第5話お胸と力魔法のつかいよう

  魔法が使いたい。なんとなくそう思った俺は

裁縫中のべリアに相談すると首をかしげられる。

「そんなこと私に言われても困ります。キルテに相談してください。それに誰かさんのせいでボロボロになった服の修繕で忙しいので。」

そう言われちゃうといい返せんな…

あの貧乳のところには極力行きたくないってのに。

「じゃあ少し出てくるよ。そういえば今日地獄に顔出すんだっけ?」

「はい伯父様のところに少し。キルテにいたずらしちゃあダメですよ。」

誰があんな貧乳にいたずらするか。まぁ仕方ない魔法について知りたいし。


ーその日の昼

「どうなってんのこれ?」

ギルド内が冒険者でごった返している。皆それぞれの最強装備を身に付けているようだ。

「ヤバイヤバイ!」

「どうすんだよ勇者様もまだ1週間は不在だぞ!」

冒険者たちが慌てパニック気味に喋っているなかギルド職員のお姉さんが叫んだ。

「第1級討伐指定モンスター『グラセス』がここラノラグに接近中!飛来は3日後とのこと!勇者様不在のため冒険者は決戦に備えてください!」

 

第1級討伐指定モンスター『グラセス』別名<王族狩り>懸賞金13億ノエルの大型賞金首…。

城に篭っていた世間知らずの俺でも知ってるヤバイモンスターだ。

「今日の予定は決まったな!」

 

…夜逃げしよう!

ばっと振り替えって出ていこうとするとギルドの扉の前でニコニコしながら俺を見つめるキルテと目が合う。

「どこ行くの?スライム犯罪者。討伐に参加するならあっちだよ。」

「いいからどけよキルテ。魔法も使えないLv.1の新人冒険者なんているだけ邪魔だ。あとスライム犯罪者ってなんだコラ。」

「楽しそうなことになってますね。『グラセス』なんて倒したら一攫千金ですよカル!」

ぬっと俺の横からべリアが興奮したように現れる。…まいどまいどどこから現れんだこいつ?

「アホか。無理に決まってんだろ?そもそも俺が使える武器なんて剣ぐらいだから飛んでるやつ相手なんてまず無理、それにまだ剣士スキルも開放されてないなんて自殺行為にしかならないから。」

そんな俺を笑うようにキルテがつつましすぎる胸の前で腕を組む。

「つまり君は俺みたいな糞弱い童貞冒険者は役に立ちませんブヒィって言いたいんだね!そんな君に朗報、魔法は使えます。」

「誰もそこまで言っねぇよ!何だよブヒィって俺のキャラぶれぶれじゃんか!…ちょいまち魔法使えんの?」

「使えます。」

Wow!まさかの朗報。え、嘘でしょ魔法使えんの?俺も炎とか出せちゃうの?冷や汗が止まらねぇよ!

「キルテさん俺は前々からなんかキルテさんって良いなと思ってました。その幼児体型とかマニア受けは良さそうだなって思ってました。」

「君は私のこと誉めてんのけなしてんの?魔法使えなくても良いの?」

キルテが俺の足をグリッと踏む。

「いだぁだぁだぁ!すいません魔法のこと教えてください!キルテ様ぁ。」



キルテいわく各職業ごとのスキルと違い魔法は自分のLv.には関係なく自分の潜在能力または魔力に左右されるらしい。つまりきっかけがあれば誰でも魔法は出せるんだそうだ。

「…で、これがそのきっかけってやつなの?」

「そのとうり。こうすることで君の魔法についての情報を読み取るんだよ。」

なんか何でも良いけど自分の一部が必要って言われて髪を大量に持っていかれた。その髪を刻印に押し付けられて少しくすぐったい。

「んっ?んんん。ぐうぅ。」

俺の腰に手をあてながらくぐもった声をあげるキルテ。

「どうしたんだキルテ。何か問題か?」

「…問題って訳じゃないけど珍しいなっと思って。」

「何が珍しいんですか?」

大人しく座っていたべリアが顔をあげる。

「珍しいってどう言うことだ?」

俺の問いかけにキルテがんっとねと声をあげる。

「魔法っていうのは基本 火、水、風、土みたいな自然を構成するもので出来ていて一般的にだいたいの人はこれに属しているんだけど。君の魔法属性は力なんだよ。」

俺とべリアは顔を見合わせる。なんだ?力って。

俺は炎とか出せないの?

「力ってなんだよどういう魔法なの?」

「力魔法とはね力の働きつまり物体を支えたり、運動の向きを変えたり、物体を変形させたりする作用を基盤にそれらを空間に放つ魔法のこと。」

なるほど。…全然わからん。

そんな俺の表情を察したのかキルテが言う。

「やってみるのが一番だと思うよ。今の状態だと使えるのはえぇっと…『グラスプ(変形魔法)』『ムーヴチェンジ(軌道変更魔法)』かな?やってみなよ。」

キルテにうながされた俺は右手を構えて叫ぶ。

「『グラスプ』!!」

ふにょん、なんだこの柔らかい感触は。手をにぎにぎしてみるとぷにぷにとしたなにかの感覚が手のひらにする。

「なぁこれどうなってんの?とてつもなく柔らかい感触がする以外とくになにも起きないんですけど。」

べリアとキルテの方を向いた俺はすべてを理解する。

「あっ!あぁんっ!や、やぁぁ…」

すべてを理解したからこそ手の内に力が入る。へたりこんで小さく喘ぐべリアもその隣で冷たい視線を送ってくるキルテもどうでも良い。

…だって俺今。

「おっぱ…ぐふぁっっ!」

風魔法で壁に叩きつけられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る