AM3




 例えばそれが二時なら深夜、四時なら早朝って私なら云う。


(でも三時って微妙)


 ――寝惚け眼がデジタル時計のほのかな数字を読み取って無意味に思った。


 こんな時間に目を覚ましてしまったけれど、起きるつもりは毛頭ない。私の浅い眠りは窓辺をテラテラ照らすアレに呼ばれただけ。


 黄色、オレンジ、何色だろう。クルクルとせわしく回転するサイレンランプ。カーテンをしていても点滅するみたいな明かりが天井にまで映り込む。


 重機の稼働する音は独特。車のエンジン音とは違う、まるで生き物のようにオンオンと啼く。そうあれは力強く苦しげで誇り高い古代の生き物。冷たく引きずる重たい鉄の鎖の音が時折するでしょう?堅い地面にズンと倒れ込むような振動も伝わる。ゆっくり遠ざかったかと思えばまた勢いを高めてやってくる。右往左往する巨体。



 実際はそんな壮大なロマンではなくて、雪国にありふれた除雪作業なのだけど。人々が寝静まる夜に大きな大きな音をたてて、ガリガリと地面と壁を削いでいく恐竜ダンプ。

 ――不思議とそれをうるさいとは思えず、むしろ騒音が心地好かった。


 皆がぬくぬくとお布団の中で夢を見る頃。寒いコクピットの中で一生懸命道を広げてくれている。たくさんの人が暮らしを支えてくれてるんだなんて思ったら自然と心もほこほこした。


 冷たく白いあの雪は、そっと世界を包み込んで、光りも闇も音さえも、優しく変えてしまうんだ。



 昨日と今日と明日の境界線も曖昧に、夢に返る刹那。現の狭間で微笑んで。



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