決意 1−9
「はい、飲む?」
ただひたすら走り続けた俺は、羽田施設団体と名乗る人達に拾われた。
羽田施設団体は、大人十人、子供二人の十二人で構成されている。彼らも家族や友人を奴らに殺され、身寄りのないところを
「ありがとうございます……」
「災難だったね……」
「……」
「今は休みたまえ、私達が君を守るよ」
羽田は一言、少し休むようにと俺に伝えて何処かへ消えてしまった。
『大丈夫よ、お母さんが必ず守るから』
『大丈夫、裕太は俺が守る』
また俺は守られるだけなのか……。
海斗の血や転んで汚れた右手を見つめる。奴らを殺すことも、みんなを守ることも出来ない無力な右手を。握ることも、掴むことだって出来る。それなのに、二人を助けることが出来なかった。俺に力が無いばかりに。
もっと力が……。
走った疲れもあり、気がつくと俺は眠りについていた。
そして、次に目を覚ます時、再び絶望が押し寄せることになる。
「裕太君! 起きて! 裕太君!」
俺は、前野と名乗る四十過ぎの女性の焦った声で目を覚ます。
「どうしました……」
「奴らよ! 奴らが来たの!」
「え!?」
奴ら、その単語を聞いた瞬間、今まで眠っていた頭が覚醒する。
「まだこの階にはいないわ、羽田さん達が下で食い止めてくれているの。だけど……」
分かっている。そんなことで奴らの進行を防げるわけがないことを。
「みんな逃げろ! 奴らが上がってきた!」
思った時には既に遅く、奴らは二階へと進行を始めていた。
「羽田さん達は!?」
前野は血相を変えて青年に尋ねるも、首を横に振るだけでそれ以上は口を開くことはしない。
羽田さんも奴らに殺されてしまった。
「……みんなを連れて裏口から逃げるわよ!」
商品の棚を支える鉄パイプや、従業員の傘を武器代わりに持ち、二階にいた人達を先導するように、前野さんは裏口へと駆けていく。俺も顔を伏せながらそのあとを追う。
「そんな……」
なんとか裏口まで辿り着いたのだが、既に奴らが行く手を塞いでいた。その数六体。
対する俺達は大人四人、子供は俺を含めて三人。
「……どうします?」
青年が隣に立っている前野に声をかける。
「前野さん! 後ろからもきました!」
羽田達を殺した奴らが、階段を上がって直ぐそこまで迫っていた。
「……私が前を走ります。大人は子供を囲むようにそのまま後ろから着いて」
「それは危険です! それでは前野さんが……」
前野は自らを犠牲にみんなを逃がそうとしている。それは青年達にも伝わったのだろう、前野を悲しげな目で見つめていた。
「子供達を絶対に守って下さい」
「……分かりました」
それが前野と青年達が交わす最後の言葉だった。
「みんな行くよ!」
自分を奮い立たせるかのように、前野は大声を出して先陣を切る。そのあとを青年達が俺達子供を囲むように突っ込んでいく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
奴らも、前野が突っ込んできたと同時にこちらへ悪魔のような手を伸ばす。あの手に捕まったら最後、逃れることは出来ないだろう。前野はその手を持っていた鉄パイプで振り払うように道を切り開いていく。
「前野さんもう直ぐ出口です! そのまま聞きましょう!」
斜め後ろを走っていた青年から希望に満ちた声が上がる。
ここにいる誰もが脱出できたと確信していたが、それを最もたやすく拒むように前野を悲劇が襲う。
「前野さん!」
「私のことは気にせず前に進みなさい!」
疲れていたのか、手に持っていた鉄パイプを下ろした瞬間、悪魔のような手が前野の服を捕え、そのまま引っ張られるように後ろに倒れ込んでしまう。当然、周りは驚き一瞬足が止まってしまうが前野の言葉ですぐに走り出した。
「待って! 前野さんが!」
「坊主、早くこい!」
捕まってしまった前野を助けるために立ち止まった俺を、青年が担いで外へと連れ出そうとした。
「前野さんを見捨てるのかよ!」
「うるせえ! 黙ってろ!」
青年は俺の言葉を無理やり遮り走り続ける。そして、前野を犠牲にした俺達はなんとかスーパーを抜け出すことに成功した。
「うああああああああ!」
スーパーのなから聞こえてくる前野の悲鳴。また罪のない人が俺の目の前で殺される。
どうして……、どうしてだよ……。
なんで俺はこんなところに立っているんだ。みんなを守るんじゃないのかよ……。
「くそ、俺達のせいだ……」
「羽田さん達を犠牲にしちまった……」
前野の犠牲を悔やむ青年達。
「どうしよう、前野さんが」
「うあああああああん」
前野の犠牲に泣く子供達。
奴らが存在している限り俺達に未来はない。いずれここにいる全員も奴らに殺されてしまう可能性だってある。なかには自らを犠牲にして誰かを助けるために。
この世界で生き残るためには誰かがやらなくてはいけない。誰かが奴らと戦はなくてはいけない。
「……」
周りが羽田や前野の犠牲で悲しむなか、俺は一人覚悟を決める。
「うおおおおおおおおおお!」
「おい、坊主!」
俺は青年が持っていた鉄パイプを奪い、今もスーパーのなかに
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