第46話 最終奥義 後編
だがもうオレはロアードの上から見下すように笑うその顔を見上げる事もしなかった。集中…集中…。必ずあの技の真髄を掴んでやる!
「絶牙…」
「絶牙…」
「絶牙…」
間もなく親衛隊達の拳が次々にオレに襲いかかる!集中するオレの目には敵親衛隊員の動きがスローモーションに見えていた。
「環空斬!」
「環空斬!」
「環空斬!」
来た!またあの嫌な威圧感だ!衝撃波ともまた違う…そうか!これは…気の力!
それが複雑な気流を描いてオレの身体に纏わりついていく。強い力で押さえつけているんじゃない、力を吸い取られているんだ!
その後に力を吸い取られて弱体化したところで拳が飛んでくる!
円の力を用いて循環するように…全ての力を一点に集めていく…そう言う事か!
バキバキバキバキィ!
目の前の親衛隊員の全員の攻撃を受けてオレはまたさっきと同じように宙に浮く。
しかし見極めたオレは空中でうまく体勢を立て直して今度は難なく床に着地した。
「何っ?」
必殺の奥義がダメージをうまく与えらない様子を見て焦って身を乗り出し慌て出すロアード。オレは奴のその様子を見て逆に挑発し返した。
「おやおや?計算が狂ったかい?」
「ま…まさか…」
「そうだよ…じっくり観察させてもらった」
その時、胸にしまってあった極意の書が光を放つ。その光はまるで自分のこの行動の正しさを証明しているかのようだった。
「こ、これは…」
この状況で本を開く余裕はなかったけどそっとその光の部分に触れると光から暖かいエネルギーを感じた。それはオレにとってまるで父さんからの暖かいメッセージのようにも感じられた。
そうだよ!ここまで来て、こんなところで負けてなんていられない!
「もう一度だ!奥義で早くアイツをズタボロにしろっ!」
余裕をなくしたロアードが親衛隊員全員に号令をかける!その一声で一斉にオレに襲い掛かる親衛隊員達!もうなりふり構っていられないと言う事か。
でも、ちょっとばかり遅かったな。
「オレにもうその技は効かないぜ!」
オレは技をかけようと走ってくる親衛隊員達に向かって走りながら目を閉じて気の流れを把握する。これがオレが導き出した答えだ!
「馬鹿か!目を閉じて走ってくるだと!それが攻略方法だとでも?」
「その通り!」
親衛隊員達はタイミングを見計らってオレに向けて次々と奥義を繰り出す!
ふぁさーっ。
技の本質が纏わりつく気だと分かればその気の流れに逆らわないように動けばいい…。親衛隊員達の繰り出す拳はオレに当たる事なく次々と何もない空間に踊った。
「ば、馬鹿なっ!」
この様子を見てロアードが頭を抱えて動揺する。自慢の作戦が不発に終わった事が信じられないようだった。
オレは向かってくる親衛隊員達全員とすれ違いきった後、素早く方向転換して反撃へと転じる!
「それじゃあ行くよ!」
「絶牙!」
「な、何ぃ!」
「
そう、オレは親衛隊員達が放つタダシ流最終奥義を受け、そこから新しい技を編み出した。絶牙環空斬の更に上を行く技を!
考えてみれば父の技は師から受け継がれたものじゃなくみんな独学で身に付けたもの。ならばオレだって父の技を受けて更にアレンジ出来ても何の不思議もない。常に進化し続けるのが龍元流なんだ!
オレの拳から放たれた高圧縮の気の力が周りの気の力を取り込みながら膨張していく。初めて放った割にその技の完成度はオレの想像を軽く超えていた。
「うわぁぁぁぁっ!」
ドゴォォォォォン!
初めて受ける巨大化した気の塊の猛攻に親衛隊員達は為す術もなく倒されていった。
「まさか…我が精鋭たちが…」
その様子を見てロアードは言葉を失っていた。さっきまで余裕の表情はどこへやら。
今度は逆にオレの心の方に大きな余裕が生まれていた。
「さあどうする?また逃げる?」
呆然として力なく立ちすくむロアードを見てオレは奴を挑発する。
こんな展開を全く予想していなかった奴はオレの挑発を受けて一気に発火した。
「貴様ァァァ!」
激昂して正気を失ったロアードがオレに向かって突っ込んで来る!オレは鬼のような形相で向かってくる奴に対し一歩も怯む事なくその拳と対峙する!
「絶牙ァァァ!」
ロアードが2階から飛び降りながら技を繰り出す!
「絶牙ァァァ!」
オレもその拳に合わせるように技を繰り出す!
「環空斬!」
「冥皇滅!」
2つの巨大な力は衝突して周囲に爆発的な破壊をもたらした。流石ロアードの環空斬は雑魚親衛隊員が放つそれとはスピードも威力も桁違いだった。技を放ったオレもお互いの技が衝突した瞬間、この勝負、どちらもただでは済まないだろうと予感していた。
ドゴォォォォォォォン!
2つの巨大な力が衝突して美しかった城の玄関が粉々に破壊された。力の衝突によって発生した規格外の破壊エネルギーに城の材質が耐え切れなかったのだ。
「う…こんな…馬鹿な…」
オレの技をまともに食らったロアードは満身創痍になりながら一度は立ち上がったものの、その衝撃に自身の身体が耐え切れずまたその場で倒れてしまった。
「ふぅ…」
ロアードが倒れて少ししてオレは積み重なった瓦礫を拳で吹き飛ばす。お互いの技がぶつかって2人共それぞれ身体にダメージを受けたものの、オレの方は大した怪我もなく済んでいた。身体に積もった埃をパンパンと手で払いながらオレはつぶやく。
「この威力、流石ロアードだぜ。さあもう一度…ってアレ?」
オレが仕切り直しでもう一度戦おうと息巻いているとそこに倒れたロアードを見つける。倒れた傷だらけのロアードはもうぴくりとも動く気配がなかった。
オレはそれを確認して…ゴクリと息を呑んだ。
「…やった!勝ったどー!」
勝利を確信し、オレは激戦を勝ち抜いた喜びの雄叫びをあげていた。悪のボスに後一歩のところまで迫ったあの父の最終奥義を打ち破り更にその上の技も手に入れた!
これはオレにとってむちゃくちゃ自信に繋がった。
「良し!」
ロアードを倒したオレは気合を入れ直し先に行ったレイの後を追う!きっとレイは四天王と対峙しているはずだ…オレが追いつくまでどうか彼女も無事でいてくれっ!
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