第6話 ダンジョン探索1
俺たちはダンジョンの入り口の前に到着した。これから中に入ると思うと体が震えた。武者震いか、いや怖いのかもしれないな。
「覚悟はいいかしら」
肩に乗る師匠の問いかけに俺は頷きヘッドライトの明かりをつけて一歩踏み出す。
入ってみると、驚くことに石造りだった。山の中に開いた入り口から洞窟だろうと想像していたが違ったみたいだ。
明かりが届く範囲では一本道のようだ。
少し歩くと師匠が肩から降りた。
「前からモンスターがやってくるわ。妾は見ているから耕太が倒しなさい」
見える範囲にはそれらしき姿は見えないがよく目を凝らすと、30cmほどの影が近づいてくるような気がする。
槍を構え、迎え撃とうとしていると現れた。
大きさは30cmくらいの角を生やしたウサギだった。見た目はかわいいウサギだが、頭から生えている角は槍の穂先のように鋭くとがっている。
「一角ウサギよ。大したことはないけど、ただのウサギだと思って油断すると痛い目にあうわよ。体当たりで串刺しになる場合もあるからね」
師匠からのアドバイスを貰い俺は槍を突き出すが、ウサギに避けられてしまう。マズイ、ウサギが俺に体当たりをする。辛くも避けることが出来た。
態勢を崩したウサギの胴体向けて俺は突きを放つ。槍はウサギの胴体に突き刺さり動かなくなった。
ほぉ、何とか倒せたようだ。槍を引き抜くとウサギは煙のように消えてしまった。ウサギがいた場所には、小さな石と肉が落ちていた。
「何とか倒せたようね、優雅とは程遠い戦いぶりだったけれどね。見た通りダンジョンのモンスターは倒すとドロップ品を落として消えるわ。この黒い石は魔石と呼ばれるもので、そっちのお肉は一角ウサギの肉ね。美味しいわよ」
この黒い小石は魔石か、想像してたような石だな。何に使えるのかな。ウサギ肉はウマそうだ。
「魔石は動力としても使えるし身体能力や武器防具の性能を上げるのにも使えるわね。ただ、小石程度だと微々たるものだから数を集めないとダメね。モンスターが強ければ強いほど魔石は大きくなってくるし価値も上がってくるわ」
「ふーん、小石でも沢山集めれば意味があるのか。よし、じゃあ先に進むか」
師匠が肩に乗ったのを確認すると俺は先に進むことにする。
途中何度かウサギに遭遇するが何とか倒すことが出来た。ドロップ品を回収しつつ先を進むと道が二股に分かれていた。
「なあ師匠どっちに行ったほうがいいかな」
「どっちでもいいわよ。行き止まりなら戻ればいいことだしね」
「そっか、じゃあ右に行くか。そういえば帰り道は大丈夫かな。マッピングとかしたほうがいいのか」
ふと疑問に思い確認する。
「普通はマッピングしながら探索をするのだけれど、今回は大丈夫よ。次回からはマッピングしながら進むことにするから」
「分かった。じゃあ先に進むよ」
分かれ道を右にしばらく進むと行き止まりだったが、木製の箱が置かれている。どう見ても宝箱だった。俺は駆け寄り、宝箱を開ける。
ゴン、何かが俺のおでこに当たる。一瞬目の前が暗くなりチカチカと星が見える。
痛い、俺は涙目で痛みが引くのを待った。
「言ってなかったけれど、ダンジョンには宝箱がある場合もあるわ。ただ罠が仕掛けられている場合もあるから慎重に開けないといけないの」
「そういうことは早く言ってくれよ」
俺は師匠をにらむ。
「こういうのは実際に遭遇したほうが次から気を付けるようになるからね。それに言う前に走り出したのは耕太よ」
師匠はSだったらしい。しかも鬼軍曹だ。痛みを受けさせながら教えるのがスタイルのようだ。ただ言っていることは正しいし、いきなり開けた俺が悪いな。次から気を付けようと心に誓った。
「罠は宝箱だけでなく至る所にあるからね。観察眼を養いなさい。少しでもおかしいところがあれば慎重に確認することが重要よ。このダンジョンは訓練用だから死ぬような罠はないけれど、中には毒矢や剣山の落とし穴みたいな殺傷力の高い罠もあるからね」
ダンジョンはやはり危険な代物だったんだな。何も知らなければすぐ死んでしまうんだ。
俺は開けた宝箱の中を覗くと小さな小瓶が収まっていた。小瓶を持ち上げよく見てみる。小瓶は青い液体で満たされていた。
「それはポーションよ。飲むと傷が治るわ。化粧水として使うと肌が若返ったりもするわね」
ファンタジーの定番アイテムを手に入れたみたいだ。お肌にもいいのか。世の女性達が欲しがるだろうな。
俺はポーションをリュックにしまうと来た道を戻ることにした。
さっきの分かれ道を左に進む。罠に注意しながらしばらく進むと広い部屋があった。慎重に中を覗くとウサギが五匹もいる。
「第一エリアの終点ね。ダンジョンの各エリアの終点にはエリアボスがいるわ。今回は一角ウサギが集団だけれども、エリアボスは道中のモンスターより強い場合がほとんどよ。今回は集団戦ようね。妾は手伝わないから耕太一人で倒しなさい」
師匠にそう言われて俺は槍を強く握る。一対五か。どうするか、弓矢は持っているが使ったことはないし、うまく飛ばすことも出来ないだろう。ナイフを投げてみるか、うまくいけば倒せるかもしれない。
そう考え俺は腰のナイフを手に持ち狙いをつけて投げた。
クルクルと回転しながらウサギたちが固まっているところにナイフが飛んでいった。ザクッと音がすると運がいいことに2体巻き込んで刺さる。
よし、これで一対三だ。槍を握りなおして構えると俺に気づいたウサギ達が向かってくる。
三匹が同時に突っ込んできたが落ち着いて左に避けると同時に槍をウサギに刺す。槍は簡単にウサギに突き刺さった。俺は急いで槍を抜き構える。
一匹倒せた、残り二匹だ。今度はウサギも慎重になったらしい。俺と二匹のウサギは向かい合いお互いの隙を探す。痺れを切らしたのか、ウサギが一匹突進してきた。甘いぜ、俺は余裕で避けるとウサギを攻撃し難なく倒すが、もう一匹に対して横を向く形になってしまった。
ヤツはこれを狙っていたのか。
最後の一匹が突進してくる。
俺は転がりながら避けるが、槍を落としてしまう。万事休す、ウサギが再度突進してきた。
俺はヤケクソでウサギの角を掴もうとする。鋭利な刃物のように手袋が裂け、手のひらを傷つけるが何とか掴むことが出来た。渾身の力をもってウサギを地面に叩き付ける。何度も叩き付けるとウサギはピクリとも動かなくなった。
俺は床に大の字になり激しく息を吸う。
やばかった、途中まではよかったが槍を手放したことはいただけないな。
何とか命は無事だったが、もう少しうまくやらないとダメだな。
俺はさっき手に入れたポーションをリュックから取り出し、傷を治すため飲む。
手の傷が見る見るうちに治っていった……
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます