食堂日和 〜幸せはおうちのごはんから〜

第1話 不機嫌なヨーグルト ベイクドヨーグルトケーキ

　冷蔵庫を開けるとヨーグルトさんがよく見えるところにデンッとふんぞり返っている。そう、美味しいうちに食べて欲しいのに、よく見えるところにあなたが置いたのに、旦那さんの大好物なのに、買い物かごに入れて家に連れて帰って来た日から、とぼけたもぐもぐ食堂長にほっとかれて不機嫌なのだ。食堂長はそんなつもりじゃないんだけど、背が低いからなのか、すっとぼけているからなのか、それともいつも背伸びをしなきゃ見えなさそうな高い棚の方のものが気になってそっちばかりに目と手が動くからなのか。どんな訳か食堂長はうっかりみんなが大好きなヨーグルトさんのことをほっといた。そして、とうとう昨日になって、そうだそうだと思い出して手に取ると、ヨーグルトさんの美味しい期限がもうあとわずか！これは申し訳が立たない、罰が当たると思い夕飯作りを止めてボールに泡立て器、計りにお砂糖、卵に小麦粉をどどどどんと机に並べて何やら始めた。そう、ヨーグルトさんの御機嫌をなおすべく美味しくて可愛らしいヨーグルトさんで美味しいものを作りましょうと動き出したのだ。

食堂長は、クックパッドを眺めては「水切りヨーグルトだなんて、美味しいホエーが勿体ない」とか「生クリームは今中途半端にしかないのよね」とか、「ホットケーキミックスもないし、薄力粉とベーキングパウダーでいいよね？」とか、ぶつぶついいながらヨーグルトさんをがしっと左手で強く優しくハグをしてボールにあけた。

「旦那さん、チーズケーキ好きだからきっとこれも好きよね！みんなと美味しくなってね！」と言って、一気に彼らをミキサーで混ぜ合体！丸くてシャープなケーキ型に注ぎ込み、アッツアツのオーブンに入れて60分。

オーブンから出てきたのはこんがりといい色に焼けたヨーグルトベイクドケーキ！

ヨーグルトさんの容姿は見えないが、ベイクドヨーグルトケーキになって、全身で喜びを表現して、みんなの声が美しくハーモニーになってこういった。「やったー！美味しい香りさせているでしょ！しっとり酸味のある優しいケーキに変身したわ！」

夕飯の後に味見にした時は、まだみんな恥じらいがあるのか落ち着きのないほかほかした様子。１日冷蔵庫で過ごしたら仲良くなるね。

おしまい