第4章 再会した父とそれから…

第28話 小人達の洞窟 前編

砦を破壊して(壊したのはロアードだけど)しばらく進むと洞窟のようなものが見えてきた。ここが例の小人の洞窟?

小人の~という割にそこは普通の人間も難なく出入り出来るくらいの結構な大きさの洞窟だった。


「ここで…いいのかな?」


オレは場所が間違っていないかちょっと心配になってアサウェルに尋ねた。


「ええ…小人の洞窟と言えば私の知っている限りここだけです」


「何ビビってんのよ!さっさと入りましょ!」


相変わらずレイは強気だ。父さんの手がかりがあるかも知れないってなると気がはやるのも分かるけど…。

何の対策もなしに飛び込んでそれが罠だったらって考えないんだろうか?


「行くよっ!」


「うわっ!」


グズグズしているオレが気に入らなかったのかレイがオレの手を引っ張ってそのまま洞窟へと進んで行く。オレはレイに強引に引っ張られるままなし崩しに洞窟へと入って行った。


「やれやれ…」


その様子を心なしか嬉しそうに見守るアサウェル。そのアサウェルもオレ達の後を離れ過ぎない距離を保ちながらついてくる。

で、出来れば彼女のこの行為を止めて欲しかったんだけどな…(汗)。



洞窟の中は入口付近こそ多少明るかったものの奥に進むに連れ段々と暗くなってくる。分かってはいたけど…暗くなると足元もおぼつかない。

暗過ぎてついに普通に歩くのにも苦戦するようになった頃、前方のレイが振り返りながらオレに向かって言った。


「ヒロト、あんた明かりが欲しいとか思ってるでしょ」


「そりゃあ…だって当然だろ」


オレがそう言うとレイはオレの前に手のひらを差し出す…ん?一体何をしようって言うんだ?


「見ててね」


オレはその言葉通りレイの手をじっと見つめる。レイの手ってちっちゃくて可愛いな…い、いやいや!そうじゃないだろっ(汗)。

オレが変な勘違いをしているとレイの手のひらの上の部分にエネルギーが集まり出した。そしてある程度そのエネルギーが溜まったところで彼女が掛け声をかける。


「ほいっ」


するとどうだろう。小さな…ピンポン玉くらいの大きさの光の玉がそこに発生していた。その小さな玉はその大きさからは想像出来ない程の眩しさの光を生み出している。光の玉はレイの前方にふわっと浮かんでそのまま空中停止した。レイが動けばその光もついてくるようだ。


「おお~」


それを見てオレは素直に感動していた。エネルギー弾が使えればこんな芸当も出来るんだ。闇の中で照らされたオレの顔を見ながらレイが話す。


「便利でしょ?」


「マジですごい…ライトいらずじゃん」


「ふふーん」


感心したオレの言葉に鼻高々なレイ。彼女をあんまり調子付かせるのもどうかと思うんだけどそう思ってしまったんだから仕方がない。


「ほう、これは素晴らしいですね」


後ろにいたアサウェルもこのレイの技(?)を褒めちぎっているしね。

アサウェルにも褒められてレイの自尊心は最高レベルに達していた。


「じゃあ、明るくなったし先へと急ぐよ!」


テンションマックスで意気揚々と洞窟の奥へと進むレイ。

オレはそんなレイの後をついていきながらアサウェルにこの洞窟の事を聞く事にした。


「この洞窟について何か情報は?」


「そうですね…かつてこの洞窟はその名の通り小人達が住んでいたそうです」


「じゃあ今は小人達は?」


オレがアサウェルの洞窟の詳細を聞いている途中で突然レイが叫び声を上げた。


「キャアアアーッ!」


考えてみればホラー関係な事が大の苦手なレイの事だ。洞窟内でうごめく生き物とかを見て何かと見間違えたりしたんだろう。とりあえず叫び声の正体を確認して落ち着かせないと。


「どうした!」


「あ、あれ…」


レイが指差す先にいたものは…小人だった。さっきアサウェルが話していた小人と同じ小人かどうかは分からないけど…。


その小人は小人と言うか…子鬼と言った方が相応しい容姿だった。身体は小さく50cmもないかも知れない。服は汚れてみすぼらしく顔は彫りとシワが深く狂気に歪んでいた。確かにこんなのが急に暗闇から現れたらビビる…オレだって突然暗闇の中からこいつが現れたら大声を上げただろう。


「ア、アサウェル…」


オレは当然のように後ろのアサウェルに助けを求めた。こんな時、一体どうすればいんだよっ!

オレの呼びかけにアサウェルも前にやって来てこの小人をその目で確認する。


「ええ…しかしこれは…私も初めて見ます」


何だって?…この小人、アサウェルも正体を知らないのか…。

しかし一体どうすればいいんだ…。オレ達はこの突然現れた洞窟の先住民を前にどう対処していいか決められないでいた。


「これ…ヤバイやつじゃないの?」


レイが怯えながらアサウェルにこの小人の事を質問する。その顔は顔面蒼白でいつもとのギャップに笑ってしまいそうになってしまった。


「多分大丈夫ですよ。言葉が通じるかどうかは分かりませんが」


アサウェルはそう言って前に出て小人とのコミュニケーションを試みる。


「初めまして。私はアサウェルと言います。私達は決して敵対する者ではない事を保証します」


うん、まさにアサウェルらしいとても丁寧な挨拶だ。さて、この小人は真摯な彼の言葉にどう反応するのかな…。


「ふん、言葉が通じるかだと?馬鹿にするな!」


あらら…何故だか小人さんご機嫌斜めになっちゃったぞ。もしかしてさっきの挨拶にNGワードか何かが入っていた?


「俺はお前さんと同じ変異体だ…元からこうだった訳じゃない」


この小人の話によると昔はちゃんとした人間だったがとある実験の犠牲になってこの姿になったとの事。その後、研究所を脱走して研究職員に追われ逃げている内にこの洞窟に辿り着いたと言う事らしい。


「もしかしてあの時敵が言ってたのはこいつの事なんじゃ…」


「そうかも知れませんが…」


オレは段々話が違うんじゃないかと言う気がして来ていた。

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