第27話 とある女性の夕食事情3

 3話書くと思わなかった。

 相変わらずの偏食、小食な彼女である。


 とある旅番組で、女性タレントが、地元の牛肉情報を聞いて

「ステーキ♪、ステーキ♪」

 と連呼していた。

 行き当たりばったりの企画のようで、アポイントなしで洋食屋に入る。

 しかし、その牛肉は貴重で、その店ではシチューでしか提供していないということだった。

 女性タレントは芸人さんに無いのだから、と言われながらも、

「焼けばいいんじゃないの!!」

 と店主に、しつこく言っていたのだが、

「すでに煮込んであるので…」

 と困った様子であった。


(似てるな)

 私はそう思った。

 彼女は、たまに店員さんを困らせる。

「この店のおすすめなんですか?」

 は、7割の確率で飛び出すのだが、

 いつぞやは、

「果物が欲しい」

 と言いだして、店に聞いたところ、無いと言われた。

 普通はここで折れるのだが、彼女は折れないのである。

「このグレープフルーツジュースは、ここで絞るんですか?」

「はい、注文受けてから絞ります」

「じゃあ、グレープフルーツありますよね」

「ええ、あります」

「それでいいからください」

「えっ、切ってお出ししたこと無いので」

「ください」

「はい…ホント、切るだけですよ」

「いいです、ください」

 ジュースじゃダメだったのである、その日は果実として食べたかったのだ。

 そして、半分以上は、私が食べるハメになったのだ。

 グレープフルーツって意外と1個は大きいのである。


 彼女は外食が好きである。

 一人では行かないようだ。

 基本、小食なので、1人前食べることが難しいのではと思う。

 何よりも、たくさんの種類を、一口づつ食べたいので、一人で行ってもダメなのだ。

 ファミレス向きの人間だと思うが、ファミレスは好まない。

 常時、地元の食処を散策している。

「私たちで、地元のグルメスポット案内の本書けるね」

(その前に、金が尽きそうである)


 彼女はコースは頼まない。

 きっと偏食だからだ、でも、おすすめは聞きたがる。

 コースで頼めば、だいたいの傾向は解ると思うのだが、

 メニューをパラパラしたい人らしい。


 以前にも書いたが、相変わらず、豆乳メロン味を、ひと口残して私に飲ませる。

 大抵の場合、彼女の所望するお菓子を購入しておくのだが、

 店に着く前に食べてしまう。

 そのことを予想して、あんこなどの胃に重いモノは購入を避けている、

 彼女は、それが不満らしい。

「大福あったの?なんで買わないの?」

 私の顔を下から覗き込むように聞いてくるが、返答に困る。


 私が購入した菓子のほかに、自分でも持ち込むのだ。

 この前は、これから夕食に行くんだというのに、バナナを持ってきた。

 夕食前にバナナって…。

 1食をバナナに置き換えるダイエットは聞いたことがあるが、

 食事前にバナナって、どうだろう?


 彼女は、コンビニも好きである。

 スイーツの新商品情報は、店員より早くリサーチしている。

 発売日には、必ずコンビニ巡りになる。

 場合によっては、予約しているのである。

 私の名前で。

 私は、コンビニでスイーツを予約する人間を他に知らない、

 というか出来るんだと驚いたものだ。

 コンビニの、はしごは当たり前で、イートスペースがあるコンビニに、

 他店の食べ物を持ち込んで食事することも、しばしばである。

(気が引けるのだが)


 お菓子スイーツたぐいは良く食べる。

 これだけは、人一倍食べる。

 コンビニで買ったアイスを、両手に1本づつ持って交互に食べ、

 ドリンクにシャーベットを飲むのである。

 氷女こおりめそんな言葉がしっくりくるような容姿で、手が異様に冷たい。


 妖怪ではない証拠は、よく腹を壊すことと、

 暖房が効くまでの車内で、カココココココッコと歯の根が合わなくなっていることで、

 あ~人間なんだなと思う。


 私に、和菓子を頼むことが多い最近は、自分では洋菓子を買ってくる。

 夕食前に、あんこ系を食べ、食事中に生クリーム系を食べ、

 食後にアイスを食べるのである。

 前、中、後、と便宜上分けて書いたが、食事のメインに組み込まれる、

 ヘビーローテーションである。

 カレー、ラーメン、大福2個 ケーキ5個 を三分の二、食べればどうなるか、

 高確率で腹を壊すのである。


 このままいくと、完結済みの小説、『スリーピース』に

 ふぉーすえくすぷろーじょん を書かねば、ならないかも知れない。

 そのときは、『スクウェア』とでもタイトルを変えようか?


 しかし、私は彼女に甘いのである。

 メンタルの弱い、私のことを気に掛ける、良き知人なのである。


 2日連続で食事をともにしたくない、という意味では、

つう』に近しい存在でもある。


「ねぇ、こんど、どこで、ナニ食べようか?」


 屈託のない笑顔の彼女に、いましばらく、つきあってみたいのである。


 次回 脳年齢

 あなたの脳はいくつでしょうか?

 彼の脳は・・・・・・。

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