第2話 初恋


初恋は実らない。世間でよく言われていることだ。そうは言っても幼い私は「自分は大丈夫」とどこから来るのかわからない自身をぶらさげて、恋に恋する少女へと育っていった。


彼のことを好きになって約4年が経ったころ、私たちは中学1年生が終わろうとしていた。結局彼とは同じ中学、同じクラス、同じ部活になった。私はこれを運命だと思った。だから、その年のバレンタインデーに彼に告白した。市販のチョコレートを刻んで溶かして固めただけの粗末なチョコレートと一緒に。

彼の返事はOKだった。私はうれしかった。涙が出て、裏に隠れてた友達と肩を組んで喜び合った。

それから彼とのお付き合いは始まった。お付き合いと言っても休みの日にデートすることはなく、その代り、土曜日の部活の練習の後に人目につかないところで数十メートルだけ手を繋いで帰った。私はそれでも幸せだった。好きな人が自分のことを見てくれている、その事実が嬉しかった。しかし人間とは欲深いもので、次第に私は彼と会っていない間に連絡を取りたいと思うようになった。

彼はそれを快諾してくれた。私は携帯電話を持っていたが、当時まだ携帯電話を持っていなかった彼はPCのメールアドレスを使って私と連絡を取り合ってくれた。

そうは言っても彼も四六時中PCの前にいるわけではないので、連絡が取れるのはよくて1日に2、3回くらいだったが、それでも私は幸せだった。


しかしそれだけで幸せだという時期はすぐに終わった。2か月もすると私は彼を疑うようになった。本当に彼は私のことが好きなのか、わからなくなったのだ。だから私は友人のメールアドレスを借り、彼に問うた。彼はわからない、と言った。

「どうしてそんなことをいうの。」と幼いおバカな私は身分を明らかにして彼に聞いてしまった。友人と偽ってメールをしたということを知った彼は、怒った。

そして、「お前みたいな重い女はいらない。」と中学2年にして重い女認定をされ、振られた。


その事実は当時の私にとって受け入れがたいもので、毎日のように泣いた。そしてある日、友人に新しい彼氏を紹介してもらった。と言っても、彼と会うことは一度もなかった。なぜなら、友人が彼のフリをして当時はまだあったメールのサブアカウントを使用して私にメールをしていたからだ。・・・まあ、それはまた別の話なので置いておく。

とにかく、私はその友人、もとい彼に依存した。すぐにメールを返してくれて、自分のことを好きだといってくれる彼が素敵に見えた。毎日が幸せで、私はその喜びをブログに書いた。


すると3件にも及ぶ長いコメントがついていた。そこには、「お前みたいな女は一生夢見てろ。少女マンガみたいな恋なんて実際にあるわけない。お前なんか一生結婚できねえんだよ。」といったようなことが長々と書かれていた。私を「重い女」と言って振った彼からであった。

なぜ、もう別れて関係もない彼が私を罵ったのか当時は全く理解ができなくて、それはもう悲しくて悲しくて、生きているのも嫌になった。別れた時よりも長く、毎日毎日、泣いていた。

それが原因なのか、ほかに原因があったのかは定かではないが、私は自傷行為をするようになっていった。私の心は完全に壊れてしまっていた。

それから、寂しさを埋めるように当時はやっていたプロフィールページにメールアドレスを載せ、どこのだれかもわからないおっさんや大学生とメールのやりとりをするようになった。


ここからすべてが狂い始めた。

親が望むような清純で頭のいい私はいなくなり、承認欲求と愛情に飢えた、男に依存する女へとなっていった。



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