秋風

 いよいよ冬にさしかかろうとする秋の終わりごろ。僕は、地元の駅から自宅へと歩いていた。

並木道を歩く。極彩色の落ち葉たちを踏みしめる音が耳に心地よさを与えてくれる。最も日照時間の短い都道府県在住のせいもあるのかもしれないが最近はすっかり日が落ちるのが早くなった。高校から帰る辺りには、既に辺りは暗くなっていた。

かさかさと踏みしめる。小刻みに、ときどき頭に浮かんだメロディを追いかけるように足を踏み出す。自分だけの並木道を少しでも盛り上げようと踏み出す。

びゅうと一陣の風が吹いた。それは街灯に照らされた落ち葉たちを舞い上がらせながら、僕の肌を刺した。マフラーや学ランの中に着こんだカーディガンを身に纏っていたにもかかわらず寒さに体の芯から襲われた。

音がなくなった。今まで自分がしていたことが急に寒くなった。

もう自分だけしかいない帰り道だというのに何をしているのだろうか。今まで帰り道には彼女が隣にいて僕の奏でるリズムに合わせてリズムを奏でてくれた。時折、二人の笑い声が二人だけの並木道に広がった。ただ意味もなく奏でるのが楽しかった。だがそれも彼女がいたからこそ成り立っていたのだ。

並木道を歩く。

もう楽しげな余韻も残っていない。

かさかさと踏みしめながら、一人だけの並木道を歩いた。

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