第53話 最後の戦い 中編

その瞬間、部屋が異空間に包まれる。

何かこの雰囲気、RPGのラスボスとの戦闘シーンみたいだ。


龍石波動弾りゅうせきはどうだん!」


エアマスターはそう言ってどこからか隕石群を召喚する!そして奴に召喚された無数の隕石が次々にオレ達を襲った!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


「絶対防御!」


その攻撃に対してレイがすぐに反応して防御シールドを張る!


ドンッ!ドンッ!


このレイのシールドによって落下してくる隕石群は弾かれオレ達は事なきを得ていた。

しかしこのシールド、いつまで持つだろう。


シールドで守られている間はこっちからも攻撃出来ない。持久戦になれば防御側のこちらより攻撃側のメアマスターの方が有利になるだろう。


ドンッ!ドンッ!


「うっ…くぅ…」


シールドに隕石がぶつかる度にレイの顔が苦痛に歪む。

きっとこのシールドを張り続けるのにかなりの力を消費してしまうんだろう。

早く…早く何とかしないと…。


(闇を光に転写…)


オレはこの時、父さんからの伝言を思い出していた。もしかしたらあの言葉はこの場面で使うべきものなのかも知れない。まだ方法は分からないけど、これでどうだ!

オレはレイのシールドに守られながら懐から城の地図を出して広げて上空に掲げた。


……。


…しかし何も起こらなかった。どうやらこの方法が正解ではなさそうだ。


「何やってんの?」


この行動に対してレイが呆れたような顔で言う。当てが外れたオレは恥ずかしくなって思わず顔を真っ赤にしていた。


「いや、ここで使うのかなって」


「見事に山が外れたね…」


う…レイの憐れむような視線が痛い…。うう…あんまりそんな目で見ないで…。

まだまだメアマスターの隕石攻撃は続いている。こいつ…一体どれだけの隕石を召喚するつもりなんだ…。


ドンッ!ドンッ!


「うう…っ!」


隕石の攻撃を全て弾き返しているレイがかなり辛そうになって来ている…。

これは…あんまり悠長に構えている場合じゃないな。

オレは何とかこの膠着状態の突破口を探した。今のメアマスターをよく観察してみればこの攻撃中のヤツは隙だらけだ。

落ちてくる無数の隕石を避けて近付く事が出来れば難なく攻撃を当てられそうな気がする。

失敗したら隕石の餌食になりかねないけど…ここはやるしかない!


オレは落ちる隕石の流れを見極める。そして一瞬の隙を発見!今だ!今しかない!


「うおおおっ!」


オレはレイのシールドから抜け出し、自身の技で一番のスピードを誇る流星の技でメアマスターに向けて突っ込んだ!

この技なら落ちてくる隕石の間を縫って奴に攻撃を当てられるはず!


流星狼牙突りゅうせいがろうとつ!」


これはその名の通り流れ星が空を落ちるようなスピードで一気に敵に接近して攻撃を放つ技だ。神経を研ぎ澄ませた流星の技のスピードは誰の目にも止まらない!

オレは一瞬でメアマスターの目前まで接近し最速の一撃の拳を放った!


ふわっ。


オレの必殺の一撃がメアマスターを貫通…しない。拳がメアマスターに触れた瞬間、ヤツの身体は四散してしまった。


「嘘…だろ?」


手応えも何もなかった。これがヤツの言う悪夢の集合体と言う意味なのだろうか。

ただ、そのおかげで隕石の攻撃は止まった。よし!ここで一旦仕切り直しだ!

しかし、ここから一体どうしたらいいんだ…。

さっきの手応えから言って攻撃が当たる瞬間、奴の体に実体はなかった…最初からそうなのか、あの瞬間にそうしたのか…とにかくメアマスターは今までの敵と全く違う。


「物理攻撃が効かないなら私の出番だよ!」


今度はレイがそう言って攻撃態勢を取る。確かにエレルギー弾攻撃なら効果はあるかも知れない。後は、メアマスターが次にどこに実体化するか…。

先に見つけて攻撃する方がきっと有利なはず…つまりは先手必勝!


もわわ…。


その時、空間の歪みをレイの右後方に感じた!


「そこだぁっ!」


気配を感じたレイはすぐにその方向に振り向き速攻で攻撃!彼女の手からレーザービームのようなエネルギー波がその方向へ光の速さで向かって行く!


「ほう」


しかし暗闇から現れたメアマスターはそのエネルギー波を難なく吸収した。それはまるでこの程度の攻撃など何も意味も持たないと言った雰囲気だった。


「嘘っ!」


その結果にレイは愕然とする。物理攻撃も駄目、エネルギー波も駄目。頼みの綱の城の地図も一体どこで使えばいいのか分からない。

やばい…いきなり打つ手がなくなった。

いや!


「流星牙狼突!」


メアマスターが完全実体化する前にオレはまたこの技を撃ち込む!拳がヤツに当たるとまたその身体は四散する。そう、これで時間稼ぎくらいは出来る…。

…けれど、早速レイにこの作戦の穴を指摘された。


「同じ事を何度も繰り返しても消耗するだけよ!」


「分かってる!分かってるけど!」


そんな事は分かってるんだよ…分かってるけど…。

オレはこの僅かに出来たこの時間でどうにかこの状態を打破出来ないか必死に考えた。

後、何か出来るとしたら絶牙の力を光に変えろって言われたアレくらいか…。

でもそんなのその方法が分からなくちゃ…。


もわわ…。


「また出た!」


空間の異変を感じたレイが叫ぶ!


「任せろっ!」


オレはまたその場所に向かって拳を繰り出す!


すっー…。


「え?」


今度のメアマスターの消え方は何か違和感があった。

まさか…こっちは囮?オレはこの違和感に悪い予感がギュンギュンしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る