第26話 闇の砦 中編

ドゴオオオオオ!


このレイの攻撃で難く閉ざされているはずの砦の扉があっけなく破壊される。その破壊跡はさながらミサイルの爆発痕のようだった。

うひぃ!何なんだこの威力!これは敵に回したくないぜ。


そして破壊された扉からはわらわらと敵の手下共が現れる!

こいつらがただの数に任せた雑魚共なのか腕に覚えのあるエリート集団なのか…。

そいつを確かめるのはオレの役目だっ!


「狼牙虚空ケェーン!」


オレの自慢の拳が空を切り裂く!数合わせの雑魚はこの一撃で多くが宙を飛んでいった。うん、最初に出て来たあの手下共はただの数合わせだ。


「大した事ないみたいだ、行こう!」


オレはこの結果をみんなに伝え、一足お先に砦へと突入する!

ふおおおお!何だかオラすっげぇ興奮して来たぞ!


そして襲いかかる雑魚を千切っては投げ千切っては投げ!調子に乗ったオレは…

 

オレは…


迷った。


「ど、どこだここーっ!」


考えて見ればそれは当然の話。この砦の事を前持って何も知らなかったと言うのに勢いに任せて迂闊に飛び込むだなんて。あー、下手こいたー!


でもそんなの…関係なくねーっ!


オレはこの状況に焦って後ろを振り向いた。ヤバイ、誰も後をついて来ていない!

そうだ!とりあえずは戻らないと!迷った時は来た道を戻る、常識じゃないか!


ガシャーン!


「う…」


オレが戻ろうと一歩踏み出した瞬間、入って来た道の隔壁が次々と閉じられていく。

あれ?もしかしてこれ…閉じ込められた?

つまり最初から罠だったのか…ああ…一人で先走るんじゃなかった…。


「まさかこれほど馬鹿だとは思わなかったぞ」


その声に振り向くと…そこには多少は強そうな敵幹部っぽい男がオレを見下ろしていた。あらら…これって結構ピンチなんじゃね?


「お前だろう?タダシの息子と言うのは」


「だ、だったらなんだよ!」


「いやあ、もう少し骨のあるやつかと思ったが…少し失望したよ」


また失望!オレの評価って失望しかないのかよ!これちょっとカチンと来たね!こうなったらオレの実力、ここで存分に見せつけてやるしかないよね!


「ろうがーっ!」


オレは一気に間合いを詰めてこの敵に必殺の一撃を!


「その技は効かない」


敵はオレの攻撃を前に冷徹にそう言うとすっと手を振りかざす。

その瞬間に発生した謎の衝撃波でオレは逆に壁に叩き付けられてしまった。

 

ドガァッ!


「ぐっはぁ!」


(こ、こいつ、強いぞ…)


「全くせっかちだなお前は…自己紹介くらいさせてくれよ」


「ぐ…」


オレは壁にぶつけられた衝撃でしばらく言葉が出せなかった。この砦にここまでの手練がいると言う事は…アサウェル達も危ない!…はず。

でも二人共オレよりかなり強いから結構大丈夫だったりするのかなぁ…(弱気)。


「オレは悪夢帝将軍直轄親衛隊隊長ロアード。…たままた休暇で訪れた北部支部でこんな幸運を味わえるとはね」


「た、たまたま…?」


「ああ、ここでタダシの息子を倒せるんだ!これほどの幸運はないさ!」


ロアードと名乗るその男はたまたまこの砦に来たと言う…だとしたらもしかしてこの砦にはコイツ以外に手練は他にいないのかも…?

なら、やっぱりここはオレが何とかこいつを引きつけておかないと!


「た、確かにお前は強い…けど、あんまりオレを甘く見てるんじゃないぞ…!」


ここでオレはロアードに精一杯の強がりを言った。本当はヤツに勝てる気なんてこれっぽっちもなかったけど…。


「ほう…」


オレの言葉を受けてロアードはそう言うと俺に向かって予備動作もなくいきなりエネルギー弾を多数発射してきた。

エネルギー弾を使うレイが仲間に入った事でオレはこう言う時の為のエネルギー弾対策の修行もしている。その時の修業がやっとここで役に立つ時が来た。


ドドドドドドドドド!


ロアードの放った無数のエネルギー弾は俺を正確に追尾する。レイの攻撃と原理は同じなのか見た目にもそっくりなその攻撃をオレは何とか紙一重でかわしていく!

ふん、エネルギー弾の精度で言えばレイの方がまだ上だ!


「ほう、うまくかわすじゃないか」


攻撃をかわされても余裕の態度を変えないロアード。よし!なら今度はこっちからの攻撃だ!オレはしっかり相手を見て素早く敵の死角へと回り込む!

虚空拳がかわされたなら次は竜皇りゅうおうの型だ!

これは竜のイメージで敵を翻弄し天からの裁きのような一撃で敵を倒す技!これならどうだっ!


たあーっ!


「効かないんだよなあ」


竜皇の型を使って一気に間合いを詰めたオレだったがロアードはまたしても予備動作なく自身前方に御壁を展開しオレを軽く弾き飛ばした。


「ぐはあ!」


ドガァッ!


最初に弾き返された時と同じようにまたオレは強く壁に叩きつけられる。うそだろ…この技も全然効かないだなんて…。何だこいつ、無敵か!


「お前の技の流派、タダシの技は俺には通じないぞ」


ロアードは倒れているオレに向かって簡単にそう言い放った。こいつ、まさかオレの父さんの技を全て見切っている?

考えてみれば父さんの技は一度悪を滅ぼし、こいつらのボスすら一度倒しかけた…。

そんな彼らから見たら敵である父さんの技をしっかり研究して対策を講じていても何も不思議もない。

だとしたら相性最悪だ…オレは父さんが教えてくれた技しか知らない…。


「さあ、自慢の技を封じられてお前はどう俺と戦う?」


うひぃぃ…何これまじでピンチじゃん。助けてアサえもーん!(汗)


その頃、アサウェルとレイは先走ったオレを助けようと…したらドカドカと隔壁が閉まって困っていた。レイのエネルギー弾で閉じた隔壁を破壊したところその破壊でまた瓦礫が大量に発生して完全に道を塞いでしまっていたのだ。

この結果から見て多分最初からそう言う作戦だったのだものだと思われる…。

ここまでの戦いで敵もオレ達をしっかり研究してそれなりに対策を練っていたんだろうな。


「どうするのこれ?」


目の前の大量の瓦礫の山を前にレイが尋ねる。

アサウェルは状況を冷静に判断してすぐに結論を述べた。


「多分最初から私達を分断する作戦だったのでしょう…仕方ありません、別の道を行きましょう」


「ヒロトは見捨てるの?」


アサウェルの決断に対して生まれたこのレイの疑問には彼らしい答えが帰って来た。


「彼を信じましょう…そこまでヤワじゃないはずです」


「そうね…」

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