第5話「ヒメのわがまま」
「だからぁ、私も一緒に連れてってほしいの」
今日はやけにしつこいヒメ。いつも通り転生者の魂を回収しに異世界に行こうとしていたら、突然呼び止められたのだ。
「なんでだよ。ヒメの役目は死人を閻魔様のところに送り届けることじゃないのか」
「だって、最近勝吉が全然かまってくれないんだもん……。だから閻魔様に言って少しだけお休みを貰ったの」
そもそも普段はいつも異世界に行きまくっているからしょうがないと思うんだが。っていうかあの閻魔ガバガバだなぁ……。
「まあそれは悪かったとは思うけど、とはいってもヒメを連れてく手段なんかないぞ」
「それは大丈夫、いつも転生者を瓶に入れて持ってきてるみたいに、霊魂化した私を瓶に入れて向こうに連れてってくれればいいの!」
「ふうん……。でも転生者曰く、あれ瓶から出入りするとき凄い苦痛らしいけどいいのか?」
「勝吉と一緒にいれるなら全然平気だよっ」
ヒメがどうしてもというので、俺は彼女の言うことに従うことにした。
「じゃあ今日はヒメもいるし、思い切って今までより難しそうな輩に挑戦してみるか」
「任せてっ! 勝吉にいいところ見せられるよう、私頑張っちゃうから!」
俺はヒメを入れた瓶を持ったまま、ある一つの異世界を目指してワープした。
「お、着いたな。ほらヒメ、でてこい」
「……うぅ、本当に結構辛いねこれ……」
俺が入り込んだ異世界は、前世で親を殺したヒキニートのくせに神様気取りの輩にチートを貰ってこの世界に転生してきた者が住んでいる場所だ。どうやら相当慎重な行動を心掛けているらしく、そう簡単には回収できなさそうな転生者だ。
「どうやら標的は冒険者を経て、今は学園生活を送りながら俺ツエーしてるみたいだな」
「へえ……。その学校はこの近くにあるの?」
「ああ。そしてどうやら標的はかなりの女好きらしい。紳士を気取ってはいるがその実脳は性欲に支配されている。俺みたいに包み隠さず性欲を露わにしてない分、性質が悪いな」
「え? 勝吉ってそんなに性欲を露わにしてるかな。むしろ私はもっと勝吉に……」
おっといかんいかん。転生者に必ずくっついてるヒロインらしき存在を寝取りまくっているのは異世界に渡っているときの出来事だから、俺と転生者以外は誰も知らないんだった。
「俺はそこまで性欲に支配されてないから、露わにしてこんなものってわけさ」
「なるほど。でも私としてはそれはちょっと残念かなぁ」
とっさに上手い言い訳を考え付いた。
「話が逸れたが、要はその性欲に支配されているという点を利用して魂を回収しようっていう作戦だ」
「具体的には?」
「多分真っ向からやり合うと、あいつの仲間はそれなりに多いから結構苦戦する可能性がある。ということで、ヒメに奴の通う学園に転入生として忍び込んでもらって、あいつの気を引いてもらうんだ。んで、俺がそれを利用して魂回収の契約を結ばせる。契約に関しては俺が上手くやるから、ヒメは色仕掛け頼んだぞ」
「ええ、私勝吉以外の男と仲良くするのやだぁ」
「……そうか、それは残念だ。はぁ……」
俺が露骨に落ち込んだ様子を見せると、ヒメは突然慌てだした。
「あ、いや、そんなつもりじゃなかったのっ。ただちょっと嫌だなぁ、って思っただけで。勝吉のためならなんでもするよ私はっ」
「そうか! それは助かる! さすが俺のヒメだ。大好きだよ」
「うん、私も大好きぃ!」
チョロいなこいつ。まあとりあえずそっちに関してはヒメのもともとの容姿からしてなんとかなるだろう。もしダメそうなら面倒だが一旦ひかせて俺がアドバイスしてやればいい。
「よし、じゃあさっそく色々と準備をして、学園に乗り込むぞっ」
「りょうかい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます