女将

 ***



 奉公にくる

 わっぱ共とは違ってね


 こいつらは

 拾って来たのさ。



 上は六つのわっぱ


 下は四つになるが

 口のきけない子でね。



「それ、なんだ?」



 くんくんと

 ハナをひくつかせ

 上のわっぱが

 覗き込む、


 風呂にいれてやったから

 身なりだけは

 綺麗になった。



「こいつは、働いたご褒美だよ。甘くて美味しいんだ。力がまた湧いてくる」



 ここでは

 珍しくない。


 そんな高いもんでもない。


 わっぱを労うには

 ちょうどいいのさ、


 ちょこれいとという飲み物は。



「おっと、あんたらはまだだよ。ちゃんと働くんだ」



 伸ばした手を

 ぱしんと叩き落として


 雨戸を開けると

 庭を指した。



「薪が転がっているだろ」



 わっぱは

 甘い匂いに

 涎を飲み込みながら


 草履を履いて

 庭に降り立つ。



「薪を全部拾って、そっちの小屋にしまっておいで。それが終わったら飲ましてあげるよ」



 小さな手で

 薪を抱えて

 何度か落としながら


 下のわっぱに

 怒鳴り出す。



「お前も手伝えよ!」



 欲張って

 たくさん抱えようとするから


 またぼろぼろと

 薪を落とすのが


 なんだかおかしかった。




「くそ! 持ちにくいよ!」


「いいかい? 働くってのは、人をアテにしたり、文句をいったりしないで、せっせと自分の手を動かすことだ」



 ちょこれいとを

 鍋にかけ


 ふたりの分を用意しながら

 言ってやると


 ふてくされた

 可愛いわっぱの声が返った。



「手がたりないよ」


「ははは! 手がたりなきゃ、足を使うんだよ」



 まだまだ

 自分の力を

 出しきっちゃない、


 わっぱの戯言だ。



「そうか! 足で挟んでもう一本」


「お馬鹿! 違うだろ? 足を使うってのは、何度も足で通ってなんとかしろって意味だよ。おまえは手や足より前に、頭を使いな!」



 大笑いしている私に

 下のわっぱが

 皿を出してきた。


 頭を軽く撫でてやる。



「いいかい? 平たい皿はこぼれちまうからね。こっちの器を使うんだよ」



 わっぱは

 こくんと頷いた。




「お前たちには、なまえでもつけてやらないとね」



 2010/1/15 (Fri) 13:41 



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 以前日記に書いた

 短編が出てきたので載せてみました。


 舞台背景を

 一切省いても

 いつでどこでどんな立場か


 なんとなくでも

 ぼんやりとでも


 感じ取ってもらえるか、



 そういう試みなので

 かなりのカットで

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