改ざん
「そういえば最近論文の改ざんとか差し替えとかが問題になってますね」
溝口くんはそう私に言う。
使われている画像が違うのだ、と細かく注意してやりたいが今はそんなことしている場合ではない。定時までに提出しなければならない書類が山ほど残っているのだ。
そんな私の気も知らないで溝口くんは続ける、
「なんであんなことするんでしょうね。大問題ってのは知ってたはずなのに」
「知っててもやらなきゃいけないことが世の中にはあるのよ」
私は実際に過ごした日々とは違う日程をキーボードを叩いて入力する。
その動作を見ていた溝口くんがわざとらしく声を上げる。
「あー、少しここ違いますよ! ほら、修正修正」
舌打ちしつつ、溝口くんを睨む。
「あんた、いちいちうるさいのよ」
「嫌だなぁ。僕は正しいことを言ってるだけですよ」
大きな手振りがそのウザったい言動に拍車をかける。
「あんた、いつか後悔するわよ」
「僕は正しいことしかしませんから後悔なんてしませんよ」
「そう」
私は書類の山から数枚の書類を探し出し、溝口くんに渡す。
「はい、これ今日までの書類だから」
溝口くんの表情はみるみる凍っていく。
「正しい正しい溝口くんのことだからきっと一切嘘偽りない書類を書き上げてくれるのでしょうね。期待してるわ」
きっと溝口くんは今月の残業代がめっきり減るだろう。
時間単位の残業代システムでそんな分数レベルのことを言ってたバチが当たったのだ。
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