第28話 ゾンビ化
情報が不足していることにフレンとエストも気がいてくれた。さっそく情報収集をしたいところだけど、人間の私たちが集めようとしても断られる可能性が非常に高い。
「というわけでニッチ、よろしくね」
「はいよ」
ニッチも頼まれることを予想してくれていたみたいで、ベッドで休んでいるエルフに聞きに行ってくれた。フレンとは違って察しが良いね。素晴らしい。
「そう思わない?」
と、フレンに言ってみる?
「えっと……何がかな?」
さすがに察せないか。今のを上手く返せてたら見直してあげたのに。あーあ、チャンスを無駄にしちゃったね。
「もしもエルフの里を襲ったのがソフィアさんだったら……フレンはどうする?」
適当にフレンに聞いてみた。適当に考えたにしては重大というか……うん。かなり大事なことを適当に聞いちゃったね。
でも、聞いてしまったからには仕方ない。手遅れかもしれないけど、ちゃんと真剣な顔を作ろう。キリッ。
……真剣な顔、できてるかな?
「ソフィアを止める。右腕を失って満足に剣を振れなくなった……が、そんなこと関係ない。ソフィアの恋人として、必ずソフィアを止める」
「そっか」
助けるじゃなくて止めるなんだね。これ以上エルフの里を襲うようなことがあったら、たとえソフィアさんを傷つけてでも止めるってことだろうね。
そんなことさせない。フレンがソフィアさんを本当は傷つけたくないことくらいは分かる。本当は助けたいけど、とても悩んで覚悟したことだって分かる。でも、フレンにそんな辛いことはさせないよ。
🌙
今度はエストの体が無事なのか確かめたいから、お腹あたりをペタペタと触ってみる。
「こ、こら! やめなさい!」
ふふ、こちょこちょこちょ。脇腹をモミモミしてみたり。エストがくねくねしてて面白い。
「やめっ……がるー!」
うわ、威嚇された。ベッドに乗っかっていたウリ坊が驚いて、私の後ろに隠れる。エストもウリ坊も可愛いな。私も見習わないと。
よし……
「がるー」
「プヒ―!」
あらら、エストに威嚇したのにウリ坊が驚いちゃった。またベッドに飛び乗って、今度はエストの後ろに隠れる。
「また来たわね! おりゃ!」
おお! ウリ坊がエストに捕まった。さて、どうなる。
「可愛いわねー。こんなに可愛いと食べちゃいたいわね」
「プヒ―プヒ―!」
もう仲良しになったみたいだね。エストも大丈夫みたいだし、ウリ坊のことはエストに任せておこう。
🌙
ニッチの情報収集の様子を見ると、どうやら何か異変が起きているみたいだ。
「どうしたの?」
ニッチに聞くと、困ったような顔で頭をポリポリと掻きながら私の方を向く。
「このエルフなんだが、少し様子が変なんだよ。いや、他のエルフもなんだが……」
どれどれ……あ、これは。どうして気が付かなかったんだろ。フレンとエストに集中し過ぎていたからかな。こんなに大きなヒントが目の前にあったのに気づかないなんて。
「ニッチ。この病院に光魔法を使えるエルフっているの? 闇魔法でもいいんだけど」
「エルフは風が得意で次に水だな。光魔法は得意な種族じゃない。いないんじゃないか?」
そっか……じゃあ、気付かなくても仕方ないか。
「気付きにくいけど、みんな呪われちゃってるね」
それと、この呪いには見覚えがある。
つまり、森の破壊王をゾンビにした人物とエルフの里を滅茶苦茶にした人間、この二人は別人ではなくて同じ人なのかもしれない……ということかな。
杖を盗まれた次の日に、ゾンビ化してから数日も経っていない森の破壊王と出遭って、杖を持った不気味な人間がエルフの里を襲った。お父さんの杖にゾンビ化させる効果があるのか知らないけど、まあ……あるということにしておく。
杖を盗まれた次の日にゾンビ化したばかりの森の破壊王と出遭ったりとか、タイミング的にソフィアさんがゾンビ化させてるっぽいんだよなー。そうとは決まっていないから、違うことを願っておくけどさ。
「このまま死んじゃったらゾンビになっちゃうんだ。様子が変なのは、たぶん呪いのせいで気分が悪いんだよ」
私は呪いに耐性があるから、呪いにかかった時の気分は分からないんだよね。シスターに石化された時はすごく痛かった。知っているのはそれくらい。
「呪いか……それは不味いな。解呪方法なんて知らないぞ」
「私知ってるよ。でも、これだけのエルフをみんな解呪しようと思ったら、相当の数の宝石が必要だね。見た感じ二人解呪するのに宝石一つってところかな」
「そんなに宝石ねーよ」
ないのか。それじゃあ駄目だね。
「じゃあ、闇属性の強力な杖がいるね。呪い系統だとさらにグッドだよ」
「杖は風か水しかないぞ」
……どうしようもないね。
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