旅立ち
「なんだこれ....」
トラックの外に出てみれば、見渡す限りビルや家、車だったと思われる残骸が土や木とごっちゃになり続いていた。遠くでは火炎が高くまで上っていたり、至る所から水道管があったであろう場所から水が噴き出している。ここはどこだ?ここは本当に東京なのか?全てが崩壊し、まともなものがなく、まるで生を感じることができないこの光景は俺の知っている東京というイメージとはかけ離れていて、まるで世界が終わった後を見ているようだ。いやこの光景がどこまで続いているのかはわからないが、激しい揺れとやらで東京の一部が一瞬で終わったのは確定である。
「はは。日本終わったなこれ。経済という意味では完全に終わってるでしょ、これ。あーこれ夢かな?んなわけないか、普通に物が燃えた匂いするし。そういや何か忘れているような....あ。しおりさんっ」
良かった。栞さんはどこにも行ってないようだ。一人ではないことに安心した。
「栞さん!手あげて!」
「はいっ」
うん、おもい。女性の平均体重ってどのくらいだろ?いや、栞さんは太ってなし軽いほうだとは思うんだけどね。
「ふう。」
「ありがとうございます。重かったですか?」
「そんなことないよ?」
「ほんとですか?」
「ほんとだって。俺栞さんの体型位が好きだよ?」
「そ、そうですか。」
あ、また俯いた。照れてる栞さんかわいいなぁ。
「栞さんに大事な報告があるんだけど、落ち着いて聞いてね?」
さて、今見た現状を伝えてこれからのことを決めよう。
「はい。」
「どうやら俺たちは遭難したようだ。」
「はい。」
「それでこれからの方針を決めようと思う。」
「分かりました。」
「.........えっちょっと待って。そんな簡単に納得するの!?俺ものすごく可笑しなこと言ってる自信があるんだけど....」
「それだけ揺れてましてから、こうなるのではないかと思ってました。」
「あぁ、なるほど。俺はちょっとまだ信じきれてないんだけどな....」
「私は目が見えないのでそこまで落ち込まないのかもしれません。」
「なるほど..」
「で、これからの方針なんだけど、まずは食料と水の確保を優先したいと思う。」
「私もそれがいいと思います。」
「その次に揺れの被害の少ない方面に向かって進もうともう。どっちから揺れが来たか覚えてる?俺は記憶がなくて思い出せない....」
「えっと確か東から揺れが来ました。」
「よし、なら西に行こう。正直この規模だとどこまで続いているか想像もつかないけど頑張ろう。それと、揺れが起きてから今どの位たってる?」
「はい、頑張ります。んー1時間たったくらいでしょうか。」
「なるほど。まだそのくらいしか経ってないのか。えーと、携帯どこいった。あったあった、今は15時27分か。今は夏の初めだから夕暮れは18時半くらいかな?それまでには寝場所も見つけないとな。栞さんあまり時間も無いみたいだしそろそろ行こうと思う。」
「分かりました。行きましょうっ」
◇◆◇
「くっはあはあ。んぐっ....はあ。」
別に感じているわけではないぞ。いや柔らかい二つのものは常に背中で感じているが、今はそれどころではないのだ。何故俺がこのような喘ぎ声を出しているかというと理由は俺の背中にしがみついている栞さんにある。そう、瓦礫が散乱しており道がないのだ。これでは栞さんは歩けない。結果、俺がおんぶしているという訳だ。
「栞さん今どの位っ?」
「3kmほど進みましたっ。あ、歩さんこの辺にコンビニがあるそうです」
「3キロ....三時間も歩いて3キロ....確か日本人の平均歩行速度は時速5キロだったような....」
「ちょっと歩さんってばっ。右だそうですよっ。」
「え?ああ分かった」
ああ、しんどい。明日、筋肉痛間違いないな。それと、栞さんには携帯でGPSナビゲーションを聞いてもらっている。正直俺は歩くことにしか集中できなくて聞き落しが多かったので、彼女に聞いてもらい歩く方向や食料が確保できそうな建物などを報告してもらっている。
「あ、あった。今度は半壊程度で中に入れそうだ」
「えっほんとですか!やりましたねっ」
ぐっ。うれしいのは分かったから肩を揺すらないでくれ。深刻に体へのダメージが....
「ふう、栞さんおろすよ?」
「あ、はい。」
「ちょっとそこで待ってて、中を覗いてくる。」
「はい、すぐ戻ってきてくださいね?」
「大丈夫。すぐ戻ってくるよ。」
◇◆◇
入口のドアは開いたままだ。店の奥、飲料棚のほうがビルが倒れて下敷きになっている。外から見た感じ、店内は暗く不気味であり自然と物音をたてないように歩いてしまう。
「っ!!?」
なんだ今の!?入口を潜ろうとしたとき物凄い悪寒がした。手が震える。怖い。ただただ怖い。今まで感じたことのない恐怖だ。まるで、俺が小動物で肉食動物に遭遇してしまったかのような錯覚だ。
「グギャ。グギャギャギャ」
「え、声?人か!?人がいるのか!?」
そう思った時には俺の体は動いており、一歩二歩と進んでいた。そして俺は見つけた。そう、人だ。店の奥、飲料棚の足元に人が倒れていた。血の海に沈んで........
そして、もう一人。いやもう一匹?いた。そいつは人型で、背は人間の腰あたりまでしかなく、肌は暗い緑色をしており、右手には鉄骨のようなものを持っていた。
「グギャ?」
ああ。目が合った........................
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