2羽目 くす玉の中のハト達
今、正に大型貨物船が完工され、処女航海への祈念式典の準備が着々と進んでいた。
ここは、くす玉の中。
「暗いよーーー!!狭いよーーー!!」
「痛てえな!!爪で引っ掻くな!!」
「バカヤロウ!!俺の顔に糞するな!!」
「くっ!苦しいイイイイ!!」
くす玉の中では、夥しい数の白いハト・・・ギンバト・・・達が鮨詰めになって犇めき合っていた。
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ・・・
しゅーーーーーっ!!
しゅーーーーーっ!!
しゅーーーーーっ!!
しゅーーーーーっ!!
「何だよ・・・この音・・・」
「ひっひいいいい!!!」
「うっせえ!!黙ってろ!!」
「あーーーイライラする!!」
くす玉の壁の外では、妙な物音がひっきり無しに聞こえてきて、身動きが取れないハト達の不安を一層高めた。
ぱたん。
「ギクッ!!」
「心臓に悪いよ。」
「これで、僕らはもう逃げられない・・・」
「ああああーもうおしまいだーー!!」
「なにいってるんだコノヤロー!!」
ようやく、くす玉の準備は整ったようだ。
ガシッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
くす玉の外では、轟音が響き渡る。
「吊り上げられていく・・・」
「いったい、何するんだ?!」
「怖いよーーー!!」
「黙れ!!お前ら!!」
轟音は収まった。
どうやら、くす玉は大型貨物船の舳先に固定されたようだ。
ギシギシギシギシギシギシ・・・
「揺れてるよーー!!揺れてるよーー!!」
「ひええええええ!!!」
くす玉の中のハト達のストレスは、既に限界に来ていた。
「腹へったな・・・」
「もう外に出たいよ!!」
「やだ!!ここから出せ!!」
「私、ここで死にたくないいいい!!」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!!!
くす玉の中のハト達は、むさ苦しいくす玉から脱出したいと、くす玉の壁を爪で、嘴で引っ掻き回した。
「出して!!出してくれ!!」
「きゃーきゃーきゃーきゃー!!」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!!!!
ハト達は正にパニックになっていた。
ハト達はもがいた。
ハト達は壁を引っ掻き回した。
やがて・・・
ぱりっ・・・
ぱりぱりぱりぱりぱりぱりぱり・・・
壁は遂に穴が明き、ビリビリと破けた。
「やったーーー!!」
「出られるぞーーー!!」
「ひゃっほーーーー!!」
「あれ・・・」
「ちょっと待って!!」
「これは・・・」
ハト達は、呆然とした。
壁の向こうには、カラフルな・・・
「ふう・・・ふう・・・」
「ふう・・・せん・・・」
「風船?!」
「何でここに風船が?!」
壁の向こうには、無数のカラフルはゴム風船が犇めき合っていたのだ。
その風船群には、ヘリウムガスが充満していた。
そう、処女航海セレモニーで、くす玉が割れると同時にハト達と共にこの風船群も空へ舞い上がることになっていたのだ。
「うわっ!うわっ!うわっ!うわっ!」
「風船が進入してした!!」
「タスケテ!!」
破れた壁から、次々と風船群がなだれ込み、ハトと風船がもみくちゃになって更にパニックになった。
「風船に触るなよ!!パンクするぞ!!」
「解ってる!!解っ・・・」
ぷすっ・・・
ぱぁん!!
ぽぉん!!
「きゃっ!!」
「風船が割れた!!」
「ワレワレハウチュウジンダ!!」
「どしたの?その変な声?」
「フウセンノナカミヲ吸っタら、声変わるよ!!」
「へーほんと!!」
「その中身を吸った風船ちょうだい!!」
「どするの?それ?」
ぷぅーーーーーーー!!
「膨らんだーーーーー!!」
「どう?この吸い込んだこの穴から息を吹き込むの。で、離すと?」
ぷしゅーーーーー!!ぶおおおおおおーーーーー!!しゅるしゅるしゅるしゅる!!
「ひゃーー!!」
「やめろーーー!!こんな狭苦しいとこで風船をぶっ飛ばすなーーーー!!」
「よおしー!!俺が膨らますぞーーー!!」
ぷぅーーーーーーー!!
「でっかーーーく膨らんだ!!」
「どだ!!もーーーっと!!」
「やめーーー!!」
ぷぅーーーーーーー!!
ぱぁん!!
「ひゃっ!!」
「きゃっ!!きゃっ!!きゃっ!!軽い!軽い!」
「でっかい卵産んじゃった!!」
「なにそれ?面白いー!!」
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぽぉーん・・・ぽぉーん・・・
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぽぉーん・・・ぽぉーん・・・
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぽぉーん・・・ぽぉーん・・・
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぽぉーん・・・ぽぉーん・・・
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぽぉーん・・・ぽぉーん・・・
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぷぅーーーーーーー!!
ぽぉーん・・・ぽぉーん・・・
ぱぁん!!
ぷしゅーーーーー!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
ぱぁん!!
くす玉の中身は、ハトの入る部分と風船の入る部分で等分に仕切られていた。
その仕切られていた壁を中のハトが渾身の力を込めてブチ破ったので、ハトと風船がごっちゃになり、正にくす玉の中は、
白いハトの風船パーティー
と化していた。
ぱぁん!!
最後まで残っていたオレンジ色の風船が、鉤爪で引っ掻けて割れたとたん・・・
ぱっぱぱぱ~~~~~~~~~~~~~~~!!
ぱぱぱぱっぱぱぱぱぱぱ~~~~~~~~~~~~~~~!!
ぱぱぱぱっぱぱぱぱぱぱ~~~~~~~~~~~~~~~!!
人間のトランペットが鳴り響き、大型貨物船完成の祈念式典が始まった。
ぱかっ・・・
「うわっ!!」
「開いた!!」
「堕ちる!!」
「翼を拡げろ!!」
「やっと外に出られた!!」
ぽっぽーー!!ぽっぽーー!!ぽっぽーー!!
風船のヘリウムを吸い過ぎて変声の感嘆をあげて、白ハト達は一斉に開いたくす玉の暗い中身から飛び立った。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
!!!!!!
「・・・・・・?!」
「なんじゃこりゃ?!」
「風船は?」
「ちゃんと入れたと言っていますが・・・」
式典に参加した大型貨物船の製造担当者達は、割れたくす玉から紙テープや紙吹雪と共に飛び出して来たのは、ハト達が割ったり萎ませたりしたカラフルな風船の破片と・・・
その風船の破片を翼は頭や脚に張り付けたり銜えたまま、フラフラと何食わぬ顔で飛んでいく白いハト達だった。
くす玉の中身の件で騒然とする式典を、ぼーーーーーーっ!!とくす玉の紙テープをなびかせて出航していく大型貨物船を見下ろしながら、白ハトはこの自由な大空を翼をはためかせて飛びまわった。
~くす玉の中のハト達・END~
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