第6話ケルベロス?ネコベロス?
壁に叩きつけられたさんざんな日の夜俺は俺の毛布にくるまれたものを見て絶句する。
「べリアなにこの卵!?どうしたのこれって言うかでけぇ!何の卵なの!?」
静まり返ったボロ小屋。誰もいる気配がない。
…どうやらべリアは昼の件を根にもって地獄に帰ったぽいな。とにかく本当にでかいな。
静かな空間に腹の虫が鳴く。
…そう言えば昼から何にも食ってないな。
「目玉焼きいやオムレツ?んん…ゆで玉子!」
一番大きい煤けた鍋に水をはる。
鼻唄を歌いながら鍋の下に薪とその中心に石をおく。腰にかかった短刀を空中にほおって唱える。
「『ムーヴチェンジ』!」
軌道を変えた短刀は俺の頬をかすめるように薪の中心に金属音をたて突き刺さる。
火花によって燃え始めた薪を見て思う。
「あらやだ、魔法って便利。」
薪のなかから短刀を抜き取り刃先を指でなぞる。
…もっと便利な使い道ないかな?
剣の柄を握り思いっきり投げる、意識を集中して人差し指を回す。
「『ムーヴチェンジ』!」
回転を始めた刃が壁を切断して止まり落ちる。
ここで一言。
「あらやだ、これ当たり魔法じゃん。」
魔法らしい魔法ではなく一回は落ちたテンションが戻ると同時に沸騰音が鳴りはじめる。
上機嫌のままでかい卵を鍋に沈める。
このまま少し待とう半熟卵楽しみだ。
腕を組1人でうんうんと頷く。
しばらく魔法で遊んでいると後の鍋からピキピキと何かが割れた音がする。
「やべぇ、茹ですぎたか?トホホ…さらば半熟。」
立ち上がって鍋を覗き込むと真っ黒い中にある青い目玉と目が合う。熱湯の中にいると言うのに微動だにしないそいつと見つめあったまま少しづつ後ずさる。
猫のような犬のような微妙な姿に背中からはカラスの羽のようなものがはえた黒くて小さいそいつは鍋から這い出て。「みゃー。」と鳴いた。
「あ、猫なのね一応。」
だんだんと迫ってくるそいつを刺激しないよう語りかけてみる。
「お前はあれだよな人を襲ったりしない類いのモンスターだよな。俺がお前のこと食べようとしたことは水に流して仲良くしよう。」
「みやーご」
…大丈夫っぽいか?
「仲良くなれそうでよかったよ、ほら撫でてやるよ。」
俺が出した手をひょいっとよけ腰に飛びかかってくる毛玉。
…ふぇ?今腰に噛みついてる?
「いぎゃぁぁ!?やめろなんなんだお前は!べリアぁ~早く帰ってきてー!!」
もぞもぞしてる腰の辺りでもぞもぞしてる!
俺は床の上を転がり回りながら泣き叫ぶ。
…あれ?どこにいったんだ?
「腰にくっついていない?…消えた?」
シャツを捲って腰の辺りを見る。あいつの姿はない。
「みゃー。」
俺の目が刻印の中から顔を出して目を細めるあいつの姿をとらえる。
…ひっ!何が起きてるんだ?とにかく冷静になれ落ち着くんだ俺。
「みゃー。みゃー。」
「って冷静になれるか!!なにこれどうなってんの!?本当にべリア早く帰ってきて!」
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