第二話

「どうしてこうなった………」


 俺が勇者でないという事が判明したあと、ライヴェルグと大臣たちによる、緊急会議が開かれた。

 会議は数秒で終わった。

 その結果俺は………城を追い出されました。

 ライヴェルグ曰く、


「余としては、召喚した責任はとらねばならないのだから、生活が安定するまではこちらに住んでもらって構わないのだが……なにぶん、大臣共の頭が固くてな。お金もろくに渡させてくれぬのだよ。なんとか暫くは生きていけるだけのお金と、この街の通行許可証は渡せるので、この場は引いてはくれぬか?」

 

 とのことだった。あの数秒で決めといて、そりゃないだろ。

 正直言い訳じみていて聞き苦しかったのだが、もらえるものは貰っておこう。


「わかった。最後に2つほど質問いいか?」

「うむ、なんじゃ?」

「ここの世界のお金の基準を教えて欲しい」


 この世界のお金の単位は『ミヌ』らしい。

 貨幣は

  銅貨  =1ミヌ

 上銅貨  =10ミヌ

  銀貨  =100ミヌ

 上銀貨  =1000ミヌ

  金貨  =10000ミヌ

 上金貨  =100000ミヌ

 王金貨  =1000000ミヌ

ミスリル貨幣=10000000ミヌ

白金貨幣  =100000000ミヌ


 があるとのことだった。

 ちなみに渡された袋の中には、上金貨が5枚と金貨10枚と上銀貨50枚ほど入っていた。

 うん、なんとか、にしては多すぎやしないかい?何も言わないけど。


「わかった。最後に一つだ、冒険者っていうのはあるのか?」


 ここは重要だ。これで無かったら、お金の稼ぐ方法が無くなってしまう。


「んむ?あるぞ?そちは冒険者になるのか?」


 っしゃぁ!冒険者男のロマン来たぁ!


「ん、まあ、そんくらいでしかお金稼げないしな。」

 

まあ、表情には出さないけど。


「何ニヤニヤしとるのだ?」

「………。で、冒険者になるにはどうすればいいんだ?」

「? それならば冒険者ギルドで登録すればよい」

「ギルドはどこに?」

「それは、ほれ、あの大きな木あるじゃろ? それがギルドの建物じゃ」


あれか……デカいな、これじゃあ迷う要素がないな。よかった。


「わかった、ありがとう。じゃあこれで」

「うむ、すまぬな。何かあったら遠慮なく立ち寄ってくれて構わぬからな。」

 

 門前払いだろうけどな!


「ありがとう。」


 さて、行くか!


〜〜〜〜〜〜一時間後〜〜〜〜〜


「ま、迷った……」


 俺は迷っていた。


「てか、ここどこだ?どこかの路地裏みたいだけど、なんか絡まれそ──」

「おい」

「──はぁ……ほらね〜……」


 仕方ないのでそっちに向く。

 そこにいたのはいかにも悪です、って顔したオッサン3人組だった。



「どうかしましたか? 用がないなら先に行きますが」


念のために丁寧な物腰で。


「お前、カバンの中のもの全部こっちに渡せ。素直に渡せば命だけは助けてやらぁ」


 ねえ、いるのかしらんけど、神様や。

 このイベントは早すぎやしませんかねえ。


「はぁ……もし断ったら?」

「力づくで奪い取るだけだ!」


 

