第10話 ダンジョン探索4

 ゴブリンのドロップアイテムは魔石だけだった。どうやらゴブ野郎には使える素材がないようだ。魔石を拾った俺は、ボス討伐のご褒美の宝箱を開けた。その中にはブーツが一足入っていた。手に取ってみるとしっかりとした頑丈な作りで耐久性は抜群と思われるが、驚くことに重さをほとんど感じることがない。鳥の羽のように軽やかなのた。


 「師匠、このブーツなんかすごく軽いんだけど」

 

 「多分、フェザーブーツね。頑丈だけど軽く歩きやすいブーツよ。それにジャンプ力が上がる魔法がかかっているわね」


 なんと魔法がかかったブーツのようだ。ジャンプ力が上がるなら壁を乗り越えたり、屋根から屋根へ飛び移ったりも出来そうだな。俺は今まで履いていたスニーカーから履き替えることにする。履き心地はかなりいいな、通気性も良さそうだ。ジャンプ力を試してみたいが天井に頭をぶつける可能性が高いな。今回はやめておこう。

 確認をし終えて俺たちは第四エリアへ向かう。


 第四エリアは、今までのエリアと違ってほら穴のような造りだ。それまでの石造りの整備された道から、土造りの構造になっていた。どうやらダンジョンはエリアによって構造が違うようだ。俺は意を決して先に進むことにする。


 魔力感知による索敵をしつつ前に進んでいく。俺の索敵にゴブリンが引っかかる。三匹が前にいるようだ。俺は新しく習得した連発式ファイヤーバレットの準備をする。右手に火球が出現し、俺はその状態を維持したままゴブリンを待ち受ける。三匹がゴブゴブ言いながらやってきた。


 「ファイヤーバレット三連射」


 俺は呪文を唱える。三発の弾丸は真っ直ぐゴブリンに向かっていくが、二体しか倒すことが出来なかった。仕方なく、槍を構え間合いに入った最後の一匹を倒す。


 ウゲェギャーと耳障りな叫び声をあげながらゴブリンが倒れた。ドロップ品の魔石を手早くしまう。なぜなら索敵に十匹のゴブ野郎がこちらに向かってきているのを見つけたからだ。最後の一体の叫び声が聞こえたのかもしれない。幸いまだ距離はあるため俺は準備をする時間がある。


 再度、火球を出現させる。あともう少しでゴブリンたちが目視できるはずだ。俺は心を落ち着かせゴブリンが来るのを待ち構える。

 来た、ゴブゴブ言いながらこちらに向かってくる。


 「ファイヤーバレット十連発」


 今回は全段命中することが出来た。大分魔法の扱いにも慣れてきたな。

 俺たちは先へ進む。


 第四エリアを探索し終わり、ボス部屋の前にやってきた。因みにこのエリアには宝箱はなかった。


 部屋を覗くと、今までと違い広場ではなく、岩などがある部屋だった。そして部屋では三匹のゴブリンが待ち構えている。一匹は今まで出会ったゴブリンだが、他二匹は違った特徴があった。片方は弓を持ち、もう片方は杖を持っていた。どうやらゴブリンのパーティーのようだ。杖を持ったゴブリンは見た感じ魔法を使うかもしれないな。

遠距離攻撃が二匹をいると思われる。優先順位を間違えると命の危険もありそうだ。しかも後衛二匹は岩を前にしており、遠距離攻撃が当たりにくそうな感じがする。

 

 どうやって戦えばいいかな……普通に戦っても後衛が邪魔をすると思うしな。俺は少し考え、気づいた。先ほど手に入れたこのブーツは確かジャンプ力を上げる機能がある。幸い部屋の中は天井も高くなっているからぶつかる心配も少ないだろう。ダッシュして部屋に入りジャンプする。そして魔法で三匹を瞬殺する。

 よし、このプランで行くか。俺は火球を槍はどうするか、置いていくか、持っていくか……外した時のことを考え持っていこう。バランスは何とかなるだろう。


 俺は左手に槍を持ち、右手に火球を出現させる。そして、十歩ほど下がりダッシュしながら部屋に入っていった。


 足音でゴブリンが気づく、弓を持ったゴブリンが弓を構える。まだ遠い、杖を持ったゴブリンも魔法を使うつもりか杖を俺のほうに向けた。一般兵のゴブリンは後衛を守っているのか近づいてこないな。

 弓ゴブリンが矢を放った。チ、早いな、俺は力いっぱいジャンプした。


 「ファイヤーバレット三連発」


 火で出来た弾丸がゴブリン達を倒すため向かっていく。同時に二発の弾丸がゴブリンの眉間を貫く。


 マズイ……マジシャンに避けられた。ゴブリンがニヤっと笑った気がする。マジシャンの杖がこちらを向いた。

  チクショウ、破れかぶれだ……俺は持っていた槍を左手のままゴブリンに投げつける。


 「二―ベ○ンヴァレ○ティ」


 学生のころハマったゲームの必殺技を叫んでしまう。


 俺が投げつけた槍はマジシャンの胴を貫くと同時に火球が俺に向かって飛んできたが、顔の横を通り過ぎる、熱さを感じる。


 危なかった、グゥェ……


 突然頭に衝撃を受けて俺は地面に落っこちた。


 イテェー……目の前に星がきらめく。ジャンプ力が強過ぎて天井に頭をぶつけてしまったようだ。


 しかし、危なかったな。運がよかった……


 師匠がトコトコと近寄ってくる。


 「まったくヒヤヒヤしたわ。優雅でないわ、まったく。いい事、最後は運がよかったのよ」


 師匠に怒られるが何も言えない。


 「まあ何とか倒せたからいいけれど次からはもっと考えて行動なさい。後衛が隠れる岩を破壊するとか他にやりようがあったでしょう。なんのために魔法を教えているの。ほら頭に傷が出来ているわよ。今回は治してあげましょう」


 どうやら、先ほど天井に頭をぶつけたせいで傷が出来たようだ。師匠の魔法で傷が治っていく。


 「ところで、槍を投げた時に叫んでいたようだけどあれは何。ゲームの影響も大概にしなさいね」


 どうやら俺の厨二的要素を聞いていたようだ。恥ずかしさで顔が熱くなる。


 「そ、それは何というか……出来心でつい……」


 段々言葉が尻すぼみなっていく。俺は話題を変えようと試みる。


 「ところで師匠は異世界から来てるのに、地球の知識に詳しいな。なんでだ」


 「こちらに転移してくる際に管理人組合からこの世界の知識を貰ったのよ。一般常識からネット知識まで満遍なくね」


 アカシックレコード的なものかな。学生のころにその知識を手に入れる方法が俺にもあったら一流大学にも行けただろうな。そういえば厨二といえば俺は槍を使っているわけで、もしかしたらあの漫画に出てきた魔界の名工による槍もあったりするかな。


 「鎧が装備できる槍なんてないからね」


 俺の考えは師匠に筒抜けのようだ……


 (続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る