第26話 ウリ坊
里長さんの家から出て、いろいろと考えた結果、エルフの里から出て森に入ることにした。この森にはたくさん茸があるらしいから、見つけてウリ坊に食べさせてあげる。毒茸かどうかはニッチが判断できるみたいだから安心。
でも、ウリ坊はちゃんと食べてくれるかな。もぞもぞと動いてはいるけれど、全然力強さを感じない。食べられないほど弱ってたらどうしよう。茸を粉々にしてからだったら食べれるかな。
「お、さっそく見つけたぞ」
ニッチが地面に生えている茸を引っこ抜いて持ってきた。ウリ坊の顔に茸を近づけると、ゆっくりとウリ坊が茸にかぶりつく。おお、食べてる。
「よし、次行くか」
食べ物は見つかったから、近くにあるという川に行くことにする。そこでウリ坊を洗ってあげる。水が綺麗だったら私も少し洗おうかな。
近くにあるというだけのことはあって、川はすぐに見えてきた。周りが自然だらけなおかげか水が透明できれい。
よし、到着。靴を脱いで川に足を入れてみる。冷たい。ゆっくりとウリ坊も川に入れてあげる。嫌がっていない。お利口さんだね。あまり長々と洗っていると寒くなっちゃうから、今回は簡単に洗ってウリ坊を川の横に寝かせる。暖かいからすぐに乾くでしょ。そこでのんびりと残りの茸を食べててね。
どうしようかな。ニッチが近くにいるけど服を洗っちゃおうかな。いや、服を買ってから洗えばいいのか。残念だけど顔とか腕とかを洗うだけにしとこ。
「川で洗わなくても風呂に入ればいいだろ」
え、お風呂あるの?
「俺の家のを貸してやるよ」
「ありがとう。先に服を買わせてよ。それから行こう」
エストには悪いけど、先に体をきれいにさせてもらおう。
🌙
服を買ったりお風呂入ったりご飯食べたりしていたら、あっという間に時間がたってしまっていた。暗くなる前に情報収集終わらせたいな。まずは、ニッチの知っていることを話してもらおう。
「なあ、気になっていたことがあるんだが、一つ聞いてもいいか?」
聞こうとしたら聞かれた。何だろう。
「いいよ。私も聞きたいことがあるから情報交換しよう」
「いや、情報というかだな……ルナはお仲間の兄ちゃんのこと好きなのか?」
はぁ……そんなこと気になってたんだ。隠すようなことじゃないから教えてあげよう。
「好きだよ。私の暮らしていた村には、フレンみたいにかっこよくて優しいお兄さんなんて一人もいなかった。もうメロメロだね。だから……」
ニコニコとニッチを見る。なんでリーゼおばさんみたいな顔をしたんだろう。なんとなく、そんな気分だった。
「だからね。もしも、フレンにエルフの誰かが酷いことをしてたら、絶対に許さないから。ニッチも里長さんも他のエルフも、誰一人許さない」
「……お前いくつだよ。ガキの言うような台詞じゃねーぞ。まったく、ちょいと気になって聞いてみたが、恐ろしいものを見せられちまったな」
「何言ってんの。私は可愛い十歳の女の子だよ。恐ろしいわけないじゃん」
ふふふっと笑うとへへへっと笑われた。ニッチにじっと見られている。私のすべてを見通そうとしているかのように。
「ニッチってさ。里のピンチに逃げ出した臆病者じゃなかったっけ?」
「よく知ってるな。もしかして俺のファンか?」
まったく。ニッチでこれだと、里長さんには要注意だね。
🌙
ウリ坊が元気になってきた。
「プヒープヒー」
なんかプヒプヒ鳴いてる。可愛い。
相手してあげたいけど、ちょっと待っててねー。
「今度は私が聞く番だね。里長さんが易々と渡さないって言ってたけど、何か守ってる物でもあるの?」
「そういや言ってたな。この里にはエルフにとって大切な宝があるんだ」
ふーん、なんとなく予想はついていたことだけど、私にぺらぺらと教えちゃって大丈夫なことなのかな? まあ、里長さんもヒントみたいな感じで言っちゃってるし、ばれても問題ないのかな。
「風のオーブっていうんだが、詳しいことは里長しか知らない。どこに置いてあるのかも俺らは知らない。役立たずで悪いな」
「最初から期待してなかったからいいよ」
たぶん、ニッチから聞けるのはこの程度。エルフの里を滅茶苦茶にした人がどこへ行ったのか、どんな攻撃をしてきたのか、その二つくらいは最低でも聞いておきたい。
「というわけで、病院に戻るよ」
あそこにはエルフの里を滅茶苦茶にした人と戦った人が何人も休んでいる。どこへ行ったのかは知らなくても、どの方向へ行ったのかくらいは聞けると思う。どんな攻撃をしてきたのかも間違いなく聞けるでしょ。
「プヒープヒー」
こら、暴れないの。元気になってきたのは嬉しいけど、こう暴れられると疲れちゃうね。
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