第4話「誰が国の指揮を執る?」

 ネウロが窓の外、封印の解かれた巨大な魔王の姿を見てからすぐ、城の各所も慌ただしくなってきた。


 国の上層部は緊急会合を開くことになり、もちろん偽エナとしてプリンセスの替わりをしているネウロもその場に招集される。


 会合はそれほど堅苦しい形式張ったものではないが、皆一様にして深刻な表情を浮かべていた。

 ネウロが察するに重鎮と思われる中年の男が口を開く。

「いやぁ、参った。よりにもよってなんで国王が長期外交中にこんな非常事態が起きる。私たちだけで何を決定すればいいのか……」

「しかしなんで今になって封印が解かれたんでしょうか」

 若い職員がそう尋ねる。


「ああ、封印の書が何らかの原因で破かれたのだろう。しかし不思議なことだ。あの封印の書は簡単には破れない。なぜなら皇族の血を引き継いでいるもの以外は触ることも許されないからだ。もし触るとひどい火傷を負うような代物じゃ」

「ということは王国の中、それも皇族に裏切り者がいるってことですか?」

「…………」

「あ、大変失礼なことを言いました。申し訳ございません……」

「まぁ、他の原因があるかもしれないからな。今は思いついていないだけで……」


 ネウロは思う。

(うわぁ、エナさんあれ破いちゃったんだ……。でもあの封印の書が入ってるって教えられてた引き出し、私開けなかったのに……)


 話題を変えるように、装備をした警備の責任者が尋ねる。

「ところで、封印の書はどこにあるんですか?」

「魔王の家じゃ」重鎮が答える。

「なんでまたそんなところに……」

「あれは魔王の能力を退化させる働きもある。なので、長期的に置くことで魔王の能力を弱体化にできる代物でもあったのだ。しかし、これも不思議なことで、皇族にしかあの封印の書を収納した引き出しは開けないように魔法が掛かっている。それなのになぜ……」


 一同沈黙。


 ネウロは呆れる。

(エナさん……)


 重鎮は自分の言った台詞で雰囲気を悪くしたことを察知。話題を変える。

「しかし今はそんな原因を探っていても仕方がない。ことは一分一秒を争う事態じゃ。国の指揮を誰かが執らねばならない」

「国王がいないんですよ! 誰が指揮を執るんですか!? 私たちそんな……責任の重いこと……できませんよ」と職員の一人。

「規律では、非常事態時に国王が不在の場合は王子が指揮を執ることになっている。しかしこの国には王子がいない」

「……」

「もしその場合は……」


 偽エナのネウロは嫌な予感がした。

 一同の視線が集まっていることを察知する。


 重鎮は言った。

「この国の指揮を執るのは……、王女、つまりエナ様だ」

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