タイトル:親愛なる、私のヒカリへ
親愛なる、私のヒカリへ
はじめまして、ヒカリ。
私は今、この手紙を王宮から書いています。王宮などと言うと、まだ純粋で素朴なあなたたちからすれば身構えるかもしれないけれど、大したことはないのよ。今は光の国の貴族として、国政や魔法の均衡維持なんかに務めている私だけれど、私にもあなたたちのような――そう、単なる成績優秀者の時もあったのよ。
きっとこの言葉を聞いて、真面目なあなたは頬を膨らませたことでしょう。だけれど気にしないで。侮辱しようとしたつもりはないの。今の私にとっては、そんな当たり前の日々が、ただひたすらに恋しい。
ただ、それだけ。
あなたにも、そう感じる日がやってくるわ。いつか――。
さて、おばさんのくだらないノスタルジーなんて置いておいて、これから高等部に進むあなたにこの世界の知識を与えましょう。
成績優秀なあなたには退屈な話かもしれないけれど、おさらいだと思って読んでちょうだい。
きっと、これからの世界を動かすのはあなたたち、未来ある若者だと思うから――。
まずはこの世界の成り立ちからね。聡明なあなたは、神話には往々にして事実と異なるつじつま合わせのようなものが存在することもすでに知っているでしょう。この世界の真実にも、残念ながらそういったものが含まれているわ。つまり――この世界は《神》が創造した、ということになっているけれど、本当のところは誰にも分からないの。
とにかく――その《神》は、始めに海を創った。この星の約7割が海なのは、そういった背景があるからかもしれないわね。その後、《神》は6つの大陸をつくったの。
豊潤な資源と知識を持つ国――
熱き心と工業的発展の国――世界の中で最も小さな
平穏と和の国――
希望と太陽の国――
無欠と孤立の国――
そして《神》は、最後にもう1つ国を創った。それが欲望と月の国、
――これが世界の成り立ちね。《神》は国が誕生してからしばらくして、いのちを与えた。主に植物の国には動物や植物が、そして各国には人間が住み始めたの。そしてそれからさらにしばらくして、神は我々の源を与えた。そう、魔法よ。
それぞれの国に、それぞれの属性の魔法が与えられた。今では考えられないことだけれど、属性はその人の国籍のようなものだったのよ。それから何千年もの間、それぞれの国は独立的に発展を続けた。けれど
そしてそのさなか――異国同士で結婚する者や、移住をたくらむ人たちが現れ、世界と属性の均衡は破られた。今のように、色々な国に色々な属性の人が現れるようになったの。各国に学校や道路や乗り物がつくられた今では、そんなこと当たり前の話だけれど。
さて、魔法の種類についてもお話ししましょう。この世界の魔法は、大きく3つに分けられる。「詠唱系」と「自然発生系」、そして「武具系」よ。
「詠唱系」は、主に杖を使用する魔法使いにみられる魔法。そう、あなたたちのようなね。詠唱によって杖に《想い》を乗せ、魔法を発生させるの。魔法の中では最も簡単なものよ。
「自然発生系」は逆に最も難しい魔法なの。なんの道具もなしに、水や炎などを操る魔法よ。相当な修行をしなければ、会得できないわ。
「武具系」は、魔法の力で剣や銃などの武器を生成し、それ自体に《想い》を乗せるものよ。強い武具ができるかどうかは術者次第だから、難易度としては何とも言えないわね。
これら3つの魔法は必ずしも独立しているわけではなく、例えば武具系でありながら詠唱によって魔法の成立を補助する魔法使いもいたりするわ。「混合系」なんて言ったりするわね。
――このように、この世界には様々な属性の様々な魔法使いがいる。だけれど大切なのは、和平と協力に他ならないわ。ヒカリ、迷ったときはあなたの名を思い出して。きっとあなたのご両親があなたの未来を考えてつけてくださった素敵な名よ。
いつか会えることを願って。
宮廷教育長官 スター・モイド
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます