第29話 襲撃
「こうなったら、エルフの里を襲った人の杖を奪うのがいいかもね」
宝石を集めるなんて簡単なことじゃない。里長さんに話せば、簡単に集まるかもしれないけど、私の言っていることを信じてくれるか分からない。それに、私がわざわざ里長さんにお願いしに行く理由がない。フレンやエストが呪われているのなら迷わずお願いしに行くけど、呪われているのはエルフだけだから、正直なところどうでもいい。この場で死なれたらゾンビ化して襲ってくるから面倒だなーって思うくらい。
でも、見捨てる理由も特にはない。散々怖がられているけどエルフを嫌いにはなってないし、簡単に解呪できるなら、疲れるかもしれないけど解呪してあげる。
「その杖があればルナが解呪してくれるのか?」
「まあね。杖が壊れたりしない限り、必ず解呪してあげる。疲れるから、そこそこのお礼を用意していてくれてもいいよ」
解呪するには杖を奪う必要があって、それが一番の難題。私の予想が正しいのなら、
「もちろん礼はする。だとすると、俺たちで杖を奪ってくるしかねえな」
「私たちも行くよ」
エルフに任せると、杖を持った不気味な人間を殺してしまうかもしれない。もしソフィアさんだったら、フレンが悲しむことになる。だから私たちも行かないといけない。
「悪いが足手まといになる。利き手を失った剣士と子ども二人。それに里の問題でもある。ここは俺たちに任せてくれ」
「嫌だ。どれだけ止めても勝手に行くよ」
エルフの里の問題かもしれないけど、私たちの目的でもあるかもしれない。一歩も譲る気はないよ。
🌙
ニッチと話し合ったことをフレンとエストに話した。あと、悲しいことにウリ坊がエストから離れなくなっちゃった。私が嫌われているのか、エストが懐かれ過ぎなのか……
「ルナ。エルフの里が襲撃を受けた時の、エルフの犠牲者が何人か聞いてる?」
エストがウリ坊と遊びながら聞いてきた。楽しそう。
「聞いてないよ。ニッチ、エルフの犠牲者何人か知ってる?」
「里の戦える者はほぼ死んだと聞いた。里長が出なければならないほど追いつめられたらしい」
里がそんなピンチな時にニッチは逃げ回っていたんだね……。まあ、勝てない相手が現れたんだから、逃げる気持ちも分かるよ。ニッチにとって、エルフの里には自分の命より価値のあるモノがなかったんでしょ。
「そういうことらしいけど、それがどうかしたの?」
エストに聞いてみる。私は何か失念しているのかな。
「ルナが自分で言ったんじゃない。倒した相手をゾンビにする呪いを敵は持っているのでしょう? なら、すでに倒されているエルフたちがゾンビ化してもおかしくないでしょ」
…えー! なんで私はこんなことに気が付かなかったの。
「そういえば里のどこにもエルフの死体はなかった。ねえニッチ。エルフの死体はどこにあるの?」
「それが消えちまったらしいんだ……」
不味い不味い不味い不味いよ。たぶん、杖を持った不気味な人間が、ゾンビ化したエルフをいったん集めているんだ。いつ攻めてきてもおかしくな……
外で悲鳴が聞こえた。
🌙
外に出た途端、三人のエルフが襲ってきた。生気が感じられない。これはゾンビ化してる。たぶん。
「下がって!」
フレンは利き手を失って戦えない。私が前衛をしないと。
「見くびらないでほしいな」
私が前に出るよりも早く、フレンが前へ飛び出す。振るう剣に以前のような鋭さはないけれど、エルフのゾンビ三人を下がらせた。左手でも剣を扱えるんだ。さすがだね。
仕方ない。いつもの役回りだね。私は両手に小さな魔剣を作って、下がったエルフに投げる。真ん中と右のエルフに当たりそうだったけれど、風の魔法で撃ち落とされた。ゾンビのくせに回避したり魔法使ったり……森の破壊王のゾンビより賢いみたいだね。
「二人とも! 下がりなさい! 《ファイアストーム》」
うわ、また火傷しちゃう。私とフレンは急いでエストの近くまで下がる。
……何も起こらない。
「二人とも! エルフが来てるわよ!」
「ああもう!」
魔法失敗か! 私との決闘の時は成功させていたのに、どうしてこういうときに失敗するの。
とりあえず、また小さな魔剣を二つ作って投げる。今度も回避行動をとった。避けられはするけれど、エルフの勢いは落ちてくれる。
「今度は成功させるから!」
「やめて! この距離でエストが魔法使ったら、私たちだけじゃなくて病院まで巻き込まれちゃう!」
そうなったら、病院の中のエルフたちも死んじゃって、ゾンビ化しちゃって、さらに敵が増える。それだけは勘弁してほしい。
「そうね……なら、新技でいくわ!」
……新技?
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