第21話 森
目を覚ますと、たき火代わりの
「おはよう」
エストに挨拶した。私が起きていることに気づいていなかったのか、エストはびくっとしてから私の方を見る。少し可愛かった。
「おはよう。早起きなのね」
「まあね。眠たかったら寝てもいいよ。少しだけ見張りしてあげる」
エストが首を横にふるふると振る。今のエストはおとなしい感じがしてかわいいね。朝が苦手なのかな?
「早くフレンを起こして出発しましょう。今日もお風呂に入れないなんて嫌よ」
「そうだね。私も汗臭いからどうにかしたいと思ってたんだ」
そうだ。エストにも素振りの成果を見てもらっておこう。寝る前と同じように魔剣を作る。
「ねえ、昨日よりも強そうになった?」
「……ええ」
エストはぶつぶつと独り言を始めてしまった。いつも馬鹿で意味が分からないけど、おとなしいエストも意味が分からない。
🌙
歩きながら新しいことに挑戦している。右手に魔剣を作って素振りをしていたけど、歩きながら素振りは危ない。だから、両手に魔剣を作って維持する練習。片手に魔剣を作って維持するのはもう慣れてきた。
うーん……双剣って言うのかな? 二本魔剣を作ると難易度も倍になるね。一応剣の形にはなっているけれど、堅くすることができなくてゆらゆらとしている。
隣でエストも魔剣を作ろうと頑張っているみたい。私のを見てて作りたくなったのかな? でも、何かを作ると手のひらを離れてどこかへ飛んで行ってしまっている。維持させるのが苦手みたいだね。
「難しいわね……」
全然できていないけれど、諦めずにエストは頑張っている。自分のことを賢者とか言っているから、自分の才能に頼って努力しないようなタイプかと思っていたけど、意外に努力家のようだ。少し見直した。
フレンもさっきまで少し真似してたけど、今は諦めて魔物が近寄ってこないか警戒している。魔法が使えなくても十分強いけど、魔法が使えたら戦い方に幅ができると思うんだけどな。もう少し頑張ってみたらいいのに。フレンにも魔法に頼らないプライドみたいなものがあるのかもしれない。
🌙
森の前までやってきた。道は森の中へ続いている。
「エルフの里は森の奥にあるのよ。ちゃんと道はあるから迷わないと思うけれど、この先はエルフの縄張りだから注意しないと駄目よ」
おお、エストはエルフマニアだね。エルフのことにとても詳しい。
「僕が前を歩くよ」
「気をつけてね」
フレンが先頭で、私とエストは並んでついていく。フレンの鎧は
エストと並んで歩くのは嫌だな。なんか仲良しみたい。少し歩くスピードを落として後ろを歩こう。
「後ろから魔剣で刺すつもりでしょ!」
「そんなことしないよ」
エストがうるさいから真ん中に移動する。
「ルナ、汗臭いわ……」
あーもう、うるさいな。
🌙
エストと結局並んで歩くことになった。しばらく歩いていたけど魔物とか出てこないから、また双剣を作るのに挑戦している。
少し練習の仕方を変えようかな。とりあえず小さい完成された魔剣を二本作って、少しずつ大きい魔剣を作れるようにしていこう。
手のひらサイズはできるね。でも、それ以上大きくしようとしたら、かなりの集中力が必要になってくる。今の段階だと、戦闘で双剣を使おうと思ったら、手のひらサイズまでだね。
「ルナ」
エストに話しかけられて双剣が飛び散った。集中力が足りない。
「なに?」
「魔剣を作るコツを教えてくれませんか?」
平静を装っているつもりかもしれないけど、私にアドバイスをもらうことが悔しいのか、握りこぶしを作ってプルプルとしている。鬱陶しいだけだと最初は思っていたけど、なんだか少しずつ可愛く思えてきたな。
「イメージが大事なんだよ。私はフレンの剣をイメージして作ってるよ」
「なるほど……種類は違っても基本は同じということね」
エストも練習を始める。それと同時にフレンが立ち止まった。練習に集中していたエストがフレンにぶつかる。
「いてっ」
「どうしたの?」
「静かに」
フレンは前をじっと見ている。でも、特に変わったところは無いように見える。
「その木の陰に隠れよう」
よくわからないけどフレンに従う。
……何か音が聞こえてきた。これは、木が倒れている音? なんだか嫌な予感がしてきた。エストも音に気が付いたのか、音の聞こえてくる方を警戒している。
どんどん音が大きくなってきた。あれ? 人? 草の中からすごい勢いで男の人が出てきた。
「エルフね」
エストが言うにはエルフらしい。そういえば耳が長かったり、男の人にしては妙に体が細かったり、髪が黄色かったりしている。
で、そのエルフを追いかけるように化け物が現れた。
「
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