第20話 破壊された街 中編
「ここにアサウェルがやって来たって敵に知られたらその四天王ってヤツが襲って来たりして」
「?!」
やめて!冗談でもそんな事言うのやめて!今のオレの実力じゃそんな大物相手に何の役にも立てないから!相応の実力が身につくまでは出会いたくないから!
「ま、その可能性は高いですね」
ア、アサウェルまでーっ!怖い怖い!四天王怖い!超怖い!
どうかこれがただの冗談で済みますように…。
ガラッ
その時、どこかで瓦礫のカケラが崩れた音がした。オレはさっきの会話の事で頭がいっぱいになっていてその音に気付かなかった。
オレ以外の二人はこの音に気付いたのだろうか…?
「ここです」
そう言ってアサウェルが立ち止まった場所。そこは確かにそれなりの大きさのかなり立派な建物があった。周りは瓦礫の山なのにこの場所だけはその破壊から難を逃れている。
損傷がないと言う事はこの建物は破壊の後に建てられたものなのだろうか?しかしその推測通りだとするにはこの建物はかなりの年季を感じさせ過ぎていた。
「ここは元々研究所だったんです…その建物を彼らは利用していました」
なるほど…この建物が古い理由はそう言う事か…。ここは破壊の前から建っていて敵が拠点にしていたから破壊を免れたんだ…。
外から見た所、やっぱりこの建物にも
オレがじっくり観察しているとアサウェルが躊躇なく建物に入っていくのでオレ達も慌てて彼の後をついて行く。
全く…地元の惨状に気が動転しているのかも知れないけどちょっとは周りの事も見て欲しいよ。
カツ…カツ…カツ…。
静かな建物内の廊下は靴音がよく響く。オレ達はまるでドラマや映画の登場人物になったみたいだった。
街がこんな惨状の中で不謹慎かも知れないけど何かこの雰囲気、いいな。
「懐かしいです…まるで何も変わっていません」
アサウェルはそう言って思い出を確認するように歩いている。
その言葉でこの場所が彼にとって特別な場所だと言うのが理解出来た。
「ここはあなたにとって特別な場所だったりするの?」
唐突にレイが無遠慮にアサウェルに質問する。流石レイ!オレが空気を読んで出来なかった質問も平気でぶつけていく!そこに(略)!
「そうです。ここは私の生まれ故郷であり職場でもありました」
「そ、そうなんですか…」
「タダシと出会う前の話ですよ」
「そうだ!今度はアサウェルさんとタダシ様が会った時の話を聞かせてくれませんか!」
「お前なぁ…」
話を強引に自分の好きな方向に捻じ曲げていくレイにオレは呆れてしまった。この話の展開に流石のアサウェルも苦笑い。うん、気持ちは分かるよ。
「その話はまた今度にしましょう」
ほら、やんわり断った。アサウェル、その選択は正しい。
オレ達はもぬけの殻のこの建物を隅から隅まで調べまくった。
しかし結局めぼしい情報は…何ひとつ見つからなかった。
流石に移転するのに重要な情報を残す訳はないよね。アホ組織じゃないんだし。
「みんな付き合ってくれてありがとう…無駄足にはなりましたが真相を知るにはもっと先に進まなければならない事が分かっただけも収穫です」
一番奥の部屋まで調べつくしたアサウェルがそう言ってオレ達を労ってくれた。探し尽くして何も成果を得られず疲れていたオレ達は彼のこの言葉に少し報われた気がした。
「お~っと、折角ここまで来たんだ。手ぶらじゃあ帰さないぜぇ~」
突然の声に振り向くといつの間にか誰かがこの奥の部屋に現れていた。
オレ達は誰ひとりその存在に全く気が付かなかった。つまりこの敵はかなりの強敵!
「だ、誰っ…!」
「久しぶりだな~アサウェル。俺を覚えているか?」
オレの言葉を無視してソイツは話を続ける。ただ、こう言う口調で現れた人物が味方である確率はかなり低いものと思われた。
期待と不安で胸がいっぱいになりながらオレはただ事の推移を見守る事にする。
アサウェルはこの突然の来訪者に見覚えがあるらしく落ち着いた口調で口を開いた。
「四天王のアルラですね?君は確か東地区の担当じゃありませんでしたか?」
四天王!いきなり会いたくなかった敵No.1に出会ってしまった…。どうしよう…確かコイツって近代兵器に匹敵するようなそんな力を持ってるんだよね?
で、でもきっとアサウェルが何とかしてくれるよねうん。だから大丈夫だよ…そうに違いないよ。どうかとばっちりでオレにまで被害が及びませんように…(汗)。
「今度はガキを引き連れやがって…相変わらず舐めてるな」
「私はいつだって真剣です…しかし君もパワーアップしているようですね…すぐには気付きませんでしたよ」
「まだお前にやられた傷が疼くぞ…今日こそお前を倒す!」
どうやらアルラはアサウェルに傷つけられた過去があるみたいだ。と言う事はやっぱりアサウェルの方が強いって事だよね。これは四天王の相手は彼にお任せしなくちゃ!
当のアサウェルはいい情報源が向こうから飛び込んで来たと御満悦のご様子。
「君クラスになればタダシの事も何か知っているんじゃありませんか?」
「知りたければ力づくで来な!」
そんな訳で唐突にアサウェルと四天王アルラとの戦いが始まった。今まさにオレがこの世界にきて初めてのかつてない激闘が始まろうとしている。
でもオレはこの戦いにおいてはただ逃げる事だけを考えていた。まだまだ実力差あるからね、仕方ないね。
「私、手伝うよ!」
レイはそう言うとすかさずアルラに向けて手をかざした。よしレイ!やっちゃれ!
アルラはレイの戦闘の気配に気付くとニヤリと笑ってオレ達に向かって言い放った。
「おおっと、お前らにもお持てなしをしないといけないな」
アルラの合図とともにドカドカの部屋に入ってくる彼の部下達。
あらら…どうやらオレ達にも仕事が回って来たみたいだ。どうにも楽はさせてくれないらしい。トホホ…。
でも、雑魚相手ならオレだってしっかり役に立てそうだ。さあ雑魚共!オレ様の華麗な技に酔いしれな!
「
「
「
バキィ!
ドガァ!
ボゴォ!
はい、弱い者には滅法強い自分です(ドヤ顔)。アルラの用意した雑魚共を丁寧に御相手するオレ。ふん、手応えがなさすぎて修行の足しにもならないぜ。
「ていっ!ていっ!ていっ!」
レイも健闘しているものの遠隔攻撃主体の攻撃と接近戦は相性がどうも悪いらしい。
彼女のエネルギー弾のいくつかは敵に避けられてしまっていた。
「うりゃっ!」
ドゴッ!
そんなレイの背後を襲う敵を自慢の拳で華麗に倒すオレ!ふふっ!ちょっとは見直したかっ!
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