第8話「無能」
「勝吉、ちょっとじっとしてて」
「しつこい! こんなんじゃいつまでたってもあの野郎を地獄に叩き込めないだろ!」
例の性欲増幅剤の効果に味を占めたヒメは、もはや最初の目的を忘れて、どうにかして俺に薬を塗るということばかり考えている。
「よし、じゃあこうしよう。上手くあの男を誘惑し、俺のもとへ契約を結ばせにこさせることができたら、その薬を俺の全身に塗りたくってもいい、ってのでどうだ」
「ちょっと待ってて。すぐに悩殺してくるから!」
返答までにかかった時間わずか0.2秒。一目散に目的の男を探しに駆けて行ってしまった。
「やあやあ。君がソウジロウ君か。どうしたんだ、そんな浮かない顔をして」
俺はベンチで一人佇む例の性欲脳に声をかけた。
「ん? 君は……」
「俺は神の使い。君が転生者だということも知っているよ」
ソウジロウ君は驚いた顔をした。
「なぜそれを……。というか、なんだ神の使いって。ふざけているのか?」
「や、至極真面目さ。神の使いだからな、君が何を悩んでいるのか当ててあげよう」
「は、はあ……」
まあ、死神も神の使いも似たようなもんでしょ。嘘はついてない。と思う。
「君の悩みはズバリ! 恋愛に関することでしょう!」
「いや、違うけど」
え? 違うの?
「あれ、ヒメってやつ知らない?」
「ヒメ? 悪いが知らないな」
何やってんだアイツ、さっきの威勢のいい返事はなんだったんだ。
「あ、そうなのか。じゃあなんでそんな憂鬱そうな顔でウンウン唸ってるの」
「最近偏頭痛が酷くて」
紛らわしすぎるだろ……。まあいいや、もう面倒だしこれを利用しよう。
「その頭痛なんだが、実は神のミスによる手違い的なアレでね。この薬を飲めば治るよ」
俺は劇毒を手渡す。
「そんなの信じられるわけないだろ……ていうかこの薬、毒探知魔法がガンガン警鐘鳴らしてるんだけど。まさかお前、僕の暗殺を謀って……」
その瞬間、臨戦態勢に入られてしまった。しかも、いつの間に仲間を呼んだのか、強者そうなのがたくさんやってきてしまった。
「あーあ。めんどくさ。毒探知魔法とかしょっぱいもん持ってるなよな、男のくせに情けないぞ」
今回の敵はなかなか厄介な実力を持った奴が大勢なのでひと手間かかりそうだ。
「みんな、こいつは神の使いだとかふざけたことを言って僕を暗殺しようとしたやつだ! なかなか手に入らない様な劇毒まで持っているし、油断せず排除しよう!」
「「「了解!」」」
しょうがないなあ。ちょっと疲れるしだいぶ面倒だけど、力づくで連れてくしかないか。
「いいぜ、かかってきな。死神パワーでぶちのめしてやるぜ」
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