第8話 謎の転校生? 迫り来る闇の手!

第8話《アバン》

「はあっ……はあっ……」

 うっそうとした森の中を、一人の勇者が走っていた。茶色いマントを揺らし、額と頬にびっしょりと汗を浮かべていた。

「くそ……こ、このままでは……」

「――このままでは、何だ?」

 第三者の声に、勇者ははっと顔を上げた。目前に、黒いバイザーをつけた、黒い鎧の少年の姿があった。その姿を認めた勇者は目を大きく見開く。

「お、お前は……!」

 少年は、腰に下げていた剣を抜いた。その刃も鎧と同じく、漆黒に染まっている。

「貴様らはもう、終わりだ」

 少年の刃が、勇者に振り下ろされた。黒い刃が、勇者の肩に鋭く入る。

「ぐああああっ!!」

 森の中に、勇者の悲痛な叫びが響き渡る。少年は、地に伏せて叫ぶ勇者を、見下していた。

「諦めろ、ブライト・ブレイバーの勇者。貴様らにもう、未来はない」

「まだだ……俺たちは、まだ……負けていない……」

「……愚かだ」

 勇者の言葉に、一言、そう返した少年は剣を天に向けた。勇者は顔を上げて、その光景を見た。

「貴様も、闇に堕ちるだけだ」

 森の中で、最後の響いたのは、どん、という、鈍い音。周囲の土煙が消えると、そこに残っていたのは黒い鎧の少年だけだった。少年の手の中には、一枚のカードが収まっている。

「……ブライト・ブレイバー……」

 ぽつり、と呟いた少年は、黒いマントを翻して空を見上げた。

「貴様らに、未来はない」

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