第九章 チーム・スカーレット

第九章 チーム・スカーレット①


 フィアナが儀式の身形をととのえ、再封印の準備をはじめたそのときだ。

 真祭殿の扉の外で、激しい剣戟の音がした。


「――あいつが来たみたいね」


 クレアが炎の鞭フレイムタンを召喚し、扉のほうを睨んだ。


「扉はあたしとカミトが死守するわ。フィアナはここで待ってなさい」

「私一人だけ安全なところで隠れてろっていうの!?」

「そう何度も小手先の技が通用する相手じゃないわ。精霊王の血ブラッド・ストーンももう無いのに」

「見損なわないで、クレア・ルージュ。私は守られるだけのお姫様じゃない。いまは対等なチームの仲間よ」


 フィアナは、儀式舞踊を舞うための鉄扇をクレアに突きつけた。


「私は〈神儀院〉第二位の姫巫女――ルビア・エルステインの妹なら、それがただ舞踊を舞うだけのか弱い存在でないことは知っているでしょう?」


 挑むような表情。

 最高位の姫巫女の放つ迫力に、クレアは息を呑んだ。


 たしかに、〈神儀院〉の姫巫女は精霊使いとしての戦闘訓練を受けていない。

 だが、決して力がないわけではない。

 それどころか、時と場所を選びさえすれば、その力は高位の精霊使いを凌駕することさえあるのだ。


 そして、この祭殿こそは、まさに彼女が力を発揮するのに最も適した場所だ。


「……わかったわ」


 クレアはふっと紅いツーテールの髪をかきあげた。


「あんたはあたしが守る。最高の神楽を舞いなさい!」

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