第7話「男とは、実に悲しい生き物である」
「これが俺が開発した、一種の惚れ薬だ」
死神というのは便利だ。人間では決して作れない様な薬を作るなど造作もない。
ヒメは俺が差し出した小瓶に入っている液体を不思議そうに眺めている。
「なんかどす黒い色してるけど、こんなの飲ませて大丈夫なの?」
「バカッ、これは塗り薬だ! 飲んだら最悪死ぬぞ!」
「あ、そうなんだ。でも、塗り薬なんてどうやって塗ればいいの? いきなり塗り薬なんか塗ろうとしたら怪しまれないかな?」
俺は呆れてため息をつく。
「だから状況を工夫するんだよ。俺が大量にアブを連れてってあいつの側で放してやる。アブに刺されて痒くてしょうがなくなったあいつに、お前がかゆみ止めを塗る体でそれを塗ればいいんだ」
「そんなに上手くいくかなぁ?」
「大丈夫。俺を信じろ」
そのときヒメが浮かべた不適な笑みの意味を知るのは、もう少し後のことになる。
脳内が性欲で埋め尽くされている男は、図書室で優雅に本を読んでいた。まったくかっこつけやがってけしからん。この俺が成敗してくれる。
俺があらかじめ用意していた虫かごを開け放つと、中に詰まっていたアブが一斉に外へと飛び出した。
「って狙うのは俺じゃねえええええええ! うおおおおおおおおおおお! いたい、イタイっ!」
「君、図書室では静かにしないか」
くそ、ムカつくことに脳内性欲男に注意までされてしまった。
「うおおおおおおおおお、死神とはいえこんなに一気に刺されたら死ぬほど痒いぞおいっ!」
「勝吉っ! 今かゆみ止め塗るからじっとしてて!」
「おおっ! 助かる!」
突然のことで気が動転していた俺は、ヒメのおかしな行動に気づくことができなかった。
「ってお前何俺に塗ってんだ! それはあいつに塗るやつだろ!」
「だって、アブは全部勝吉の方に行っちゃったし、あの男はどっか行っちゃったし……」
そのとき、俺のリビドーの高まりが最高潮へ達した。ちなみにあの薬の作用は、理性を残したまま目の前の異性への性欲を一気に引き上げるという、本能を利用したシロモノだった。
すなわち、俺がヒメに対して理性を行使する必要はないわけで。
「うおおおおおおお! ヒメ、とりあえず今日は一旦一夜を共にして、明日また作戦を練り直すぞ!」
俺は返事を待つ間もなく彼女を連れて宿屋へと駆け込み、めちゃくちゃセッ○スした。
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