 はぁ………めんどくせえなぁ。まあ、折角だし、少し実験してくか。


「ハッ、来いよ。遊んでやる」

「なっ! テメエ…バカにしやがって! おいおめえら! 相手は一人だ、全員でかかれば負けるわけがねえ!」

「「おう!」」


 はぁ……殺すのもめんどいしなぁ、軽くヤルか、かるーく。

 と、その前に一応こいつらのレベル見とくか。

「【鑑定】」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ギャリック:レベル7


ランドルト:レベル9


 ハイデル:レベル5


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 レベル的にはあっちが上か。特に真ん中が一番危ないな。

 そう判断した俺は、ランドルトとの距離、およそ3メートルを一瞬・・で詰めた。


「な!?」


ランドルトは咄嗟に剣を振り上げる。しかし、


「遅い」


 その反応速度で俺の技から逃れることなどできない。


「グフッ」


みぞおちに一撃。そのままの勢いで……ってもう倒れやがった。息は……してるな。死んでなきゃいいや、なんでも。


「「あ、兄貴!?」」

「よそ見していいのか?」

「え?」


 ギャリックは驚いたであろう。何せ目の前にいた人間が瞬時に後ろに回ってるのだから。

 そのまま俺はハイデルの方に蹴飛ばした。


「「うわぁぁぁぁぁ」」


 ドンッ


「「うぐぁっ」」


 アイツラ仲いいな。ハモりまくってる。

 何はともあれ、とりあえずこれであっちの世界で手に入れた技術はこっちの世界でも健在ってことはわかったな。それに関しちゃ、こいつらには感謝感謝。



【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】


 ん?殺さなくてもレベル上がるのか。

 なんでだろ、まいいや。

 とりあえず、冒険者ギルドに行くために、案内役がほしいな。

……………こいつら起こすか。


「おい、起きろ」

「「「zzzzz」」」


(チッ使えねえな………殺すか?)


「「「すんませんした兄貴! アッシらにできることならなんでもしましやす!」」」


「おお、凄いハモリ具合、てか、俺なんも言ってないよな。」


「いえ、声に出てました」


 え、マジか。ちょっとヘコむわ。


「ま、まあいい、お前らに頼みがある。頼みを聞いてくれたら、さっきのことは水に流してやる」

「へえ、なんでしょうか?」

「俺を冒険者ギルドに連れて行け」

「………は、はぁ、それくれえならお安い御用でさぁ」

「そうか、頼む」


 ここらへんは何故か入り組んでるからな、案内が欲しかったんだ。

 ちょうどよかった。


「(………ここら辺で迷う要素ってあったか?)」

「(いや、無いな)」


……呟きなんて聞こえてない。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 あのあとは何事もなく、午前中に冒険者ギルドに着くことができた。

 入ってみると中は結構賑やかだ。

 さっさと用事を済ませてしまおう。と、その前にコイツら開放するかな。


「お前らありがとな。もう帰っていいぞ。」

「「「へい、兄貴!」」」


と言って、逃げるように帰っていった。

…………逃げなくてもいいじゃないか。


 冒険者登録をするために、俺は受付に行った。


「ようこそ冒険者ギルドへ。どういったご用件でしょうか?」


 か、カワイイ……この世界の顔面偏差値高くないか?


「冒険者になりたいんだが、どうすればいいんだ?」

「はい。それでしたらこちらの紙に必要事項を書いていただき、説明を受けたうえでそれでもよろしいか、という同意をしていただくことになります。よろしいですか?」

「ああ」


 そう言って受け取った紙にいろいろなことを書いていった。


「この『得意な武器』ってのは?」

「こちらは自分が扱える武器を書いてもらいます。」

 

 ふむ……ここは剣でいいかな。


「これでいいか?」

「ん………はい。必要事項は全て書かれていますね。ではこれから冒険者についての説明を行いますので、耳の穴かっぽじってよぉーく聞いてくださいね。」


 ……………あれ?


「冒険者というものは、ギルドを経由して様々な依頼をこなしていき、功績に応じて報酬という名の生活費を貰う、所謂お仕事です。期限内までに規定数依頼をこなさないと失効など、そういったものはありませんが、大抵、依頼をこなさないと生きていけません。」

「え、あ、はあ。」


 この人怖い


「また、ある程度の依頼をこなし、こちらから出すテストに合格いたしますと、ランクが上がります。ランクは下からE,D,C,B,A,S,SS,SSSの8つがございます。登録時は誰しもがEランクです。例え王族であろうが貴族であろうが等しくEランクからです。」


(まあ、目指すはSSSランクだな)


「ちなみに、Sランクは『最強』と言われています。」

「?ならそれ以上は?」

「SSランクは人外、SSSランクは化物と呼ばれています。ちなみにSランクは世界に20名ほど、SSランクは8名です。SSSランクは3人しかいません。狙うのは個人の自由ですが、そこまでの壁が高いことはご理解くださいませ。」


