出会い

「さて、これからどうしようか。そうだ、自己紹介してないよね?君の名前はなんていうの?俺は、薬袋歩みない あゆむです。」

 「私は、小花衣栞こはない しおりです。」

 「小花衣 栞さんか。いい名前だ。これからなんて呼んだらいい?栞さんでいい?」

 「はい、栞でもいいですよ?」

 「それはちょっと、今の俺には難易度が高いかな....」

 「そうですか。」

 なんで、そんなに落ち込んでるんですか。俺のことが好きなのこの子?そういう反応されると勘違いしちゃうじゃん。

 「私は何と呼んだらいいですか?」

 「じゃあ、名前で。」

 「はい、歩さん。これからよろしくお願いします。」

 やばい、その笑顔可愛すぎ。泣きはらした目も俺のために泣いてくれたんだと思うと....愛しい。



  ◇◆◇



 「まずは、この狭い空間から抜け出そうと思う。ここはトラックの中かな?」

 どうやら激しい揺れとやらで、トラックが縦になっているようだ。高さは三メートル程で、俺の身長が一七五cmだからジャンプして届く距離ではある。

 但し、俺はだ。栞さんをどうやって外に出そうか....

 ここで今まで気にしていたことを聞いてみるか。

 「栞さんて、その、盲目の方ですか?」

 自分の言葉のボキャブラリーの無さを痛感する。

 「はい、生まれた時から見えませんでした。」

 「ごめんね。言いづらいこと聞いてしまって。」

 「いえ、大丈夫ですよ。これが私にとっての普通なので気にしてませんよ。」

 「そうか、良かった。まずは俺がここから先にでて、上から栞さんを引き上げようと思う。呼んだら両手を挙げて欲しい。」

 「分かりました。」

 「じゃあっと。この一段高い荷物の上に乗ってから、壁側を向いて待機してて。」

 そう言って俺は彼女の手を取り彼女を荷物の場所まで誘導する。

 「あっ」

 「あ、ごめんね。いきなり手を握って。」

 「い、いえ」

 また俯いてしまった。耳が赤い。はああ、たまらん。なんじゃこの可愛い生き物はっ。

 「あの、ここですか?」

 っといかんいかん。

 「っああ。うん。前にあるよ。」

 ここは支えてやらねばいかんよな。

 「支えるね。」

 腰のあたりを後ろから両手で支える。

 「ふう。これで大丈夫ですか?」

 「おーけい。よし、一旦先に上がるね。」

 ん?腰のあたりが引っかかると思ったら、栞さんが握っていた。

 「どうした?」

 「..あの、おいていかないでくださいね。」

 ....可愛いすぎ!

 「おいていかないよ。大丈夫だから安心して。」

 「はい。」

 ふう、あぁドキドキする。ほんともう、可愛いなこの子。

 「よし、行くか。」

 ぐぬぬぬぬぬ。はあああ。余りない腕力で、なんとか上りきっ......た....は?



 そして、俺は目の前に果てしなく広がるした姿を見て絶句した。

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