ランブル
Object一行が降り立ったここはフランク国の中でも誰も寄り付かない港。
裏社会御用達であるがために表社会の面々はあえて野放しにし、闇市ができる程だ。
「一番乗りなの~!」
黄色のワンピースをはためかせネネリーはご機嫌に港を駆けている。
それを窘めるようにネロはネネリーの肩を掴み静止させる。
「燥ぐのはいいが目立つなよ。ボクらの目的はあくまで観光ではないんだからな。」
はぁいと可愛らしく返事をしてネロの隣で大人しくなる。
やれやれとネロが呆れていると他のメンバーも降りてくる。
重治とジーク、そして量子化したノインだ。
「よし、全員そろったな。目的地はここから8km離れたボクの偏屈な知り合いの隠れ家だ。」
「ちょっと待てよ。白髪の奴がいないぜ。それに転送機があるなら転送すればいいじゃないか?」
ジークがそう呼び止めると、重遙がネロの代わりに移動しながら説明する。
「嗚呼、芳孝殿はこの時間帯と継承遺伝によってお天道様の元では行動できないんですよ。転送機距離の有効距離は約1㎞、それに加えて目立ちますし体に負担がかかるのであまり使いませんよ。」
「継承遺伝ってあれか?俺の不死能力とかに関係ある・・・。」
それだけなら何ら問題ないじゃないかとジークが首をかしげると真剣な顔つきに向き直る。
「それだけじゃないんです。彼の能力については追々解るとして主な問題は彼の体質なんですよ。」
「髪と目のことか?」
「正確に言えば肌のことです、彼はアルビノという体質で先天的にメラニンが欠乏していて外部刺激、特に日光や紫外線に弱いんですよ。なので彼には日中オペレートを頼んでますよ。」
そこまで話すと彼はではとあいさつをしてネロに近寄って行く。
彼は社交的でこのメンバーで話しやすいほうだった。
近くにいてほしいのだがそうはいくまい諦めて歩いていると今度はネネリーと呼ばれていた少女がジークの目の前に立ちはだかる。
彼女を蹴らないように立ち止まると出会った時のように睨み返してきた。
「あんた、本当に唯の騎士なの?まさか表と繋がっていないでしょうね?」
イライラと猫のように目を吊り上げ尋ねてくる少女。
この手のマセた子供は苦手だ。
適当に「そうかもしれないな。」とあしらうと彼女は余計に機嫌を悪くし
膨れっ面で彼女は俺の脚を踏みつけた。
「いって何するんだ!」
「真面目に聞いてるのになあなあに答えるから当然の報いを受けるなの!」
やる気かと大人げなくにらむとネネリーも拳を握る。
怒るネネリーのワンピースの首根っこを掴みこちらを見てあきれる重遙。
「こらこら、市の前で争うなんて迷惑かかっていますぞ。ここは双方押さえて。」
でもとネネリーが反論しようとしたら彼女の足元めがけて銃弾が跳ねる。
「安心しろネネリー、そいつがもし裏切るそぶりを見せたら容赦なくラーニャの標本材料にする契約だ。」
ラーニャとは誰だろうとジークは首をかしげるが隣の重遙の顔が真っ青になるくらいだから相当やばい奴だと悟る。
大体、少女の足元に銃弾打ち込んだり俺を殺したりする人間がまともな人材を確保するわけがないとジークは改めてとんでもない組織に入ってい待ったと頭を抱えた。
それからネロご一行はちんたらと闇市を歩くのであった。
一方で中立派の動きはというと、彼らは王族専用宝物庫に無事たどり着き、一息ついていた。
「パス解除、早くしろよぉ。」
四歳児のように駄々をこねるギルソンにエリックはお手上げという風に手を挙げて見せた。
「だめだこりゃ。衛星から24時間監視に加えて静脈チェック、角膜認証、ありとあらゆるセキュリティが施されている。一つ一つ解除している間にバレるぞこれ。」
音を上げるエリックの言うことが信じられないのかギルソンはBRNのウィンドウを開いて再度高速解析をかけてみる。
だが逆にクラッキングを仕掛けられて網膜が焼切れる前に閉じた衝撃で頭から彼は倒れた。
「ほらみろ、流石天下一の衛星だろう?物理で壊すにもこれじゃ無理そうだ。」
コンコンと分厚い壁を叩くエリックを余所に痛みで悶えながらもギルソンは心当たりがあると考え出す。
恐らく、材質はミレハルコン、最近とある火山から発掘された新種の金属だ。
ブリタニア国の女騎士の刀の材質も確かそれだ、彼女曰く、鋼鉄よりも強く、薄く延ばしても切れ味が落ちないと自慢げに話していたそうな。
