とある夕暮れ、地獄の門にて
我々の「恋人創造計画」の具体的プラン打ち合せは、開幕直後から順調に滑り出した。あまりに滑り、論点は
洋食屋「るぷら」での食事を終えた私たちは解散し、私は新しい魔法を
しかし、計画が
私は一人でぷらぷらと歩き、地獄の門の前に
「私もまた新たに魔法を会得しなければならないようだ。さぁ
「薫さま、あなたは本当に毎日暇なようですね。しかもこんなところに律儀に、毎日いらっしゃる。あなた本当にひきこもっているんですか?」
「ひきこもりとは心外だ。私は邪魔なしがらみを断っているだけだ」
私は上りに上り詰め、ついに一人にになっていた。何を上ってきたのかは他ならぬ自分でも分からないし、あまりに上り過ぎて世間からは浮いている。
ここまで来てしまうと、もはや世間のたもとまで降りていく方が困難であり、
「私は、あなたのこと好きですよ。私たちを排除しようとしないから」
「そもそも私は、『世界の平和と正義を守る』などと
「人間の魅力などというものは私にはわかりません。しかし、私もほとほと人間たちとの戦いに疲れてきました。双方に被害が出ています。ここらでおとなしく世界を明け渡してもらえませんか?決して悪いようにはしませぬ」
「ここで
「そんなものを教えてしまえば、あなたはまっさきに私たちを
大帝は非常に
いつしか私は、地獄の門の向こうにいる大帝との会話によって、日常の疲れが
だが、私がそれによって大帝に心を奪われているなどと思ってはいけない。私は理性の明証性による以外、決して物事を信じない。そして、その理性も見たり、想像したりするものが全て真であるとは限らない。
人外のものに、私たち人間の
声色と話し方に
私は性的な欲求なところとは全く無縁で、大帝との会話を心に染みわたらせて、楽しんでいるのである。
「頼む。一度でいいから姿を見せてほしい。そちらからは見えているらしいのに私だけ見えないというのは下関条約に匹敵する不平等さではないか」
「私の姿などみたところで何の得にもなりませんし、資するものもありません。どうぞ、声だけで。その他はあなたの想像に任せます」
「本当に私の想像に一切を
「どうぞ、お気のままに」
私の脳内には一瞬にして絶世の美女の姿が浮かんだ。Cカップという可も不可もない機動性に優れたサイズ、ナチュラル系の薄い化粧、漆黒のまっすぐな髪、涼しい目と表情、暖かい笑みを浮かべている。
常人ならばこれくらいの妄想になろうが、私の
本来ならば思いを打ち明け、私と二人きりで手作りのお弁当を携えてテーマパークへ行きたい。そこでいろんなアトラクションに興じ、夕飯を食べ、強風であっけなく止まってしまう京葉線によって陸の孤島に閉じ込められるのである。
しかし、女性を外に放置しておくことをよしとしない私は、あくまで紳士的に、彼女が一日の疲れを癒せるよう宿を手配する。
そしてタクシーで送りとどけて、ここでまた紳士的に彼女だけを残して自分は外で夜を過ごさんと彼女を見送ってホテルの外へ出ようとする。
そんな私の身体が止まったのは、手を握り締められたからだ。振り返るとそこには目にうっすらと涙を浮かべた彼女がいた。優しさだけを残して去っていく私の背中をみて、とても悲しい感情に
「ずっと一緒にいて、離れないでほしい…」
私はため息をついた。これは一日、彼女を大切にすることに骨を折りそうだ。長くなりそうな夜のことだった。
「想像にお任せしますとは言いましたが、そこまでいくともはや変態と言わざるを得ません。だれがあなたの手を引いて止めたっていうんですか」
「想像に任せるといっただろう!そしてみだりに人の頭の中を覗くなんて
□□□□□
「家に帰ったらな、見知らぬきれいな女性が俺の部屋でシャワーを浴びていたんだ。
「何それ?妄想の話?たぶんすぐ飛びこんじゃうなぁ。だって自分の部屋でシャワー浴びてるんでしょう?どうみても合意の上ってことだよね」
実に
そんなまどろっこしい妄想などしなくても、私は
部屋の中でシャワーを浴びていたなどという
まず、目の前のおっぱいを
方法序説に従ってそこにおっぱいがあるとの真理に至ったとしてもである。次に問題になるのは、飛び付くに値する持ち主であるかを確認せねばならない。
部屋でシャワーを浴びている異性ならだれでも貴君らはよいのか? 私はそんなことだけで自分の誇りを捨てたりしない。
「
「もはや変態が哲学の域に踏み込んだ感さえあるよ!!」
………
□□□□□
しかし現実には、目の前におっぱいがなくとも、艶めかしい声だけで、私の理性は失われかけていた。
本来の目的を忘れてはならない。これこそが大帝の手なのである。私には夢と魔法の国へ乗り込むにあたっての重要な魔法がいるのだ。
そしてそれは、私たちに魔法をもたらした彼女に懇願する以外の習得法を、私は知らない。
下手下手にでて、時には妄想で
これを逃したら、私の人生は孤独死まで一直線である。悲壮感しかない。もうダメかもしれない。
「そんなに悲観しないで。仕方がないですね。でも、一つだけ約束してくださいね。これから教える魔法は、薫にとってだけの魔法です。決して、他の人や私に使わないでください」
私は「しめた!」と思うと大帝に見透かされてしまうので、しばらく頭の中で一心不乱に「
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