第2話 オムライスとチャーハンは別の食べ物です。

 ある夏の日、仕事中に携帯が鳴る。

つう』から夕食の誘いだ。


 前回も書いたが、私は彼のおすすめ店を気に入ったことは一度もない。

 なぜ、誘いを受けるかといえば、簡単である。

 絶対にをチョイスしてくるからだ。

 つまり、彼に誘われなければ、行かない店、

 そこに足を運ぶことに意義を感じているからだ。


 仕事を定時で切り上げ、私は隣の市へと車で移動した。

 待つこと15分、なぜか『つう』との待ち合わせはパチンコ屋の駐車場が多い。

 私は賭け事はしないのだが、私の周りにはパチンカス通はもちろんが多い。

 私は、『つう』の軽トラに乗り、彼のおすすめの店に行く。


 派手な外観は、『つう』の好みだ。

「この店は超人気店で、2号店が、このに出店することになったんだ、まだオープンしたばかりだから混んでるかもな」

 得意気に話す彼の言葉には、お前は外食しないから知らないだろうけど…。

 というニュアンスを強く感じる。

 誤解のないように言っておくが、外食の機会は彼より遥かに多い。

 既婚者の彼と独身の私では当然とも思える。

 加えれば、週末には大抵、誰かと外食している。

 私が彼を食事に誘うことがないだけだ。

つう』は、店の『TPO』に無関心すぎるのだ。

 以前、泥だらけのつなぎを着てフレンチに入ろうとした男だ。

 ガラガラの店内だったが、満席だと言われた。

 私は断られると思っていたので、車で待っていた。


 派手な店の駐車場はガラガラだった。

(オープン直後で…混んでるかもな?)

 嫌な予感しかしない。


 駐車場で『つう』が忠告してきた。

「ここのオムライスは食べるなよ」

「不味かったのか?」

「あぁ、食えたもんじゃない、大体、米が云々…」

「解った、麺類にするよ」

「おぉ、そうしろ」

つう』はいつになく、私が自分の忠告を素直に聞き入れたことに満足していた。

 入店して、メニューに目を通す。

 意外に豊富なメニュー、

 なんだか、ラインナップは散らかったような感じではあるが、

 まぁ和・洋・中 適当に揃っている。

 麺と言ってしまったので、チャーシューメンを頼んだ。

つう』は悩んでいた。

 一度注文を聞きに来た、かわいい女の子を強めに追い返してまで悩んでいた。

 メニューは、それほど多いのだ。

 パタパタとメニューをめくり、戻してを幾度も繰り返し、

 決めた注文はラーメンセット。

 ラーメン+ライス+餃子だ。

 悩んでそれか?


「何回目なの?」

「この店か、2度目だ。最初は嫁と子供を連れてきたんだ」

「2度目?最初にオムライス食べたんだ」

「そうだ」

 小声になって……「まずかった、生臭いんだ」

 生臭い?オムライスの評価で聞いたことがない。

 だが問題はそこじゃない。

 失敗した店を、おすすめしてきたということだ。


「お前、不味い店に連れてきたの?僕、隣の市からご足労してんだけど」

「いや、ここの1号店は何度か行ってるんだ、あそこは美味いんだけどさ」

「そこに連れてけよ!!」

 こういう男である。


 結論から言えば、チャーシューメンは40点だった。

つう』は、ラーメンをどんぶりから箸で持ち上げて…

 スープに戻している。

 きっと不味いのだ。


『通』が麺で遊んでいる間、メニューを再度眺める…うん、眺めた。

 オムライスが無い。

 もう一度、探してみるが…無い。

「オムライス食べたんだよね?」

「あぁ」

「メニューに無いんだけど」

「えっ?そんなことねえよ」

 完全にラーメンセットを持て余していた彼は、メニューに目を通し

「これだよ、あるじゃん」

 と左手の人差し指でトントンと写真をつつく。

『あんかけカニ玉炒飯』の文字。

「チャーハンじゃん」

はね」

「はっ?オムライスじゃないでしょ」

「えっ?だから!!ライスがチャーハンなの!!」

 意味が解らない。

 よく聞いてみると…。

つう』の認識では、であるという。

 私のオムライスはケチャップを絡めた御飯に卵でオムライスだ。

(そもそも、中華じゃん)

 あんかけ、カニ玉、炒飯、中華じゃん。

 オールカテゴリー オブ チャイナじゃん!!


「不味いんだろ…残せば?」

「あぁ、、この店ダメだ、損した」

 と彼は箸をおいた。


 やっぱりって、なぜ俺を誘ったんだ…。


 次回、ほにゃらら風ってそういうことじゃなくてさ

 気が向いたら読んでください。



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