魔王のムスコでしたが勇者のせいで路頭にマヨイマシタ
サンジ関数
第1話どうも魔王のムスコです。
どうも、魔王のムスコで魔物の王子です。
本日我が父は勇者に倒されました。
「おい!新入り、次はこっちだ!」
ゴリッゴリな親方の大声が飛ぶ。
「わかりました!すぐに行きます!」
魔王軍が王国に敗れて一週間、俺は建築の労働に励んでいる。
朝は冒険者ギルドの清掃、昼は建築、夜はこの街の門番に夜食を運ぶ。
父さん俺毎日充実してます。生きていくために小銭を稼ぐ、忙しない生活。
今日の仕事を終えて、豆だらけの手のひらを見つめる。
「明日も頑張ろうっと!」
貸してもらったボロい物置小屋で毛布にくるまった。
平和な生活、これからも精一杯やっていこうと思った時だった。
「何言ってるんですか!!」
突然の怒鳴り声に、驚く間もなく視界が回る。
「おい!死なないって言っても痛いんだからな、べリア!」
今、俺の首をもじどうり鷲掴みにしているこいつはべリア。俺の元メイドだ。使用人でなくなった俺を気にかけてくれる、悪魔だ。こいつには感謝してもしきれない、だけど、だけど!
「べリア、お前は良い奴だと思うし感謝もしている、だけど何かあるごとに俺の首を飛ばすんじゃねぇ‼」
「何ですか文句あるんですか!魔王のムスコともあるお方が、なにしてるんですかっ!?」
俺の首を持ってるから強気だこの女。よし、あとで土に帰そう。
「何してるって?生活のために汗水流して働いてるんだよ。」
べリアの無駄に整った顔が歪む。あぁ、ホントにもうちょっとおしとやかだったらモテるんだろうな。
「そうではなく何故先代魔王の仇でもある人間のもとで働いているのか聞いているんです!」
「そりゃ、働かなきゃ食っていけないだろう?そして食わなきゃ死ぬし。」
あ、やべぇ滅茶苦茶怒ってる顔だわー。前言撤回、こりゃ嫁の貰い手いねぇわー。
「そ、それはそうと俺の頭そろそろ返してくれませんか?」
べリアの有無を言わせぬ迫力に思わず声がうわずる。
魔物の王子と言ってもまだ15歳の思春期男児にとってはべリアの格好は刺激が強すぎる。
「あ、あのべリアさーん?頭返してくれませんか?な、なに笑ってるんですか?なにたくらんでるんですか!?」
「そんなに返してほしいんですか?」
艶の良い黒髪をクルクルと指でからめるべリア。
こいつは何か良からぬことを考えるとこの癖がでる。
「頭がないと体が落ち着かないんです。お願いします返してくれませんか?」
糞!マジで土に帰そう。この女土に帰してやる!
「それじゃあ私と一緒に冒険者になりましょう!」
「ふぇっ?」
気の抜けた返事で1日を締めくくった夜だった。
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