第3章 魔法ラグナロク
ディズニーからの帰還
私が議題の
そこで何をするかといえば、向こう1年間の農事や縁結びなどを話し合うとされている。
毎年、
よもや縁結び大祭のときに、なけなしのお
私は日本酒やお頭つきの
そして、八百万の神々が出雲に集結してたんぽぽみたいなお茶会に興じる間、我がアパートでは男三人による恋人創造サミットが開催されていた。
三人寄らば文殊の知恵。だがしかし、それはまともな人間が三人集まった場合に限られる。烏合はどこまで集まっても烏合のままであり、三歩進んでは人生の路頭に迷っていた。
これが色気ある女性の一人もいれば、迷って時間をかけることは大歓迎である。しかし、我々は雄々しい男の三人である。頭に「ずっこけ」とかついても違和感がないほど汗臭く、一刻も早くゴールへとたどり着いて解散したい。そんなメンツで路頭に迷ってばかりだから、たちが悪かった。
しかし、それも今日までの事である。私は切り出した。
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諸君、本日急に集まってもらったのは他でもない。
先日、君らの惜しみない慈愛による
まぁ、まずは落ち着いて聞いてもらいたい。貴君らから頂いたお金の返済義務の有無については意見が分かれるところだが、いまは話を進めよう。
私は断じて、東京へ遊びにいったわけではない。飛行機の中から満員電車に至るまで、苦難に満ちた道中であった。
私は何度も心が折れかけたが、貴君らの顔を思い出して自分を奮いたたせようとした。しかし、貴君らのこきたない笑顔など思い出しても
主に私を励ましてくれたのは、貴君らではなく、貴君らのくれたお金と、
さて、既にご存じであるように、私は理想の恋人、すなわち「清楚系黒髪彼女」を創造するために心血注いできた。どうやら心血以外にも、単位や正気など人間として致命的なものまで注いできてしまったらしい。
その当然の
そんな現状を
それは、私が「恋人を魔法で創る」などと神のごとき
こら、史郎。
つまるところ、「私の恋人を創ることができるのは私だけであり、それは魔法ではなしとげられない」という、まともな教育を受けた人ならば誰もが心得ている真理のことだったのである。
私は、魔法という
私は、誰かを愛するためだけに生まれた信愛の
女性とも限らない。むしろ同性愛に悩む人であったらどうだろうか。
私は男性なのに違う
私たちは、自分の満足のためだけに可哀そうな存在を創ることをよしとしない。なぜなら、自分がされたら嫌だからである。自分がされて嫌なことは、他人にしない。
なんという
しかし、そうなれば早くも我らがとるべき道が無くなっていることに気付く。どうやって恋人を平和的に、敗者なくつくることができるのか。
結局のところ、私たちが魅力を放って、乙女たちにあくまで自主的に
うむ。君たちが大きな声をあげたくなるもの分かる。そんなことができるなら最初からしている。まさしくその通りである。
できるなら、私はいまごろ国土地理院で地図に記載するか否かの
しかし、いま君たちが無理だとわめいているのは、今の現実社会において男性的魅力を放つことが無理だということだろう。
魅力を放つ技術に欠けるのか、そもそも放つ魅力がないという問題なのかは重大ではない。
その両方を片付ける答えのヒントを、夢と魔法の国で得てきたのである。
同じ土台に立って勝負していれば、いつまでたっても私たちがイケメンに勝てる要素は発生しない。かれらに勝つためには、遥かに高い土台から、彼らに向かっていろんなものを投げ続けるしかない。
私はシンデレラ城にて英雄になってきた。もう少しでシンデレラと婚約するところであったのを断腸の思いで帰ってきた。決して嘘ではない。
英雄はあまりに眩しく、神々しい。もはや、そこには性など超越した魅力が在るのだ。
今も「大帝」からの侵攻は激しく、その最前線では魔法のエキスパートたちが心魂を削っている。彼らは間違いなく英雄であり、女性たちからも羨望のまなざしを集めていることだろう。
だが私たちがそんな場所へ
ならば、我々が英雄となれる場へ行って、無理やり
それらの条件を満たす場所は、「夢と魔法の国」である。
私たちは高校を卒業し、当然の流れで制服を脱ぎ去り、大学に入学して、偶然にも貴君らと同じサークルに入って出会った。最初は、乙女が多数いるサークルで浮かれていたことも認めるが、同時に大きな落とし穴もあったのだ。
脱ぎ去った制服は、私たちのファッションセンスを強制的にむき出しにした。しかし、いくらむき出しにされたところで無いものは無い。そこで有力なのは、高校時代から制服以外で遊んできた阿呆な男たちであり、教室の隅っこで
加えて私たちはサークルでの活動を誤った。いくら「CGを駆使した表現を模索する」という建前があったとしても、無尽蔵の想像力で
だが、時はきた。そのときには不毛であった想像力を、いまこそ
我らは来たるとき、夢と魔法の国を『我らが活躍せざるをえない世界』に創りかえる。そして、そこでの無双活躍ぶりを乙女たちに見てもらうのである。
さすれば私たちは必然的に英雄になり、意中の恋人が現れるに違いないのである。
夢と魔法の国には、恋の土壌がある。人々はかけられている魔法と、溢れる非日常に
一見して、カップルか親子しかいないかのように見えるかの国であるが、肌で感じてきた実感としてそれだけではなかった。
男性同士で群れるなどと言えば、「これから狩りにでもお出かけですか?」と聞くのが関の山だが、女性同士はむしろ群れて行動することの方が多い。
一人で自由分子のごとくパーク内を
勝機あり。なれば、やらぬ道理がどこにあるだろうか。
私たちは魔法を駆使して、夢と魔法の国での活躍を乙女たちに見せつけ、魅力を無理やり感じさせ、恋人をつくる。
完璧なロジックであり、この構成に隙はない。魔法で創る、などという愚行から大きく飛出し、私は発想によって広い視野を得た。貴君らがその気になってくれれば、大いにこの計画の確率はあがるだろう。
ただ問題点もある。偉大な魔法使いである私と、
かのパークを私たちだけの舞台に変えてしまうには、あまりに力が足りない。ロールプレイングゲームならば、ここから三々五々、村人たちに聞き込みをして仲間を
現実では町内会に聞き込みをしたところで、仲間どころか回覧板か、最悪の場合、消防団などの役を押し付けられるのがせいぜいだろう。
私たちは自分の意志で、仲間をつくらなければならない。しかもそれは、平等の観点から「あまりに強大でかっこいい魔法」を使用できる者は一切を除く。
あくまでみんな、平等に活躍し、平等に乙女たちにみてもらい、恋人に足るかどうかは乙女たちに決定権があるのだ。誰かひとりが
ただ、発案者である私が突出しているという事実については、すべての発端者の特権として甘んじて受け入れてもらいたい。
いろいろ言いたいこともあると思うが、計画の骨子は以上である。入念に計画及び準備を進め、万端をきして実行にのぞみたい。
私も来る日に備えて、魔法に
貴君らにも多くの幸福が訪れるよう、最大限努力しよう。
本日は以上である。
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