない
あなたにも
季節の訪れがありますように。
「奴が大人になれたら他の友人もそばにいてくれる。仲良しも出来るだろ。誰もいない、それは自分が幾度のチャンスを蹴散らした結果だってことがいつわかるのか」
不意に
届いた言葉は
一陣の風だった。
「どうすればそれは届くかな」
ふと現実に返る瞬間の
不思議な実感。
浮遊感に似た
大切なときめき。
希望の光は
絶望に射す。
閉ざさぬ限り
求める限り。
前に進む力を
壁を壊す力を
持てる人間もいれば
持てない人間もいる。
その過程や結末すべてを
一人の責任だとは
思えないんだ。
深く息を吸えば
細胞たちは目覚めるから。
春を始めなければ
何も動き出さない。
ねぇ
今日は
どんな自分が
生まれますか。
一瞬一瞬を生きて
一瞬一瞬に死んでいく
繰り返しながら
折り重ねながら。
明日はもっと
その先に行けますか。
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