第27話 闇の砦 後編
何とオレの知らないところでオレは見捨てられていた…何でなんだよ(汗)。
いや、これは信用されてるんだよ!そうだよ!今はその信頼に応えないと!
…ま、この真実を知ったのはこの苦難を乗り越えた後の話なんだけどね。
「そんなの卑怯じゃないか」
「卑怯?」
「お前らだけがオレの技を知っていてオレはお前らの事は何も知らない」
このオレの言葉にロアードは呆れたような顔をする。そりゃあオレだってこんな弱音が大した意味を持つとは思ってはいない。
けれどどうしても吐き出したかったんだ。こんな不利な状況ってないよ!
「馬鹿だなお前…戦いってのはそう言うものだろう」
俺の抗議にロアードは呆れた顔をしてそう返した。
その言葉や態度にちょっとキレたオレは奴を挑発した。
「だったらオレは…お前の攻撃を全て見切ってやる!」
「面白い!やってみろ!」
このオレの言葉がロアードの自尊心を刺激したのか奴はニヤリと笑うと早速エネルギー弾攻撃を再開する。このっ!根比べなら負けはしないぞ!多分!
ズドドドドドドッ!
いつの間にか部屋の壁はロアードの攻撃で亀裂が入りまくり。どうやらオレを閉じ込めたこの部屋はあまり頑丈には作られていないようだ。
敵の攻撃を避けながら周りを見渡してこの状態を察したオレはここにこの部屋脱出の可能性を感じていた。
ミシッ!
ミシミシッ!
ロアードの攻撃の度に部屋の壁に少しずつ亀裂が入っていく。このままこの攻撃を避け続ければこの部屋は多分崩壊する。その瞬間こそ脱出のチャンス!
「このっ!ちょこまかと!」
ロアードは余りにオレが攻撃を避けるもんだからやられ敵キャラの定番セリフを吐いてしまっていた。いいぞ!このままどんどんメッキを剥がしてやる!
どうせこっちの攻撃が届かないんなら回避に100%専念するぜ!
そんなオレが苦戦している中、アサウェル・レイ組は順調にこの砦を攻略していた。まずレイが遠距離攻撃で他愛もない雑魚キャラを倒し、そこから漏れた強者をアサウェルが倒す。その息のあったコンビネーションの前に敵はいなかった。
「私達、息ピッタリだね」
「ええ、この調子で進んで行きましょう」
このぉ…オレが苦戦してるってのに…。
それはそうと好調二人組はついに北部支部の中央司令部に辿り着いていた。
そこで待っていたのは、以前取り逃した北部支部支部長ホルル!
奴は自慢の砦を良い様にされて顔を青ざめながら声を震わせて言った。
「まさかこんな簡単にここまで突破されるとは…」
「私達の戦力を甘く見ていましたね」
「覚悟なさい!瞬殺よ!」
レイがそう言って攻撃しようと腕に力を込めた時、建物全体に大きな振動が走る!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
「な、何っ!」
突然の出来事に驚いて一旦攻撃を止めるレイ。
そしてその場にいた全員がキョロキョロ周りを見渡す非常事態に。この状況から察するにこの振動はこの場の誰もが予想していなかった事態なのだろう。
「何だ?何が起こった?状況を説明しろ!」
この砦の総責任者ホルルでさえこの有様だ。今のこの状況の詳細を知る者はここには誰一人としていなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
何もしなくても振動はどんどん激しくなる!その度に現場はますますパニックになる。焦って何も出来ないままその振動だけが激しさを増していった。
そして…。
ズズ……ゥン!
砦は…呆気無く崩壊した。元凶は、そう、ロアードのあのエネルギー弾攻撃だ。
ガラガラガラ…。
「あいてててて…」
積み重なる瓦礫の山からオレは生還した。砦崩壊の瞬間、崩れて落ちてくる瓦礫をオレは得意の掌底で弾き飛ばし続けほぼ無傷で逃げ延びる事が出来た。
ガラガラガラ…。
「くっ!こ、これで勝ったと思うなよっ!」
その次に姿を表したのはロアードだった。ヤツもまた自慢の防御フィールドを発動して無傷で生き伸びていた。ただ、ダメージ自体はなかったもののこの砦破壊の原因を作ってしまった為、その責任から逃れようとすぐにこの場を後にした。
きっと奴とはまた何処かで戦う羽目になるのだろう…その時までに何とか自分だけの技を習得しないと。そう、オレは心に固く誓うのだった。
ガラガラガラ…。
砦の崩壊から生還したのはオレとロアードだけじゃなかった。レイとアサウェル…それと北部支部長ホルルもダメージを受けながらこの無数の瓦礫の山から姿を表した。
「お…おのれ…こしゃくな真似を!」
無傷のオレを見て肩を震わせてものすごい鬼の形相でそう叫ぶホルル。
えぇと…まさかこれをオレの仕業だと思っている?しっかり勘違いしちゃってますけどあの…この砦壊したのオレじゃないんで…。って、言ってもきっと信じないんだろうなぁ。
「ヒロト!無事でしたか!」
「これ、あんたの仕業なの?」
心配してくれるアサウェルに対してレイは怒っているみたいだった。
この砦崩壊のせいで体全体埃まみれになってしまったもんね…分からなくもないよ…。彼女の怒りが収まるか分からないけど一応言い訳しなくっちゃ。
「オレはただ敵の攻撃を避けていただけだよ」
「この砦をあっさり破壊するほどの敵がいましたか!」
この言葉にすぐに反応したのがアサウェルだ。彼はそんな手練と戦って無傷のオレを讃えてくれているようだった。
それに対してレイからの言葉はちょっと手厳しかった。
「で、そいつは?しっかり倒したんでしょうね?」
「いや、逃げられた」
ぽかっ!
その報告を聞いてレイが軽くオレを叩く。そしてすぐに言葉を続けた。
「何で逃がしちゃうのよ!あ、そんな強い敵、あんたには荷が重かったか」
オレを勝手に叩いて勝手に納得するレイ。彼女のこの行為にオレはちょっとムカついたけど実際そうだったから何も言えなかった。
「お前ら~絶対に許さんぞ!」
自慢の砦を壊されて怒り心頭のホルル。
しかしオレ達三人が揃って相手がホルル一人と言う事は結果は火を見るより明らかな話で。彼は自分の出した言葉をすぐに後悔する事になった。
「う、うわああああああ!」
ちゅどーん!
キラーン☆彡
圧倒的戦力差を前にホルルはお空の星と化した。憐れ…合掌(チーン)。
さて、障害のなくなったオレ達の前に洞窟へと続く一本の道が現れる。
その道を前に感慨深くなる3人。
「この先が小人の洞窟なんだね」
「ええ…ついにここまで来ました」
「よし、急ごう!」
瓦礫の山となった砦を後にオレ達はその向こうの小人の洞窟へと向かう。そこに何が待ち受けているのか…あの情報は本当に信用に足るものだったのか…。
その答えはこのまま進んで行けばきっと全てが明らかになるだろう。この先に待ち構えているものがどんな残酷な真実だろうとオレは甘んじて受け入れようと思った。
一歩ずつ進む度に真実に近付いていると思うとオレは奇妙な高揚感を覚えていた。
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