堕落
もふねころん
第1話 プロローグ
あれはいつのことだっただろうか。私が小学3年生になってすぐ、初夏くらいのことだったと思う。日本の小学校では小学3年生になると音楽で縦笛を習う。音楽が好きな私はその縦笛を吹くのが楽しくて、音楽がない日でも昼休みになると縦笛を吹いていた。すると教室の後ろのほうから自分以外の縦笛の音がする。誰だろう。そう思い振り返ると、幼稚園のころの仲良しだった男の子が何やら私の知らない曲を吹いていた。話しかけるのも悪いかなあとその時は無視して自分の世界に閉じこもっていたが、それが何日も続き、私はようやく彼に声をかけてみた。
「ねえ、何を吹いてるの?縦笛、好きなの?」
彼がなんと答えたかは覚えていない。ただ、私と同じように音楽が好きで、好きな曲を耳コピしてはピアノで弾いたり縦笛で吹いたりしてるという。彼とは幼稚園のクラスは同じだったが小学校に入ってから2年間、別のクラスにいて話すことはなかった。これがきっかけで私と彼は、休み時間や放課後になれば笛を吹く友達になっていった。
それから彼とは小学校を卒業するまでずっと同じクラスになった。毎日のように笛を吹いた。公園で鬼ごっこをする日もあった。
次第に私は彼を好きになっていた。小学生の女の子ならよくある、「仲がいいから好きになった」という、単純なものだった。ちょうど周りに少女マンガ雑誌を読んでいる女の子も多く、愛や恋や性について乏しい知識で盛り上がっていた頃であるから恋愛に興味が出てきて夢を見るようになっていた。かわいいものだ。少し冷やかされただけで顔が熱くなって真っ赤になって、しょうもない嫉妬をして。本当に好きだったのかは今となってはわからない。ただ、これが私の人生を決める大きな要因になったのは確かである。
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