すけべ少女
「看護婦さん、おっぱいを見せてください」
看護婦を生業にしてから三年足らず。数えきれないほどのエロジジイからは胸を見せろ、揉ませろ、シモの処理をしてくれ、など数々のセクハラを受け、そのすべてをちぎっては投げてきた私であったが今回に関しては困った。
十歳の女の子に言われてしまったのだ。
「看護婦さん、おっぱい揉ませてください」
「おい、なにしれっと要求をエスカレートさせているんだ」
「じゃあ、おっぱい見せてください」
「元に戻してもダメだ」
「わがままですね。それじゃあ何したら揉ませてくれるのですか」
「やっぱり最終目標はそこか」
「山があったら揉みしだきたいというのは自然な欲求じゃないですか」
「それを要求するな」
「欲求と要求を掛けているわけですね。さすが看護婦さん」
「掛けてもいないし、看護婦は関係ない」
女子の内面的な成長は早いといっても、この子に関してはいささか成長が早すぎる気がする。同年代の弟がいるが、そちらはまだうんこ、ちんこで大喜びするようなものなのに。
「……君はどうして私の胸を揉みたいんだ」
エロジジイと違い、相手が子供であるため慎重になる。セクハラを受けている身ではあるが下手すればこちらが「子供のしたこと」に過敏になりすぎと注意を受ける羽目になる。
「せっかく女性に生まれたのですから、少年漫画に出てくるおっぱいの揉み合いしたいじゃないですか」
両手を前に出し、揉みしだくようなフリをする。
「そういうのは君が大きくなってから自分のものですればいいだろう」
「んーそれも考えたのですけど生憎成長不良で将来も貧相な体付きになるのはほぼ確定なのでそれは叶わないですねー」
たしかに少女の体付きは同年代と比べてもやせ細っており、その細い腕にはチューブが繋がれていて常時点滴を受けている。今日はたまたま体調が良くて散歩できているが、普段はどこへ行くにも車椅子を使わなければならない。車椅子に頼るゆえ、体はますます弱り、肉を落としていく。
「でも治るかもしれないじゃないか」
「看護婦さんみたいな爆乳には一般人でも難しいので、あたしには無理かと」
少女は続ける。
「だから揉ませてくれません。服の上からでもいいので」
親指を立てて、下をペロと可愛く出してお願いされた。
「揉ませないから。というより反論してなければ直に揉むつもりだったのか」
「当然ですよ。どうせ揉むなら直揉みです」
「胸を張るな」
「ない胸は張れないです」
「そういうことは言ってない」
あまりにも食い下がるものだから、仕方なく条件をつけてみることにした。
「今度手術あるんだろう? それが無事終わったら揉ませてあげる」
少女はそれにはたじろいだ。
「えーそれは困りますね。別の条件にしませんか?」
「君が健康になるための手術だろう。頑張り給え」
「あの手術、リスクがあるので受けたくないんですよねぇ」
「おっぱいと天秤にかけることだね」
「直揉みでいいですか?」
「直揉みでいいよ」
「舐めてもいいですか?」
「それは遠慮被る」
「けちんぼ」
「それは君が大きくなったら再度お願いしにくることだ。その頃には私はおばさんだけどね」
「おっぱいへの執念舐めないでください」
「舐めたいのは君だろうに」
この時のやり取りなんてしなければよかった。
私は手術を勧めたことを後悔しない日はなかった。
あれから十年の月日が流れた。
私は彼女の苗字が書かれた墓の前にいた。
「ああ、あの時あんなことを言わなければよかった」
言わなければ彼女は道を間違えることなく、私は今でも看護婦として胸を張って仕事できたははずだったのに。
「今更そんなこと言ったって遅いって。あ、帰りに車でおっぱい揉んでいい?」
あの時の彼女は今でも生きている。手術によって健康になり、今では現役大学生投資家としてサラリーマンの生涯年収の数倍程度は財産を蓄えている。ちなみに彼女の予想通り、胸は貧相なままだった。
「お義母さんの墓の前でそういうこと言うの止めなさい」
そうこの墓は彼女のお母さんのものだった。彼女が健康になり、張り詰めていた緊張の糸が切れたのかぷっつり逝ってしまわれたのだ。そのあとは父がいない彼女が親戚にたらい回しになっていたところを私が後見人として名乗り出て、彼女の親権も奪ったりするなどドキュメンタリー映画さながらの働きをした。ここだけ切り取るならきっと私は天国行きだ。
そう人生は続くものであり、後見人になったあとあの時の約束とばかりに彼女に襲われた。喰われた。花を散らされた。もっともなすがままの私もどうだったかと思うが、人間いざっているときは体が動かないのだと身をもって知った。
「そうだね。二人きりの時にいうことにするよ」
そう言って、ぺろりとかわいく舌を出す。
「お義母さん、貴女はどういう教育をこの子にしたのですか」
「命短し恋せよ乙女って教えは受けたなぁ」
「貴女のせいでしたか」
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