第2話刻印と前科と処女と

 子供たちは鬼ごっこをして遊び、大人達は魔王を倒した勇者を讃える祭りの準備にいそしむ。

  『王都ラノラグ』勇者の出身地であるここは特に気合いが入っている。人々がやっと訪れた平和に胸踊らせはしゃぐなか俺は場違いな悲鳴をあげている。

「いい、痛だぁだぁだぁぁぁぁ!!アホじゃねえのかこんなに痛いなんて聞いてないぞ!」

「うるさいよ、君も男でしょ?もうすぐで終わるから。もうちょっと我慢して。」

  俺は今半裸になって美少女とベットの上にいる。これだけ聞くと俺がとても羨ましい状況におかれているようだ。いや、俺も少しはそう感じたよ?美少女の手に焼きごてが握られていなければ…。

「熱いし痛いって!てか、長げぇよどんだけ当ててるんだよ!」

「これは特別な刻印だから魔力をある程度そそがないといけないの!つまり君はこの焼きごてを通して私と1つになれているんだから何で私が罵声を浴びるか理解できない!」

意味のわからないことをぬかすこの残念美少女はあとでとっちめてやろう。

「あのさ私言ったよね?1つになってるって。今は君の考えてることも分かっちゃうんだよ。たしかあとでとっちめてやろうとか。君がその気ならこっちにだって考えがあるよ。」

予想外の出来事に自分でも恥ずかしいほどビクッとしてしまった。

無心だ無心になるんだ俺。なにも考えるな。

「あらら、どうしたんですかぁ?急にだんまりしちゃって。ぷぷっ!童貞君には私みたいな可愛いこちゃんの相手は難しいですか?」

この女言わせておけば、ぶっ殺す絶対ぶっ殺す。この貧乳女め!

「ひ、貧乳っ!そう…そっちがその気なら仕方ない。覚悟しな。」

もうなにされても良い腰に当てられた焼きごてが凄い音たててるから速く終わって欲しい。こいつの気がすむなら何でも良い。

「ってかホントにヤバイですこれ!何か焦げてるにおいするしもうやめてぇ!なにしても良いから速く終わらせて!」

「ホントに何しても良いんだね!?その心意気いいね君!じゃあお構い無くやらせてもらうよ。」

その言葉と同時に焼きごてが背中から離された。助かった。よく我慢した俺えらいぞ。俺が安心したのもつかの間こんな叫びがギルド内に響き渡った!

「らめぇっ!!そんなにしたらキルテ壊れちゃうぅぅ!もう許してぇっっ!」


  絶句した俺の顔を見て満足げに頬を赤めるキルテとか言う貧乳女を絶対に泣かせてやると誓った。そして俺には『変態糞冒険者』の称号が与えられ。めでたく前科持ちになった。


  …この気持ちを理解してくれる人がいるのならすぐにでも親友になりたい。友達なんていらないと強がって城に篭っていたあの頃の俺をぶん殴ってくるからどうか親友になって欲しい。生まれてからずっと15年間面倒をみてくれている女の人にゴミ屑を見るような目で見られ

「砕けろ変態屑童貞!」と言われたた気持ちを理解してくれる人がいるなら…。


独房からの帰り道あたりはすっかり暗くなっているにも関わらず立ち寄った冒険者ギルドは宴会で盛り上がっていた。俺はむくれ面のべリアと向かい合って運ばれてきたお酒を流し込む。

「べリアさん。…あれは本当に誤解ですよ。俺はマジでなにもしてませんから。」

「そう言う奴にかぎってなんかしてるんですよ。それと私に半径5m以上近づかないでください何されるかわからなくて恐いですから。」

うっ!べリアが俺を見る目が痛い。本当になにもしてないのに…

「なんもしてないって。信じてよ…」

キッとべリアが俺を睨む。おおっ!そうとうご立腹だな。

「信じられるわけないでしょう!?あぁ、けがらわしい。思春期の男の子みんなこんなにいやらしいんですか?」

「そんなに言わなくたっていいじゃんか。お前あれだろ俺より何百倍も生きてるんだからそう言う経験がまったくないってわけゃないだろ?処女って訳じゃないんだからけがらわしいとか言わなくても…」

ビクッと肩を揺らすべリアの反応を見て俺の口元がつりあがる。

「そう言えば半径5m以内に近づいちゃいけないんだっけ!」

ニヤニヤしたまま、回れ右してバッと走っていきべリアから距離を離す。ちょうどギルドの入り口のあたり、ここからだと飲んだくれている冒険者が一望できる。

「えぇ!!べリアさんって大人ぶってて実は処女なんですかぁぁ!!?」

俺がわざとらしくはなった一言にギルド内が静まりかえる。とうのべリアは口のはしから先ほど飲んでいた<ビル>を垂れ流している。

「マジっすか!?べリアさんマジで処女なんですかぁ!!!?」

さらに声を張り上げて畳み掛けるとべリアの顔がみるみる真っ赤に染まった。かたまっていた他の冒険者たちも我にかえりこぞって話し出す。

「あんなに美人なのに処女なんてそうとう性格悪いのかしら?」

「プライド高そうだもんな…。」

「姉ちゃん処女だからって気にすんなよ!なんなら俺が初めての相手になってやろうか!?ガハハハ!」

「やめなよ!それはあんまりだよ処女だからってあんまりからかっちゃ可哀想!」

処女を連呼されたべリアの顔がさらに赤くなっていく。おぉ!今回は俺の勝ちか?あいつはそうとうダメージをうけているぞ!

「そーだぞみんな!処女だからってあんまり馬鹿にしちゃ可哀想だぞ!!いくら処女だかっらぶふぇあっか!!!!」

べリアのラリアットが炸裂する。

「許してもらえると思わないでください。」

涙目のべリアの冷たい声が耳に届いた頃には俺の意識はなかった。


  後日俺のあだ名は『変態糞冒険者』から『犯罪者』にランクアップ?した。

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