実際、話をするのは英の親方でありギルソンたちはその土産話を聞くだけなのだがなぜかその話だけは覚えていた。
「ホラ立て、今日は撤収だ。内部構造だけ把握できたのはよかった。
後は、ワイズリーたちが裏社会のメンツを足止めしてくれるだろう。」
手を差し出しながら笑って見せるエリック。
中立派の今回の目的は、ブローチを裏社会より先に盗み出すこと。
高値で売りつけることもいいがただ単純に今回は裏社会を罠にはめることが優先だ。
これは表社会からの依頼でこの額を超える金をもらえれば素直にブローチを渡そうとはギルソンたちは思っているが恐らく中立派代表である英はネロに追い払われた私怨でそれどころではないだろう。
たとえ、こちらの要求額を支払っても何らかの妨害があると案外器の小さい親方が仮面をひょっとこに変えてプリプリと怒る想像をして二人は苦笑いする。
それからないげないふりをして警備員として任務を終え、二人はアジトへ戻った。
裏社会のご一行は闇市場を抜けフランク国の街道へ入った。
そして人気のないある一角で立ち止まる。
そこは煉瓦の建物で窓はあるが扉がない裏手に回るのかとジークが聞こうとしたら
ネロは壁に手をついて
「ラム酒はあるかい?紅茶の茶葉は切れた。」
そう唱えると煉瓦が二メートル近くまで土のように脆く崩れ去り、中から鉄の扉が出てきた。
「やれやれ、またセキュリティを変えたのかい?ワイズリー、そこで見ているのだろう。」
キィンと高周波が頭をよぎったと思ったらBRNをハックされてテレパス音が鳴る。
『当たり前だ。ビジネスパートナーであって貴様は味方ではないからな。』
これがネロの言っていた偏屈な知り合いというやつなのだろうかとジークは一方城へ後ずさる。
『ん?どうやら新入りがいるようだな。それが前言っていたフリードの倅か?』
音声がプツリと途絶えた瞬間、あらぬ方向から金色の閃光弾のようなものが飛んできた。
それは小さな少女だと気が付くのに時間がかかりあっという間にマウントを取られ頭を打ち付ける、首元にはレーザーナイフ絶体絶命だ。
「答えなさい。でないとその首切り落とすわ。」
どこかで見た光景だとのんきに死ぬことになれたジークは身をよじって襲撃者を振り落してそのまま手を掴み仰向けに抑え込んだ。
もちろん、武器を掴んだ手を膝で抑えることも忘れずに。
「ブリタニア国、騎士団出身、元巡視。ジーク・ベッセル。そこのいけ好かない金髪野郎に不死身にさせられて親父の死の真相を調べてる。これでいいか?後、見た目で人を判断するなよ。」
恐らくこの金髪、金目の少女はジークが細身だから油断していたのだろう。
痛みで顔を歪ませているが今手を放したら彼女の反撃にあうだろうとジークは手を緩めない。
ネネリーは何か言いたげにこちらに近寄ろうとするがネロが制する。
重遙はニヤニヤと笑っているが手に刀をかけて目が笑ってないので恐らく誰よりも殺気立っているだろう。
その証拠に草履で軽く貧乏ゆすりをしている。
『いやはや、これはこれは予想以上の勇ましさだ。アリシア、彼らを案内してあげなさい。』
「oui,ペールの仰せのままに。」
アリシアという少女は組み敷かれたまま器用に足を勢いよく折り曲げてジークの尾てい骨を蹴った。
「いってえ、なにするんだよこの。」
頭を押さえようとしたジークの手を躱して立ち上がり頭突きを思いっきり食らわせる。
「舐めないでいただけます?それとレディを組み敷くなんて紳士のやることじゃないですよ。」
スカートの埃を払いアリシアはネロに向き直ろうとした瞬間、首元に刀の切っ先を当てられる。
「・・・なんのつもりです?」
ジトリと視線だけ重遙にアリシアが向ければ重遙は静かに殺気を放ち口を開く。
「いや、この間の借りを返しておきましょうと思いましてね。」
互いに因縁があるようで火花が散る。
二人の間に入って止める人はなく、ネロは好きにしろと言わんばかりにそっぽを向く。
ネネリーは目を爛々と輝かせて混ざろうと武器をちらつかせてる。
『良いだろう。決着がつき次第、こちらに来なさい。』
そしてまた雲行きは怪しくなる。
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