開いた扉の向こうは
光がひくと、シンデレラ城は光り輝いていた。エレクトリカルパレードの曲が流れ、シンデレラ城の中はたくさんの人で活気づいていた。
清介と史郎は、わけもわからずあっけにとられている。
「成功だ!!いくぞ!!」
私は二人の腕を引っ張り、城の中へ飛び込んだ。
中では盛大な舞踏会が開催されており、私たちはその
「なんだこりゃあ…」
清介はあっけにとられていた。
「まるでホーンテッド・マンションの逆バージョンだ」
「薫の魔法だろ。城の本来の姿と薫の願望が入り混じった姿を体現してるんだ」
「左様。西洋の城にも関わらず、純日本人で清楚かつ化粧のうまい女性たちばかりなのはそのためだ。男性はどうでもよい。貴君ら、急ぐぞ!」
「ちょっと待て
「人の顔は一つとは限らない。表現に幅があってもよかろう」
肉だけを食べていればやがて飽きが来る。そして、やがて魚や野菜も食したくなるものだ。
結婚というのは人生の契約そのもので、魚であろうがパンであろうが、あなただけを一生愛すと誓う儀式である。しかし、それがいつまで持つだろうか。
むしろさまざまなものをバランス良く摂取することが健康に欠かせないことを私たちは知っている。肉も魚も食べたい、その欲求に逆らってストイックに一つのものを食べ続けることが正しいと、誰が決めたのであろうか。
そもそも、長い間、肉はおろか魚も野菜も食べていない私たち三人に、その答えをしるすべなどあろうはずもなかった。
私たちは階段を上った。大広間の舞踏会場から、階段を上るにつれて、喧噪は少しずつ遠ざかっていった。
階段を一つ昇るたび、高鳴る鼓動、期待、不安が募り、私は胸とか下半身的なものまで押しつぶされそうな重圧を感じていた。
すくなくとも私は友人たちを巻き込んだ。私ひとりの独断で、万が一失敗しても、断罪されるのは私一人である。
そんなの心細いではないか。少なくとも辛酸を共に舐めてきたこの二人だけは、道連れにしたかった。
それは矮小な心からでも、ゲスの極みな心からでもない。彼らとならば、例え辛い世界でも楽しく過ごせるからなのだ。
かつて私は恋人はもちろんのこと、アパートの自室からも出ることはなく、灰色の世界であった。私を外へ連れ出し、世界に色を与えてくれたのはこの二人だったのだ。
やがて彼らも恋人を欲した。もちろん私も欲した。こうして深夜のパークに忍び込み、いま私たちは最終局面を迎えようとしている。
その結末が読めぬことが恐ろしい。絶望する二人はみたいくない。この物語はハッピーエンド以外で終わってはならない。そう決意を固めて、私は階段を踏みしめた。
やがて、明るく華やかな空間は遥か下になり、光もなくなり、音楽も聞こえなくなり、とうとうガラスの靴が安置されている間にたどり着いた。
私たちは呼吸を整えるのに必死であった。扉の向こうにいる黒髪乙女に会うに際し、初対面から鼻息荒くては性的カテゴリの犯罪者と間違われる懸念がある。
私は国語の試験が得意だった。それ故に、他者の気持ち、主に筆者の気持ちになりきってそれを察するのは、比較的得意な方であった。
扉の向こう、私は運命の人が現れるのを待っている。ようやく来てくれたのね…と思いきや、はぁはぁぜいぜい扉の向こうから聞こえてくる。
恐怖以外のなにものでもないではないか。
しかし、私たちは少し魔法が使えるだけの真っ当な人間だ。エナジードリンクで翼でも授からない限り、この高低差を駆けあがってきては息も切れる。
必死に深呼吸し、息を整え、私は言った。
「いいか、今度こそ3人でだ。一緒にあけるぞ。抜け駆けもなにもなしだ」
二人は息を切らしながら、無言で頷いた。本来ならば、バスケットボールの名作漫画のような雰囲気で回想の3つや4つブチ込む場面であるが、そんな悠長な時間は残されていない。
「ついに…辿りついたのですね」
その声は…大帝か。なぜこんなところにそなたがいるのか。
「私はあなたに力を与えし者。その行方には少なからず責任があります。あなに与えた力が、私たちに牙を剥くなどあってはならないこと」
「そんなくだらぬことに使う気は毛頭ない。争うよりも、自分が幸せになるためにこそ使いたい。そう思っただけだ」
「あなたさまは私たちに牙を剥くこともなく、むしろ関係ないところでばかり孤軍奮闘されていましたね」
「私なりのそなたへの感謝だ。少なくとも私の人生は、少し変わった。人類の敵であるかもしれないが、私の敵ではないよ」
「そなた様の思いやり、痛み入ります。さぁ、扉を開けなさい!すべての結末がここにあります!」
□□□□□
「貴君ら。息は整ったか!?」
さぁ長きにわたる戦いの終局を迎えよう。私たちは三人でガラスのくつの間の扉を引き開けた。そこには当然のごとく、誰も、いなかった。
茫然としている私たち三人は、あっとういう間に追ってきた作業着姿のスタッフたちに取り押さえられた。
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