 あれ、声に出してたのか?というか、凄い刺々しいな……


「最後に、当ギルドは常に死と隣り合わせです。生死に関する責任は一切取りませんので、ご了承ください。」


 まあ、予想通りだな。


「以上が冒険者のリスクなどです。これらの事を踏まえましても、冒険者になりますか?」


 当然答えは決まっている。


「なる。」

「わかりました。ではこちらがギルドカードです。ギルドカードは自分の身分証にもなりますし、お財布代わりにもなります。無くされますと再発行料10万ミヌをお支払いいただくことになりますのでご注意ください。」

「落とした場合、中のお金が使われるということは?」

「ありません。このカードは偽造不可能な上、本人様の常に無意識に発してる僅かな魔力と合わせて効力を発揮します。」

「わかった。」


 つまりは偽造不可能な身分証明書とicカードを合わせたものってことか。


「では、こちらのカードに血を垂らしてください。針はこちらにあります。」

「わかりました。…っ。」


………結構痛い。


 言われた通りにカードに血を垂らすと、カードが少し光ったあと、文字が浮かんできた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ

性別:男

ギルドランク:E


残金:0ミヌ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「これで登録は完了です。ギルドランクが上がりますと、カードの周りの色が

紫、青、緑、橙、黄、赤、金、黒

と変わっていきます。最後に、ギルドカードにお金を入れますか?」

「んー、このカードを使えないところってあるか?」

「田舎だとわかりませんが、ある程度の都会とか街、村であれば使えます。まあ、基本使えると思ってくれて構いません」


 ふむ……


「では、65万ミヌ入れてくれ。」

「!?……お金持ちなんですね…。わかりました。いまお持ちですか?」

「これで。」


 ドンッと袋を置くと


「これは……確認してまいります。」


 奥に引っ込んでいった。

 周りがみんな引いてて、ちょっと悲しい…


「お待たせしました。65万ミヌ、確かにお預かりしました。こちらがギルドカードになります。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ

性別:男

ギルドランク:E

残金:650000ミヌ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 おお、増えてる。


「依頼は自分のランク以下のものを受けることができます。早速受けますか?」

「ああ、受ける。なんかあるか?」

「かしこまりました。討伐物と採集物とありますが、どちらになさいますか?」


 採集つまんなそうだなぁ、一応異世界人だし、死ぬことはないだろ。


「討伐物で。」

「……わかりました。では、これなんかどうでしょうか?」


 その言葉とともに見せられた紙には『ゴブリン討伐5体 ランクE 討伐証明として、ゴブリンの右耳を持参すること。』と書いてあった。


「じゃあそれで。」

「わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね?命の危険を感じたら、絶対に逃げてくださいね。私個人としてもあなたのようなストレス発散要い……もとい、性格のいい人は失いたくないので。」


 おーい、本音が漏れてるぞー。


「わかったよ、まあ、これからもお世話になると思うからよろしくな。」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

「んじゃあ、行ってくる…と、これからもお世話になるんだし、名前くらいは教えてくれないか?」

「私ですか?私の名前は……」


 そう言うと彼女は優しく微笑んで


「アリッサです。」


 と言った。そんな彼女の微笑みはとても可愛らしかった。


「あ、すまん、この街とこの街周辺の地図ないか?」

「…ハァ……これです。無料で配布してますので、お代は結構です。」

「ありがとう。」


 いろいろと台無しだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ ジンノ

種族:人間族、異世界人

ステータス


レベル6


体力…130/130

魔力…110/110

筋力…30

敏捷…27

耐久…26

器用…25

精神…23

意志…24

幸運…7


装備

無し



スキル

鑑定Lv1

生物の名前及びレベルがわかる。

パーティーメンバーのステータスがわかる。

物の名前と詳細の一部がわかる。

自分の鑑定レベルより高いレベルの隠蔽がかかってるものは読み取れない。


魔法

光魔法Lv1


称号

異世界人

詳細:異世界から来た人に送られる称号。言語自動翻訳(様々な言語が、認識した時に自動的に翻訳される)限界突破(レベルの上限がなくなる。それに加えて必要経験値ダウン、取得経験値アップがつく)の効果を得る。

注釈:隠蔽可能


武術の心得:武術の経験があるものに送られる。対人型の相手にのみ全ステータスが向上する。


ギルドランク:E

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る